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<下着よりケーキより。


「悟飯くーん。」

「・・ん?」

「もう、悟飯くんっ!」

「・・ちょっと、まって・・」


むー・・・・・。


自分の呼びかけを生返事で返す悟飯に、ビーデルはプウっと頬を膨らませた。


『日曜日、家にきませんか?』


大学に入ってから、初めてで久しぶりの誘いだったから飛び跳ねてきたのに。


それに。


自宅からだと登校にも勉強にも不便だと、1人暮らしを始めたから。

事実上、今この部屋には本当に二人っきりなのだ。


・・・なのに、悟飯くんってば。


自分から誘いかけておいて、当の本人はビーデルがくる前に読み始めたのか
生態学の本に夢中になってしまっている。


きっと、それほど――――――自分の領域の中に入っても安心できるという存在だと
思われていて。

それは、本当に彼の恋人なんだという複雑な嬉しさを自分に持たせてはいるけれど。


・・でも、やっぱり。


構ってもらいたい。呼んだからには少しくらい相手をしてくれたってバチは当たらないの
ではないか。

そう思って、色々な手で悟飯を振り向かせようとした。


「ねえ、さっき珍しくベジータさんとブルマさんがデートしてる姿見たのよ!」

「へえ・・珍しいね・・」


・・・・失敗。


「あっ、お腹すいた?ケーキ持ってきたの。」

「・・いや、今はいいよ。」


・・・・これもダメ。

珍しい話題も、デザートもダメなんて・・・あとはこれしかないわ・・!


「ね、ねえ・・・・・悟飯くん。」

「ん・・?」

「わたしね、今日は新しい下着つけてきたの。見たい?」

「・・・後でいいよ。」


・・・・・そんなぁ〜〜〜・・・・。


最後の手段だったのに。

ビーデルはガックリと項垂れた。


・・・最近会ってなかったから、今日は本当に着けてきたのにな・・・。

でも。

・・こんな調子じゃ、今日はもうダメね。


「そう・・・分かったわ・・」


・・・・もう、帰ろう。


悲しくなりながら、自分の持ってきたものをバッグに詰めようとする――――――――と。


「それで、ビーデルさん?」

「・・・へ?」


不意に、悟飯が意思のある声で自分に話し掛けてきた。

クルリと椅子の背もたれから身体をねじってこちらを見ている。読んでいた難しそうな
専門書は、パタリとテーブルの上に閉じられている。


あ、あれ?本に夢中じゃなかったっけ・・・???


「どうして僕に飛びついてくれないんですか?」

「・・・!!!」

「ずっと、さっきからビーデルさんが来てくれるの待ってたんですよ?」


ここに。


そう言いながら悟飯はココここ、と自分の胸元を指差した。


さっきから、って。


え、て、言う事は。


「ぅ〜・・・悟飯くん〜〜〜〜・・・!!」

「ん?」


真っ赤になった自分の顔に、ニコニコとした悟飯の笑顔。


「か、からかってたのねーーーーー!!!!!!!!」

「やだなあ、からかうだなんて。ビーデルさんが素直になってくれないから。」

「それをからかうって言うのよ!もう!知らない!!」


恥かしさと怒りが大爆発の顔を見られたくなくて、プイ、と玄関の方を向いて、座り込む。

そのうち、カチャン、と音がして、ゆっくりと悟飯が近付いてくるのが座り込んだ床越しに、
分かる。


・・ギュ。


「・・知らないっ」

知らない知らない知らないっ。


静かに腕に抱かれて、泣きそうな声で意地を張った。


「・・・嬉しくないですか、僕と会って。」


囁かれる優しい言葉。

こう言う手をいつも使うから、悟飯くんは、本当に、ずるい。


「う・・・嬉しくないわけ、ないっ・・」

「良かった。」


フェードアウトしていく言葉に、絶対的な返事を返す悟飯がちょっと憎らしい。


だから。


「う、嬉しくなくなかったらどうするのよ。」


ム、とした感じで悟飯に言った。

私だって、怒るのよ、という風に言ったつもりだったのに。


「うーん・・それだったら、こうします。」

へ?

「え!?きゃ!!」


言われた途端、膝裏に腕を入れられグッと横に抱き上げられて。

・・・・あ。

ドサリ、とすぐ傍にあった大きなベッドの上に静かに横たわされた。


もう。もう、もう〜〜〜・・・!!!


ギシ、とベッドのスプリングがなる。

真っ赤になって睨みつけても、自分の勝ちだ、という風に笑う悟飯の体が上に被さる。


「あなたが僕に会って嬉しいと思うまで、こうします。」

「・・バカバカ。。嬉しいと思うのは悟飯くんだけじゃない・・・」

「そうですか?僕の為に新しい下着もつけてくれたのに?」

「・・・・!!!!ちゃ、ちゃんと聞いて・・・!」

「聞いてますよ。ビーデルさんの言葉は、一つ残らず。」

「・・もう・・・!」


いつも、いつも。最後はこの真剣な眼差しと低い言葉にやられてしまう。

それは、きっと――――悟飯くんが、嘘をついたことは一度もないから。


「・・・・早く、見て?」


観念したようにそう言えば、優しいキスが唇に降ってきた。


「・・・・脱がした後で、じっくりみます・・」

「・・・バカ。」




――――日曜日、悟飯の部屋――――午後、3時。



二人のケーキよりも甘い逢瀬の時間は、始まった、ばかりなので、あった・・。




「・・・あ、ケーキ・・」

「・・・後で。」

「・・・・んっ・・・」






-fin-


(続きは皆さんで想像推奨・・)