[ あなたの虜]
=4=


「ってぇ!おま、もっと優しくしろよ!」


「しょうがねえだろ!お前がスッ転んでそのままだったから、その位置に体がベストフィッティングしてんだよ!
我慢しやがれ!」


――10分後。 ぎゃあぎゃあと騒ぐ二人の声が、道端に響き渡った。


「あー・・・いってぇ・・・」


手の平で、頬をさすりながらもう一方の手は久美子に引っ張ってもらう。


「お、お前がいつまでも離さないのがいけないんだからな・・・・・!」


真っ赤な顔をして言う久美子に、慎は軽く瞳で睨んだ。


あの後、ハッと我に戻った久美子に慎は、『心配させた礼』と、『道端で恥かしい事をさせた礼』として、
ガツンと拳を頬に受け――その後、引っ張り起こしてもらうはめになっていたのだった。


・・・・・・自分こそ起きようとしなかったくせによ・・・・


心の中で呟くが、慎はチェ、と小さく呟いて大人しく立ち上がる。


「っはー・・・・・」


久美子との仲も一歩前進した。想いも通じ合う事も出来たし、二度目のキスも。


後は。


この、溜息の理由だけを何とかすれば―――万事解決で。


右に、左に。慎は、目を動かして再びため息をついた。


・・・・・・見事にちらばってんな・・・・・・・・・・。


そう、見たのは――コンビニで買った中身。


つまり。


これは、今日の自分の―――夕食として成すもので。でも、てんでバラバラに散らばったそれは、
あまりにも夕食にはなりえない格好になってしまっていた。


「あーもー・・・・・マジかよ。」


買いなおす気もしねぇ・・・・・・・・・


ボソ、と何も考えずに言葉が口をついて出る。


と。


「・・・・家くるか?」


「え?」


ボソリと、後方で小さな声。


よく聞こえなかったので、後ろを振り向くと、下を向きながら――ブツブツと呟いている久美子の姿。


その姿も、可愛い―――じゃなく。


「ぁ―・・・今何つった?」


もう一度聞き返すと、今度はそっぽを向きながら、さっきよりも幾分が大きい声で久美子が言葉を出す。


「う・・・・・・・家くるか、って聞いたんだよ。あ!い、い、嫌なら別にいいんだぞ!お、お前一人暮らしだろ!
一緒に食べる人もいないんじゃアレかなーとか思っただけであって別に無理やりどうのとか、その・・色々
他に思惑があるわけじゃ・・・」


「行く。」


「・・・・!」


間髪入れずに答えた慎に、久美子は一瞬ビックリしたが――次には。


「そっか。そっかそっか!」


ニッコリと笑って、コイコイ、と自分を手招きした。


・・・・・なんだ?


不思議に思いつつも、微笑まれるのは悪い気はしない。慎は、ゆっくりと久美子の傍まで近付く。


と。


グイっ!


「おわっ!!!!何すんだ、久美っ・・・!」


「家に呼ぶのはお前だけだからなっ・・・!そ、それと・・・!!!」


「!!!」


突然首に手を回され、耳元で、ボソボソと素早く囁かれると、久美子は恥かしさから先にすたすたと
歩いていってしまう。


後には。


「そ、それって・・・・」


逆に顔が真っ赤になった、慎がそのまま突っ立っているばかり。


『それと・・・名前で呼ぶのも何をするのもお前だけだから――お前しか・・慎しか見えないから・・・だから、その・・・そういう事だ!』


ボソリと、最初よりも小さく、でも確かに自分の耳に囁かれた言葉。


それって、つまり、アイツも俺に―――・・・・・・っ


「おい、どうしたんだよ、慎!早くこーい!!!!!!」


「っがねぇな・・・・・・・・」


嬉しそうな久美子の声に、上がる口元を抑えないまま、慎もゆっくりと歩き出す。


――あいつが、自分のその想いににハッキリ気付くのはいつなんだろうな。


今は、まだ。ただの『好き』と勘違いさせたままで・・・・いいか。


「先に行くんじゃね―よ!!!久美子!」


久美子が『虜』の文字に気付くのはいつの事か―――


とりあえず。


「ななななな!名、名前で呼ぶなよ!!!!!!!!」


名前呼びに馴れてからになるだろう事は、一目瞭然で。


きっと、それは。


「あと数ヶ月か・・・・・・・・・」


「・・なんか言ったか?」


「・・別に。」


来年の、3月を越えてからに・・・・違いないのであろう事は、確実。


「はぁ・・・・」


これからまだ、数百日間。


またこんな問題が起こるのかもしれないと思うと――――


溜息が、再び出てしまう慎なのであった。


ま、惚れた弱みってやつだな・・・・・・・。


二人の道は、まだまだ――――


「早く来いって、沢田!!!!!!!・・・・・・・・あ。」


「・・・慎だろ・・・・・・・・ったく・・」


前途―――多難。



(END)




申し訳ありません・・・。この一言に尽きます。書いている途中でよく分からなくなってしまい・・・・あああああああああこれで載せてるんだから最悪ですね!テーマはメロメロの慎だったのに、もうもう・・・・・・・・!!! ホント、これぞ駄文という感じで。でもかなりこじつけで終わらせたんで・・・次回からは早ペースでチャトしたお話しがかければ、と思ってます!名誉挽回頑張りますー><!! ホ、本当に見てくださってありがとうございました!

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