<お題06:ドラゴンボール>



しとしとと雨が降り続ける、静かな朝だった。


降ってるなあ・・・そう言うと、悟飯はゆっくりとベッドから起き上がって自分のためにコーヒーを入れてくれる。

結婚して1ヶ月――――それまでにもこう言うことはあったけど、やっぱりする前と後じゃ、安心感も不安も
全然違うものだと思う。


「ドラゴンボールって、7つ集めないといけないのよね?」


カタン、とチェストの上に置いてある写真を見てそう言えば、カップを持ってきた悟飯が不思議そうな顔で
答えてくれた。


「そうだよ。・・・何か叶えたい願いでもある?」


・・・叶えたい願いなんて。

あなたにあった瞬間から、もう・・叶ってる。


でも――――――


「うーん・・・・そうね」


ゆっくりとカップを受け取って、少しだけ考えていた事を肩をすくませながら言ってみた。


「・・私がいなくなった後のあなたの幸せ、かな。」


確実に私の方が早くいなくなる。分かりきってる事だから、お義母さまともブルマさんとも
話し合ったことはない。


まだ、まだまだ先だ。


そうは思っていても、やっぱりいなくなった後の愛する人が気がかりで。

冗談交じりに軽く言った言葉――の、はずだった。

けど。


「ビーデル!」


間髪いれずに大きな声が飛んできて。


「な・・なーんちゃって・・・・怒った?」


焦って付け加えたように言えば、大きな溜息をつかれて睨まれた。

・・・やば。


「・・もう一度言ったら本気で怒る。」

「・・ごめんなさい。」


カチャンと手に持ったカップをテーブルへと移されて、ぎゅっと抱きすくめられた。

まるで、大切な物を無くすまいと言うかのように。


「・・・そんな事はさせない。」

「・・えぇ?無理よ、そんな」

「させない、絶対に。」


――――僕を置いていくなんて絶対に。


抱きしめられて囁かれた言葉に、フ、と笑みが漏れた。


なんて、自分勝手なの。

だけど

なんて、愛おしいのかしら。


「・・我がままね。」

「・・あなたにだけは。」


ぎゅっと抱きしめられた背中を抱きしめ返して、落ち着くように背をさする。


「平気よ、ずっと傍にいるわ。」

「ビーデ・・・」

「でも偽りの生は嫌。ドラゴンボールで長く生きるなんてごめんよ。」

「・・。」

「・・上から見てるわ、いつでも。いつまでも、愛してるわ。」

「・・・僕もだ。」



暫く抱きしめあって、お互いの鼓動を感じ合えば。



「あ・・・・・上がったみたい。」



降り続いた雨も、ようやく天へと昇っていった。



「さあ、今日は出かけましょ!お義母さまに会いに行かなくちゃ!」



今日の気持ちは、永遠、に―――――自然の摂理が二人を別つまで。



「・・そうだね、行こうか。」




ドラゴンボールが有ったとしても、破られる事はなかったので、あった。



−fin−






(呟き:なんかちょっと寂しい話になっちゃった。)