[抱き枕。]

「んーっ・・・・!!」


摂氏15度の秋に震える少し肌寒い朝。


ぎゅう、と隣にある温かいものを、抱き枕の代わりに抱きしめた。


「・・・・・・・どうした?」


抱き枕から、優しい声が、零れ落ちる。


その血の通う、温かい後ろ姿に顔をわざと埋めていって、しっとりとした肌を密着させてゆく。


「あったかい・・・・・」


なんか、最近無性に淋しかったの。


・・・なんて、言えるわけない。


だって、この目の前にいるのは、人じゃなくて・・抱き枕だもん。


年上なのに、子供みたい・・とか。


そんな事もふと頭に掠めたりするけれど。


「・・・・どうしたんだって。」


そう言いながら、ギュゥと自分の手を握ってくれる抱き枕。


おっきくて、自分の全てを包み込んでくれる、抱き枕。


・・・なんていったら・・怒るかな?


「ふふ・・」


抱き枕君の怒った顔と、言いそうな言葉を想像すると、心から暖かいものが流れ出してくるみたい。


疲れたときには、甘いもの。


淋しい時には、温かいもの・・・・って、よく言うでしょ?


だから。


あなたは、あたしの抱き枕。


いつまでも、冷めない私の愛しい―――・・・・・


「久美子?」


うわっ。


不意に、手をほどかれて、その身が自分の上に優しくのしかかってくる。


・・・なんてエッチな抱き枕。


「・・・えへ。」


なんだか無性に恥かしくなってきて、笑って誤魔化そうとするけれど。


「・・誤魔化してんなよ。わかってんだから・・・・ったく・・」


ん。


そう言いながら、おでこに、鼻先に、瞼に――


優しいキス。


その次には。


「んっ・・・・は・・・・ん・・・」


口唇に、舌の絡まる深いキス。


「はぁ・・っ・・ぁ・・」


口の端から零れ落ちた透明のものを舌先で舐めとられて。


「・・・もう・・バカ。」


少し息継ぎを荒くしながら、瞳を開いて見上げると。


「・・・・言えよ。」


そう、優しく見下ろして問いかけてくるから。


「あ・・・・」


・・・っと。いけない、いけない。思わず、言いそうになってしまう。


だって・・・・・言ったら怒るよね?


抱き枕、なんて。


淋しかった、なんて。


だから、言わないの。


「・・なんでもなぃ。」


「言え。」


「やだ。」


「・・おい。」


「・・イーヤーだ!」


「・・・・・・。」


あ。


無言に、なった。


・・・・・・・怒った?


ドキ、っとしてちょっとだけ頑なになっていた体の力を緩めると。


「わぅ!・・・・あはっ・・おい、こら!どこ擦って・・・て・・ゃんっ・・!」


―――酷い。不意打ち、なんて。


そのまま、せっかく着ていたTシャツを力任せに脱ぎ取られていく。


「・・お前が悪い。」


そう言いながら、どんどん手が膨らんでいる胸の方に伸びてくる。


わ・・・!!もう・・・・・!!!!


「わ、わかった・・・!言うから、言うから、ストップー!!!」


言いながら、その手をストップさせるように途中で止めて。


「あの・・・・・・あのな。なんか・・・お前、抱き枕みたいだな、って思って。」


「・・・・・はぁ?」


ププっ・・・・!


やっぱり・・・!


思わず、言葉の後に続いた慎の顔に、笑いそうになってしまう。


だって。


微妙に複雑そうな顔しながら、ちょっとムッとしてるの。


・・・・想像通り。


もちろん、言葉も。


「・・・何笑ってんだよ。お前、からかってんのか?」


あ。


やば。


なんて、慌てちゃったもんだから。


「あ、ち、ちがくて!えっと・・なんか、淋しくて・・・」


はっ。


思わず、言ってしまった。


「・・・・・・淋しい?」


「あ・・・・・」


「・・・・・・。」


再び、無言。


これは・・・この表情は。本当に、怒っちゃった・・かな?


「あの、別にな!お前がいても淋しいとかあの、そういう事じゃなくて!なんつーか・・・って・・・え?」


言いながら、恐る恐る慎の顔を見上げる・・・と。


・・・・・・・へ?


ニヤ、と頬を緩ませて、自分を見下ろす慎の顔。


何、なに、なんだろう?


なんで、笑ってるの?


「・・・・え?」


「・・・・・お前って、ほんっと―――っに、ガキ。なんで淋しいか、わかってねぇんだろ?」


・・・・・・・え?なんでって?


「・・・・どういう意味?」


ホントに、分からなくて、訊ねたのに。


「言ってもわかんねぇよ。」


そう言って、慎は再び胸に手を伸ばしてくる。


「・・・・・ぁ、ちょっと・・・待っ・・・んんっ・・」


「待たない・・・・」


チュ、と首筋を据われながら、吐息が耳元にかかってきて。


「ん〜〜〜〜!!!待て!待て!!絶対聞くまで、ダメだ!!」


ストップしようとしたけれど。


「だから・・・・・・・・」


「へっ・・・・・・・・」


逆に、言われた言葉の意味を考えるのに、夢中になって―――


気付いた時には。


「・・・・ぁっん・・・・・・んんんっ・・!!!」


抱き枕の、いいようにされていたの、でした。



―――その時、言われた言葉。


それは。


『・・・体が、愛して欲しいって言ってんだよ。だから―――・・・体で、説明してやるよ・・』




それって、自然に求めてるって言う事なの?あ・・あたしが?!



なんて。そんな事を考えているうちに。



イイようにされちゃったのは―――・・想像に、易い・・・かな?





淋しい時の、抱き枕。



最後の最後、本当に抱き枕にされたのは――――



果たして、どっち?



*END*


こんばんは、皆様。書き手アイコです。・・・久しぶりにSSSをUPしました。テーマは『淋しい時の処置方法』で。ある素材サイトさんで、淋しい時は温かいもの、というフレーズを見たら、ポンと思い浮かんだので書きました。皆さんは淋しい時は、どうしてますか?私は、無性にHPとか見たり色んなことを始めてしまいます。
そんな事もあり、、最近、某大型掲示板の素敵作品やら、他素敵サイトさまの作品やらを読み漁っていましましたら・・・自分が文を書けなくなっていました(汗)。大慌て・・・・!!妄想は果てないものの、文に出来なかったんです・・・!なので、こちらは復帰の練習台。ドキドキ・・・小説の続きやら、色々書きたいのですが、それはまた土日にでも・・・て!そう言えば14日もお休みだぁ。よし、頑張るぞ。
(決意!)
というわけで、ここまで読んで下さってありがとうございましたv また、次回Vv