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<お題23:一家団らん>







悟飯くんの家っていいなーといつも思う。




この間、夕食をご馳走になった時もそうだった。



「ほれ、ビーデルさ!一杯食べてけれ!」

「わぁ、美味しそう!いただきま・・・・」


ガチっ!!!


チチにすすめられて箸をつけようとする前に、親子3人の箸が激突した。


う、うわあ。


こんなこと、自分の家にいると経験できる出来事じゃないから、一瞬出遅れてしまう――――と、
チチが強烈なお仕置きを3人に繰り出した。


バシ!

ドシ!

バキィっ!!!


もちろん、最後のとっておきは悟空に向けてのものだったけれど。


「「い、いたいよお母さん!!」」

「いってえな〜チチ〜〜」

「なーにがいてぇだ!おめぇ達、少しはビーデルさに遠慮ってものがねえだか!
全く、こんな可愛い娘ッ子の前でガツガツするなんてみっともねえ!」


なあ!


そう言いながら、自分に相槌を求めて振り向いたチチの勇ましさに、思わず面食らってしまって。


「あはっ・・・!!」


笑いが、零れた。


大きな目を吊り上げて怒るチチに、力では世界一、宇宙一の人間が揃いも揃って敵わないのが、おかしくて。


ああ、このお家は――――・・チチがいるからこそなんだな、と。


うるさくて、楽しくて、幸せで。


いいなあ、と思ってしまった。


そして、ふと。


自分には、こんな風に食卓を囲む人はもういないんだと思い出してしまったから。


「ビー、ビーデルさ!?」

「・・・へ?なんですか?」

「おめさ、何泣いてるだ!!」

「・・・・・・え!?」


え!?あ、やだ!?


不覚にも、涙が少し零れてしまっていたらしい。


「あ、いえ、あの・・・!!!」

まさか、皆の前で泣いちゃうなんて!!


・・・・カァ〜〜〜!!!!!!


や、やだー!!!どうしよう!!!!

今の雰囲気ぶち壊しだわ・・・・・!


ドキドキ。

オロオロ。


真っ赤になった顔に手を当てて、目だけをきょろきょろと動かしているうちに、目の前の悟空から
「なーんだ」と気の抜けた声が自分にかかった。


「ビーデル、おめぇ涙出るほど腹減ってたんか?確かにそんなでかい目で飯見てたら涎じゃなくて
涙でそうだもんな〜」

「・・・・・・へ。」


涎じゃなくて、涙って・・・・・?


真顔で言う悟空の言葉に、回りも皆一瞬目が点になる。

そうして、次の瞬間にはまた――――――


「悟空さーーーーー!!!そったらしたことあるわけねえべ!
悟空さはいつもトンチンカンな事言い過ぎるんだベ!ビーデルさが気ィ悪くしたらどうするだ?!」


チチに、こっぴどく叱られるのだ。


「え、気分悪いのか?腹減りすぎか?オラも腹減って気持ちわりぃぞ〜」

「気分じゃねぇベ!機嫌の事だベ!」

「お父さん・・・」

「お兄ちゃん、機嫌って何?美味しいの?」


チチが怒って、悟空がとぼけて、子供が呆れて―――


「全く悟空さは・・・・!」


チチがそんな台詞を悟空にぶつける事には、すっかり自分が泣いた事なんて皆忘れていた。


「さ、もう話はお終ぇだ!とりあえず、先に食べるべ!」

パンパン、とチチが手を叩く間に、3人はもう一気に目の前の食事をかっ喰らっていた。

「す、すごい。」

「ほら、ほら!ビーデルさも!一杯食って嫌な事忘れるだ!」

「え。」

「でも、それでも覚えてたならな、悟飯ちゃんだけじゃなくてオラもいるからいつでもここに来てええんだぞ?わかったか?」


ガツガツ、ガチガチ。


食器の音が鳴り響く中、そっと言われたチチの言葉に再び目頭が熱くなったけど。


「は、はい!」


自分もお皿に向かう振りをしてそっと拭い取った。



これだから。


悟飯くんの家はいいなーと思って止まないのだ。



騒ぎの中心はいつも悟空。

押さえつけるのはチチの役。

更にチチをなだめつけるのは悟飯の役目で、悟天は収まった騒ぎをまたひっくり返す。



毎日毎日これじゃ、大変だろうけど。



でも、きっとこれが孫家の一家団らんなのだろうな、と―――――



「じゃあ、また来ます!!」

「ビーデルさん、僕が送っていきますから・・・!」

「ううん、今日はいいの!ありがとう!じゃあ、また明日学校でね!」

「あ、は、はい!また明日!」



ブオっ!!!!!!!!!!!



食事が終わった後、送るという悟飯を振り切ってジェットフライヤーに乗り込んで。



「っふう・・・・楽しかった。」


でも。


「・・・やっぱりちょっと、寂しくなっちゃったな。」


熱く潤む目頭を抑えながら、ビーデルはそう思ったので、あった。





一家団らん。


それはビーデルにとっては過ぎし日の思い出でもあり。



そう遠くない未来、の―――――――



「こら、パン!!!!!ちゃんとたべなさーい!!!」

「いやーん!ママこわぁい!!!パパ、パパー!」

「よし、来いパン!!」

「あなた!?パン!!!もう!!!」



――――現実。





-fin-




呟き : なんかまたビーデルに寂しい思いさせちゃった。ビーデルのママがいなくなってから、サタン家では一家団らんの日々ってなくなったンじゃないかなと思って。そんでもって楽しげな家族を見たらきっと泣いちゃうだろうなと思って。それが何度も食事に招待されてれば尚更そうなんじゃないかなーとか。すいません、勝手な妄想で。もちろんビーデルはそんな弱い子じゃないと思います が・・・!
というかチチの言葉尻がおかしかったらすみません。一番気になる所。