[ 私が××になっても。 ]


「・・・・・もうやめれば?」


「誰が止めるかぁっ!!!!」


「・・・・・・・・はぁ・・」


慎は、今までで一番の深いため息をついた。


というよりも、ここ数日、ため息をつくたびに一番深い溜息になっているのだが。


その、理由は―――数日前。







「なぁ、やんくみ〜!」


数学の授業中、自分の仲間から、久美子を呼ぶ声が上がり出す。


「おっ、なんだ?珍しく質問か?ん?」


ニコニコニコ、っと嬉しそうな顔で仲間を見る久美子の顔。


でも。


その顔も。


数秒後のこの言葉によって、打ち砕かれたのであった。


「やんくみ・・・・ちょっと、太ったんじゃねぇ?」


ガ―――――――――ンっ!!!!!!!!!!!!!!!


・・というような効果音が久美子の後ろに広がった―――様に見えたのは、気のせいでは
あるまい。


その証拠に。


「なななな・・・・・・・何言ってやがんだ!!!!!てめえら、そこに直れええ!!」


一瞬表情が固まった後、怒涛のように久美子の口から言葉が溢れ出す。


そこで―――・・自分が、そうでもない、といってやれば。


久美子も、ココまで意固地になる事なんか、ならなかったかもしれない――のに。


「確かに・・・前より肉ついたよな・・・」


そう、ほろっと口から言葉が漏れてしまったのだ。


確かに、久美子は前よりも体に丸みが増してきていた。


でも、それは、本当に太ったから、と言う訳ではなくて――いい、意味で。


女らしさが、増したのだ。


一言で言えば――――自分の、せいで。


・・・・俺のおかげだし。


そう、思って出した言葉だった――――の、だが。


「・・・・・っ!!!!!!!!!!」


やはり、というかなんというか。


ハッとして顔を上げれば、さっきの怒りの表情とは一転して、固まったまま泣きそうな表情の、
久美子の――顔が。


・・・・・・・・・・・あ、やべ。


慎が、自分の言葉の意味に気付いたのものも後の祭りで。


「さっ・・沢田ぁぁ・・・・・!!!!!」


「おい、待てよ、つーか・・・俺はそういう意味で・・・」


表面は、冷静に見せかけながら、内心焦って弁明しようとした、が。


「やっぱーーーー!? 慎も、そう思うよな!」


「やんくみ、やべえって!!!!!!!!」


「そんなんじゃ男にもてねえぞ!!!!!!!!!」


次々に、かかる仲間の言葉にかき消されて。


おいおいおいおい・・・!!!!!!


一番。


「くっそー・・・・!」


最悪な。


「おまえらぁ!特に沢田!!!」


・・・・・俺かよ。


結果に―――なってしまったのであった。


「見てろよ!!!!! 来週までに、2キロ痩せてやるからなあ!!!」



・・・・・・無理だろ。




**





それが起こったのは、月曜の話で。


そんなこんなで、それから数日が立って今にいたる、というわけで。


なんやかやと久美子がやりだして、もう土曜日になっていた。


残された時間は、後1日。


「―――・・・はぁ・・」


自分の溜息の横には、カロリーブックを片手に自分の食事の献立を考える
久美子の姿。


その姿も、普通ではなくて。


「おい、もうその服脱げって・・・・」


呆れながら言う慎に、頑なに久美子は首を振る。


「このサウナスーツが決めてなんだよ!これで、体をあっためておいてあたしはココから走って帰るんだからな!」


「おま、走ってって・・・・!」


ここから久美子の家まで、ゆうに・・・何キロあるだろうか。二ケタ台に乗るのは間違いない。


こいつは・・・・・ったく・・しょうがねえな。


「やめとけ。」


「いやだ!!」


「やめとけって・・・体壊すぞ。」


「いーやーだ!! 大体!お前にそんなこという資格はねえんだぞ!」


ビシっ!!!!


まるで、猿渡さながらに自分を指差し久美子が熱く語り出す。


「この、あたしのショックがお前に分かるのか!?野田やクマに言われたのもショックだったけどな、
あたしはなぁ、あたしはなぁ・・・・・・!!!!」


くぅ、と今度は頭をさげて床に突っ伏し出す。


・・・・・ったく・・・バカ。


「・・・・俺に言われたのが一番ショックだったのかよ。」


「そう・・・・って!!ちちち違うに決まってんだろ!何も、好きな男に言われたからショックだとか
そんな事は一言も言ってねえぞ!!!!!」


ブンブンとさっきとは違う、恥かしさから真っ赤になって言う久美子の顔には
一欠けらの信用もない。


「・・・ていうか・・言ってるし。」


「いいいい言ってねえよ!大体な!走る以外に汗かく方法なんてないだろうが!
ダイエットの基本は運動と汗なんだよ!! や、痩せてるお前にはわかんないだろうけど・・・!」


最後の方は、小さくフェードアウトして。


久美子は、そのままガックリと机の上に、頭を横に置いてふてくされてしまったのだった。


「汗、ね。」


走る以外に―――・・・・・・・・と。


・・・・・・・あ。


ピン、と小さな悪巧みを思いつく。


手っ取り早く、ダイエットを諦めさせて――尚且つ、汗も、大量にかく方法。


都合よくも今日は土曜日だし。


帰らなくても、明日は学校もないし。


「・・・・一つ、あるけど。」


「・・・・えっ!」


慎の呟きに、久美子は大きく関心を寄せてくる。


ジィっと、見詰め合う両方の瞳。


傍から見れば、それは―――恋人同士のものではなく、お預けをしている、主人と、犬、のような・・・それ。


「・・・聞きたい?」


に、っとしたいつもの慎の笑みに。


「・・お、おう・・・!聞かせろ!」


ちょっと後ずさりそうな久美子の返事。


「でもなぁ・・・・実行してみねえとわかんねんだけど。・・やるか?」


「えー・・・・」


「やらねんだったら、教えねえ。但し、走って帰るのも俺が許さねぇし、お前はダイエットも成功しない、と。
これで話はお終いに・・・・するか?」


慎の言葉に、グ、と詰った顔をする久美子の姿。


きっと、今はいろんなことが頭を駆け回っているに違いない。


見ていて――飽きない。


可愛すぎるよな・・・・・・こいつ。


「・・・・・・・・うぅ・・わ、わかった・・・やる。」


数分が立ったのだろうか。ようやく、久美子の口から出た答えは――OKの返事で。


――――――――悪巧み、成功。


「じゃ、それ脱げ。サウナスーツ。邪魔なんだよ、今からする事には。」


サラッといった慎の言葉に、久美子は一瞬固まった。その間、1分の沈黙が過ぎる。


「・・・・・・え?! だって、これ脱いだら、あたし・・・って、わ、わ、わ!!」


「ったく・・・遅ぇよ。待たせんな・・・・」


少しの時間も、もったいない。早く―――久美子を、この腕に。


ボスン!!


有無を言わさず、久美子の体を抱き上げて、慎はベッドになだれ込む。


「おま、何すんだ!この状況じゃ脱げな・・ていうか!な、な、何するつもりなんだよ!」


「何って・・・汗かきたいんだろ?一番いい方法って言ったら・・セックスに決まってんだろうが。
ヤッて痩せるって・・・よく言うだろ?」


「!!!!!!!セッ・・、て、おっ・・・あっ!ぁ・・・ちょ、やめっ・・!」


チュ、チュ、とスーツのジッパーをさげながら久美子の首筋を吸っていく。


バタバタと暴れる体を押さえながら、慎の手は体のラインをなぞっていって。


・・・・・別に、全然太ってねぇし・・・・・・。


その、柔かい体。最初にあった時よりも膨らんだ胸に、丸くなった腰に。


太ったというよりも、成長した久美子の体。


自分は、最初の頃よりも、今のほうが何倍も―――好きだ、ということは。


「ん、ん、ん・・・・!!」


とりあえず。


ま、言うのは終わってからでいいよな・・・・・・・・・


「バカ、慎っ・・・んぁ・・・っ!」


「はぁ・・・・・っ」



――――久美子の嬌声と、苦しそうな慎の声が部屋に広がっていく。





どのくらい時間が経ったのか――慎が、その言葉をようやく言ったのは。





「っ・・・はぁ・・・!!バ、バ、バカヤロォ!!!! お前・・・一晩で何回ヤるつもりなんだよ!」


ガバッと、久美子がベッドの中から跳ね上がる。シーツは、もう汗でびっしょりで。


「・・・・お前が、痩せたと自分で思うまで。汗、かいたろ?つーか・・・・」


ボソボソ、と久美子の耳元で何かを囁く。


ようやく言った――・・・かと思いきや。


「な、な、何が 『あと3回しよVv』 だよ!!!バカヤロ!!!この、この・・・!!」


「ははっ・・・!」


ボスボス、と枕で真赤になった久美子が自分の体を叩いてくる。


そんな久美子の行動に笑いながら、慎はその体をまた自分の方へ引き寄せた。


「お前、また・・・・・!」


「バカ。ちげぇよ。」


「・・・・・じゃ、なっ・・・て、どこ触ってんだオイ!」


「胸。・・これのどこが太ってんだっつの・・・俺は、お前が太ってると思ったこと一度もねえし。
お前のは、太ったんじゃなくて、俺が『育てた』んだよ。」


サラッと口に出す、その言葉。


でも、本当の、言葉。


「な、な・・・・だっておま・・・・・!!!!!」


「お前の体、最初よりも柔かくて好き。触ると安心できるから好き。例え、お前が太っても・・好きだ。
・・・・・俺の言葉じゃ、足りねぇ?」


真剣に、久美子の瞳を見つめていった、本気の言葉。


その言葉に、久美子の瞳が少し驚いた様子を見せて―――・・フ、とその口元に笑みが浮ぶ。


「・・・・・・バカ・・・・おせぇんだよ・・そいう事は、早く言えっての・・!」


パシ、と慎の頬を久美子の手の平が包みこんで。


「・・ありがと。・・・あたしも、慎が・・好きだ・・太っても、好きだからな?」


「・・・ん。」



そう言い合って。



クスリと、二人で笑いあう。



ピリピリと張り詰めていた空気が和らいで。



はー・・・・・・・やっと・・・普通の日常が戻ってくるな・・・。



なんて。



ようやく、久美子のダイエットの日々が終わった―――と。



慎は、眠りについた久美子の顔を横で見ながら――そう、思っていた・・・・・の、だが。




それから、再び数日後。




「くっそー!!!!!!! ダイエットしてやる!!!!!」


ガラ!!!!


クラスの扉を開けて第一声、その言葉が飛び出した。


「え、何やんくみ!?またやんの!?」


「今度はどうしたんだよ!!!!!!!」


またも、仲間達の飛び交う質問に――今度は、あさっての方向を、向きながら。


「川嶋先生と藤山先生にまで言われたんじゃ、あたしも黙ってはいられねぇ!女の勝負だ!!!」



ガッツ!!!



拳を、高々と上げて言う久美子に―――


「いいか!!!!沢田!今度はお前も一緒に付き合え!!!」


「おぉー!!」


「慎、頑張れよ!」


「応援してるぜー!!」


はやし立てる、周りのクラスメイト達。


「・・・・・・・・・マジで。」


はぁ・・・・・・勘弁してくれよ・・。




慎の苦悩の日々は、夏の間、まだまだ続くので、あった。



その後、川嶋と藤山がいいようのない慎からのガンつけにあったのは、言うまでも、ない・・。


*オワリ*


私が、おばさんになっても〜♪ という森高の歌が頭を回ったので、このタイトルに。。。(汗) 毎回手抜きでゴメンゴです;; それにしても、ダイエットネタをかきたかったのに・・・・うぁっ;やっぱりおかしな話になってるし(汗)。とりあえず、かけたところでUPしてしまいました!(汗)(汗) ダイエットネタというのは、自分がダイエットしださないと中々思いがこもらない物で・・・・・え、そりゃ私だけですか(汗) 
ではでは、ココまで読んでくださってありがとうございましたv あぁぁ・・CANYOU?の続きも・・何とか><!頑張ります><;



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