「やっ!!!」 ババっ!! 僕の一日は朝の修行から始まる。 昔父さんと一緒に修行したように、今は時々悟天や、遊びにきたトランクス君と一緒に 組み手をしたりする。 そして―――――今日は。久しぶりにウーブの所から戻ってきた父さんが、朝、声を かけてくれて一緒に修行をする事に、なった。 <その心は。> 「っち〜!!!悟飯、強くなったなあ!!!」 バシっと音を立てて悟飯の蹴りが悟空の腹あたりに決まると、受けた悟空が小さく唸った。 「っはぁ・・っはぁ・・・!!父さんこそ、凄いですよ・・っ。僕はまだまだ敵わないや・・」 はぁはぁ、と息つく暇もないくらいの攻防の手に息が上がり、シュッと空から地上に 舞い降りると悟飯は息も絶え絶えに悟空に応えた。 1時間ほどの、手合い。 でも、何だかいつもと違う感じの、父親。 ・・・なんだろう? そう思いながら、悟飯は「こっちこっち」と自分を招いて休憩を取ろうと言う悟空の言葉に 素直に従う。 「っひゃあ!つめてぇ〜!」 パシャっと小川の水を浴びながらはしゃぐ父を見ると、別に何でもなかったのかな・・・とも思う。でも、自分の腕や腹を見れば。 ・・うっわ・・・・・ 真っ赤に腫れあがっているこの状態を見れば、いつも以上に悟空が真剣に自分と相手を しているのが、わかった。 バシャ、っと自分も小川に入り、暑さと熱さを取り除くように思いっきり水を浴びた。 「うっわ〜。真っ赤になってるな。」 バシ! 「いっ!!!!い、痛いですよ父さん!!!」 あはは、と笑いながらいつの間にか後ろに回っていた父。 ・・やっぱり、変だ。 いつもなら、何を考える事もなく自分や周りに対して言いたい事を言ってのける父なのに、 何故、今だけ。 そう言えば、朝声をかけられた時から「あれ?」とは思ったのだ。いつもとは違う―――― そう、まるで真剣勝負をしに行く時の父の目に、少しだけ自分は恐れていた。 ・・・・何か、ある。 そう思いながら、濡れた体をそのままに小川の淵の岩に腰をかけた。悟空もそれに ならって、悟飯の隣へと腰掛ける。 ――――――と。 「悟飯。」 唐突に、父さんの真剣な声が自分を貫いた。 ドキっ、とする。 父親の、威厳ある声は、戦いの時しか聞いたことがなかったから。 「・・はい。」 緊張してしまう。今から、何を言われるんだろうか。 「おめぇ・・・・・・真剣か?」 「・・・え?」 何に対してだろうか。戦い?それとも、勉強? それと、も―――――――― 「・・・気付いてるだろ?ほら、ええと・・そう、おめぇの彼女ってやつだ。サタンの娘の、 ビーデル。」 「あ。」 「オラには何て言うのかわかんねぇけど・・オラが分かってる言葉で言う。男と女ってやつにおめぇ達はなっただろ?」 「・・・!」 気付いて、たのか。 心臓がバクバクして止まらない。 自分から言おうと、時がきたら言おうと思っていたその事を、気付かれてしまっていた、 なんて。 「父さん・・・」 「別に、オラはそんなのどうでも良いけどよ。ただ―――真剣なのかどうかっておめぇに 聞いておきたかったんだ。」 パシャン。 小川の中で小魚が跳ねる音が響き渡る。 「オラは・・チチを幸せにしてやりてぇと思ったし、チチといると幸せになれる・・そう思って、色々あったけど自然とそうしたいと思ったんだ。死ぬまで、死んだってずっとそうだと思ってる。」 何回も死んでるしな。笑いながら、悟空はそう付け加える。 「・・おめぇは、どうだ?ビーデルって娘を幸せにしてやりてぇと思ってそうなったのか? 自分も幸せになれると思ったか?それとも・・・・」 「違います!!」 それとも・・・・ その先は、いくら父といえども言わせたくなかった。自分は、自分は・・・! 「僕は・・・・ちゃんと、考えてます。ビーデルさんの笑った顔を見るだけで幸せだと思ったり、泣いた顔を見るとどうしていいか分からないくらい彼女が大切だといつも思ってます。」 ぐ、と拳に力を入れて、悟空の顔をジッと見詰める。 「・・・好きです、彼女が。真剣に・・・。でも結婚・・夫婦になるのはまだだと思ってます。」 「・・なんでだ?」 「僕は。学者になりたい・・そう思ってます。でもまだ、そのきっかけも掴めていないのに、 彼女を幸せに出来るなんて到底思えません。気持ちだけじゃなくて、現実でも彼女を支えられる自分が欲しいんです。もっと・・・強くなりたいと。彼女の総てを貰いにいくのは、それからだと・・」 静かに、でも真剣に――――思いをこめて、悟空にぶつけた。 本当に、真剣なのだと。身も心も、幸せに出来るぐらいの力を付けたいと―――― 思っている、から。 見詰める先の父は、ジッと微動だにしないで自分の話を聞いていた。 時間が、流れる。 数秒なのか、数分なのか、分からないけど―――――― 「そっか!」 ハ、と。 息を飲むほどの緊張が、悟空の笑顔と言葉で解かれた。 ・・・・ほっ・・・・ 許されたんだ・・・そう思い、悟飯も力が抜けるのを感じた。 この年になっても父親が怖いなんて腰抜けかもしれないけれど、やっぱりどこかで父が 一番だと感じているから仕方がない。 「おめぇが真剣なのが分かってよかった。オラには夫婦じゃねぇのにそんな事をするのが なんでかってのはよくわかんねぇけど・・・でも悟飯がそう言うならそうなんだな。 まあ「好き」って思う奴が横にいれば自然にそうなるだろうって神様も言ってたけどな〜」 頑張れよ。 そう言って、ポン、と肩を軽く叩かれる。 『頑張れ』 その言葉が、何より嬉しいと――――感じてしまうのは、やっぱり男親だからだろうか。 「じゃ、帰るか。」 言いながら空へと舞い上がろうとした悟空に、あっと思いながら悟飯は悟空に尋ねていた。 そう言えば、どうして急にそんな事を、と。 「ああ・・・最近おめぇ、面構えが前よりも男になったからよ、どうしてかなと思って チチに聞いたんだ。」 「いっ・・・!!お、お母さんに!?」 「おお。で、ビーデルって娘と付き合ってるみたいって言ってな・・真剣だと思うけど 不安だ、って言うもんだからオラが聞いてみるって話になったんだ。」 す、鋭い・・・・・! じゃあ、まさかビーデルさんと僕がその関係ってのも、まさか・・・! 水を浴びたばかりだと言うのに、ジワっと嫌な汗が背中を伝う。 「と、父さん・・・・・」 「ん?」 「あの、母さんが知ってるのはそれだけで・・・・・」 「へ?なにが?」 「だか・・だからその、僕とビーデルさんが・・その・・・」 そこまで言うと、ポンと悟空が手の平を打った。 全く、自分で言っといて問い掛けると鈍いんだから参っちゃうな・・・ 「ああ!男と女の関係って奴か!それはな、ブルマに聞いたんだ。ははっ。オラ、 そう言うのうといからよ〜。あいつんところ行ったら、おめぇの事色々教えてくれたぞ? この間どんな事があったとか・・」 「!!!!!」 ま、まさか!!!! 「おめぇ、変な薬飲まされてあの娘を襲ったんだって?それはオラも賛成できねぇな〜」 「!!!!!ち、違いますよ!!!!!!襲ったなんて人聞きが悪いじゃないですか!」 「だって事実だろ?」 「!!!」 じ、事実ですけどそれはその!!! 「まぁそんな事はいいじゃねぇか。それよりオラ腹減っちまった。さ、チチの作った飯食いに帰っぞ!!」 「あ!」 ビュン! 「父さん!話はまだ・・・・・もう!!!!!!!!」 ビュ! 勝手に誘って勝手に終わって。 父さんには本当に敵わないよなあ・・・・・・・・と思いながらも、悟飯も急いで悟空の後を 追うのだった。 大切な人に本音を語れた。 その幸せを心で感じながら、今更ながら悟飯もお腹がすいてきたので、あった―――― 一つの疑問を除いて、は。 「・・・しかしブルマさん・・・どこまで知ってるんだろう・・・」 その答えはまた、今度。 +オワリ+ |
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どうしても悟空と悟飯、悟飯がビーデルのことをどう考えているのかを父親である悟空に 伝えている所が描きたくて、拙くも書いてしまいました。悟空の事だから真剣な時は真剣に、でも息抜きで冗談を言うのも天然であるだろうな、と思い。にしても、ブルマもどこまで知ってるんでしょう。私にとって彼女は総てを知る女性です。。何となく。(5/5、アイコ拝) ![]() |