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<銀河通信

「きれいね・・・」

「・・うん。」


ポスっとおさまる腕の中。


絡まる指先から、熱い思いが伝わりあった――――――――




<銀河通信>



『きれいなところ見つけたんだ』

夜、自分の部屋に少しだけ来てくれている悟飯が去り際にそっとそう告げた。


『何』が?


そう聞く前に、優しい瞳に吸い寄せられるように差し出された手を取って、
空へと舞い上がる。

ひゅうっと風が下から吹き上げる、感覚。


「あった」

「?」


何かを見つけたようにそういうと、ひゅっとそれを追うように空を進み始めた。


・・・なんだろう?


目の前には大きな光を放つ飛行機。翼には銀の大きな光る渦。

それと一緒に、行き着いた先は――――


「・・ここ?」


天まで届くように大きな天文台の下。


不思議な気持ちで自分を後ろから抱きしめて浮いている悟飯を見上げると、
『ここじゃないよ』と言うように笑ってそのまま上へと進んだ。


トン・・・


二人が降り立ったのは、天文台よりさらに上にある小さな見晴台の中。


「中ほどじゃないけどここにも望遠鏡がついてるんだ」

「えっ・・でもここって」


普通の人は入っちゃいけないんじゃ。


すぐ横にあるプラカードには <STAFF ONLY> の文字が記されている。


「・・入るのは内緒だけどね。」

「・・・・!」


シィ〜っとくちびるに指を当てて、いたずらっぽくこっそり言うと、

「もうすぐだよ」

そういって、自分を引っ張りその場に座り込んだ。


でも、なんでここに?


不思議に思ってそう問うと、ふふ、と笑って悟飯が返す。


「ビーデルさん、サタンシティからは星なんて全く見えないって言ってたよね?
天文台もないって。」


確かに、そんなことをいった記憶もあるような無いような・・


「だから。」

「え?」

「あなたが、見た事がないって言ってたから。」


喜ぶ顔が見たかったんです。


こほん、と照れ隠しなのか一つ咳をして、プイ、と視線を空へと移してしまう。


「・・・・・っ・・」


たった。


たった、一言。

それも、何の気なしに―――自分も覚えてないくらいの気持ちで言った一言を。


・・・・覚えててくれたんだ・・。


かぁっ・・・・


頬の温度が上昇する。


どうして。


自分も忘れているような言葉を救い上げてくれるのだろう。


どうして。


この人は、こんなにも優しいのだろう・・・・・・。


嬉しさに胸が詰まる。


・・・どうしよう。


苦しくて、何も言えない。


好き。

すごく、好き。


わたし、悟飯くんが大好き・・。


「あ、ほら見て、ビーデルさん。」


戸惑う空気を和らげるように、悟飯の声が降ってくる。


「流れ星だ・・・・僕も、あんまりみたことないや、こんな凄い数。」

「わぁ・・・・・!!」


群青をもっと濃くした闇に映える、無数の銀の尾。

まるで、地球以外の星から誰かに届くメールのように、地表に降り注いでくる。


「知ってる?消える前に、3回願い事を唱えるとかなうって。」

「・・知ってる。」

「じゃ、『せーの』で、心の中で唱えようよ。」

「・・・うん・・・」


無邪気に楽しむ悟飯の姿がとてもとても、愛しい。


「よし、それじゃ・・」


だから。


「せー・・」


せーの。


が、言い終わる前に。


「悟飯くんが好き。大好き。大好き・・っ」


星のメールが悟飯に降ってくるぐらい、最後は少し大きな声で――――。


「・・・ビ・・・ビーデルさん・・・。」

「・・・・だめ・・?」

「い、いえダメって言うか・・・それ、反則です・・・」


少しだけ震えた悟飯の声に、振り向こうとすればぎゅっと指先を握られて。


「叶った・・・・?」


微笑みながら、囁くように呟けば。


・・・チュ。


唇の上に、悟飯からの甘い返事が降ってくる。


「そんなの・・とっくの昔に叶ってますよ・・・」


・・・チュ。チュ、チュ・・


瞑った瞳にも口付けの流星。


銀河からの贈り物が終わるまで、二人はその場で重なり合っていた・・。







―――Pi・Pi・PiPiPiPi...


星降る夜は、あなたの元にも銀河のメール。


願いの叶う、魔法のメールが届くから――――





「ビーデルさん。今日はどうする?」

「・・いきたい!」




澄んだ空気に身を躍らせて。



悟飯とビーデルは、季節の終わりまで夜ごと願いを叶えあうので、あった。




―fin―




乙女チック120%です。その上若干ファンタジーのような。DBの世界丸っきりなくて
すいません。花とゆめ系って昔はこういう感じでしたよね。