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<ヒーロなんて大嫌い。>

「ねえねえ、イレーザっ あの人ちょっとかっこいいと思わない?」

「ん?あら、好みだわー」

ドンドン、パフパフ。

今、西の都では『正義のヒーロー大会』というものをやっていて。

周辺にある街や他の都にも、お知らせのパンフレットが入ってきていたのだ。

当然。

正義のヒーロー・・いや、ヒロインのビーデルとしては。

「これ、いくしかないわよね・・!」

と。

妙な使命感に燃えながらパンフレットを握り締めていたのだ。

「でも・・」

まさか、こんな大会、悟飯を誘う訳にもいかず。意外と負けず嫌いの悟飯だから、
自分も、といって急に参加してしまう気がしたのだ。

「・・・絶対、ダメね。」

悟飯とは行かない。

ビーデルは固い決意でそう決めた。

参加してしまう恐れもあるし、それに、それに――――――

「・・かっこいい人いるかもしれないし・・」

本音は、これ。

いくら彼がいるといえど、やっぱりかっこいい人はカッコ良いのだ。

パンフレットを見れば、太い字で『若き英雄!』とのたまっているし、これはもう。

「いくっきゃないでしょ!」



――――――と、いうことで。


ビーデルは、興味を持ちそうな友人・イレーザを連れて、今日の朝早くからサタンシティを
出発したのだった。


そして、今。


会場につけば、そここに『○○シティのヒーロー!』と書いてあるパネルの数々。

「やあ」といって、周りに集まった人たちと握手をするヒーローの数々。

客層は、女性が全体の9割だったが。

ビーデルもイレーザも、それぞれに広い会場を周りながら「あの人が」「この人が」と
言いあっていた。

「そういえばサ」

「ん?」

歩き疲れてベンチで休んでいると、イレーザが急に問い掛ける。

「悟飯くんに知らせてこなかったの?」

・・ギク。

「なんか、さっきセルラーにコールがあって『ビーデルさんどこにいるか知ってますか?』
って・・不思議そうな声出してたけど。」

・・ギクギク。

「もしかして、これ・・バレたらまずいんじゃないの?だって他の男の子見にきてるわけだし」

「そ」

んな。まずいなんて。まずいなんて。

「まあいいけど。馬にけられないように私は逃げるから。」

「イ、イレーザ〜〜〜っ」

だって。

だってだって。

「だ、だって。見たかったんだもん、他の都のヒーロー・・・どんなにかっこいい人がいるか
分からないでしょ!?」

そうなのだ。たまには違うヒーローが見たいと少しだけ思っていたから。

それに――――

「それにさ、悟飯くんと来たらきっと妬きもちやくだろうし・・・」

ふい、とイレーザから視線を外して、ほぅ、と息をつきながら言葉を漏らす。

と。

「えー、これだけの事で妬くの・・・いや、それは当然じゃない!?うん、当然よ。」

自分の横で、緊張した気配になったイレーザの身体。

自分に向けた言葉も、オワリの方はなんだかいやに。

「・・・イレーザ?」

不思議に思いながら、イレーザの方を向いてみる。

「どうしたのよ?」

「え、っとー。あー・・」

しどろもどろなその言葉。

「イレ・・・」

ハっ・・・・!!!!!

も、しか。

もしか、して。

「あ、あたしっジュース買って来る!!」

「あ!イレーザ!!!!!!!!」

パパっとベンチを飛ぶように去っていくイレーザの姿。

まさか、とは思うが――――――

・・・そ・・・。

ドキドキと、鼓動がかなぐり早くなる。

自分の、死角である、後ろ。

を。

1秒。2秒。3秒かけて振り向け、ば。

「・・それで?ヒーローの感想は?」

「!!!!!!!!!!!!」

ごはっ・・ごはっ・・・!!!!

「僕に何も言わないで出かけたって、こう言う事だったんですね・・・ビーデルさん?」

「あ、あの、その・・・・!」

あわわわわ・・・・!

たらり、と冷や汗が背中を伝う。

「もう見なくていいよね?充分見ただろうし・・カッコいいヒーローを。

「・・・・!!!!!」

低く呟いた、悟飯の顔を見れば。

うわぁ・・・!

額の傍で、小さく青筋、が。

「帰りますよ。」

「あ!」

グイ、と身体をさらわれて、ビーデルは、そのまま――――

「ご、ごめんなさい悟飯くっ・・・でもあの!」

「言い訳は後でゆっくり聞きます。」

「・・・!!!!!」

何も言ってくれなかった事に加えて、自分以外のカッコいいヒーローを見ていた事に
腹を立てた悟飯に。

「僕以外の人を見てた罰だからね?」

「やっ、や・・・ご、ごめんなさぃ〜〜!」

甘い罰を――――


「ヒーローなんて大っ嫌いよぉ〜!!!!」


・・・受けることに、なったのだった。



(おしまい)

ホントは絵雑記に入るぐらいの短さになってたつもりだったんですが、また『多すぎ!』と
エラーで返されてしまってダメだったので、作品に上げました。何のオチもなければ
始まりも唐突です。バカバカしい作品すいません。でもこう言うのが大好きです。
ちなみに、悟飯の台詞あたりを書きたくて絵を最初に。やっぱ悟飯むつかしー。
そんな二人の服はクリスマスカラー。一足早いクリスマスカラー。読んで頂き、
ありがとうございました。