<あなたの手。>![]() |
「‥で、ここはこうなって‥」 カツ、カツ・・・・・‥ ノートの上に悟飯が動かすペンが滑る。 授業終了後、二人で直行した図書室。元々進学校のこのハイスクールで、 図書室を利用する生徒は数少ない。 とはいえ、やはり自分たちの周りに誰もいないわけではなくて。 『ここでは静かに』 の、文字が、自分たちの声をいつもよりも格段低くさせていた。 「・・・わかりましたか?」 「・・・っう、ん・・」 ドキ、とする。 別にわざとじゃなく、必然的に低い声になっているのに、耳元で言われる言葉が 妙にくすぐったい。 ―――それ、に。 ・・・好きなのよね。 ノートを走る悟飯の指先。 無骨な指が滑る度、この手が好きだといつも思う。 厚くて太くて、ごつごつとした――闘う男の、手だ。 「‥ん。ビーデルさん。」 「‥!!え!あ、なに!?」 いっけない! うっかり、悟飯の手に夢中になって、肝心の分からない問題に対する説明を聞いて いなかった。 悟飯はちゃんと話を聞いていないと怒る。 あちゃぁ‥ 「・・・ご、ごめんなさい・・」 小さな声でそう言うと、悟飯が「はぁ・・」と溜息をついて。 「・・・・・・ださいね?」 「・・・っ・・・!!!」 更に低い声で、耳元に言葉を落として言った。 「でましょうか?」 「・・そ、そうね。」 カタン、と静かに椅子を下げて、二人はそのまま校内へと戻って行った―――― 「ね、悟飯くん・・」 「離しません。」 「・・っ・・ぅ・・。」 そ、っと回りの生徒に気づかれないように、真っ赤になったビーデルの腰に添えられた その手は。 『・・あなたに触れたくなるから・・あんまり手だけに視線、向けないでくださいね?』 囁かれた言葉と連動して、この先の甘さを物語っているので、あった。 -fin- |