[裏返し。]

「・・・・・・なんで。」


「・・・・・ぇ・・と・・」



はぁ・・・。


一つ、溜息をつく。


久美子と付き合ってきて、色々とこいつのことがわかってきた。


きっと、久美子よりも俺のほうが分かってるはずだ。


こいつは見た目・・つーよりも、普段の生活を見てる分には


『強く』て『明るく』て『一本木』で・・・悩むことなく真っ直ぐだ、とか他のヤツらは思ってるだろうけど。


本当のところ。


こいつの強さは不安と表裏一体だし。明るくしてるのもめちゃめちゃ淋しがりの裏返しだし。悩みがなさそうなのは―――・・・・・・・・・・・


いっつも、一人でどんどん決めていくからだ。


・・・・・俺に、相談もせずに。


だから。


今も、この状況にあるわけで。


いつものように、飯を作りにきてくれたわけだけど―――最初から、様子が変だった。


だから、問いただしてみた。


そしたら。


「・・・・・暫く、会うのよした方がいいんじゃないかと思って。」


・・・・・・・・・・・・なんて答えが飛び出してきた。


俺が驚くのも当たり前だろ?


誰が、こんな言葉飛び出してくると思うんだよ。


「・・・・・・・・はぁ。」


わざとらしくため息をついてみる・・と。


ビク、と体を強張らせて久美子が俯いた。


・・・・・・・見えねぇけど。泣きそうになってるのが、下に置かれた手の震えでわかる。


―――バカ。


そんなに泣きそうになるくらいなら、なんでそんな事言うんだよ。


いつだったか―――もしかしたら誰かが言っていたのか、その辺はよく憶えてねぇけど。


『女はいつでも不安なんだ』


って事、聞いたことある。


幸せを手にしても、すぐに無くなって行きそうな気がするんだと。


「お前さ・・・・・俺と、別れたいの?」


「・・・・・っ・・。」


フルフルと首を左右に振って、久美子が否定の意思表示をする。


「・・・じゃあ、なんで。」


「・・・・・・・・・・って・・。」


・・・・え?


「聞こえねぇ。」


ちょっと、強く言ってみる。


「・・・・・・って。この間、お前・・なつみちゃんの友達と一緒に歩いてる所、あたし見たんだ。」


「・・・友達だろ、なつみの。別に何もしてねぇよ、俺は。」


そう言うと、またフルフルと久美子は首を左右に振った。


・・・・・・・そう言う意味じゃないって事?じゃぁ、一体なんなんだ・・・。


「・・・ちがくて。あたし、それ見て・・お前、やっぱり同じ年代の子と付き合ったほうがいいんじゃないかって・・・あたし、6歳も上だし。お前に合う様な・・・いい女じゃねぇし・・・・・・」


・・・・・・・・・・そうきたか。


確かに、この間なつみの友達を一緒に歩いていた。後ろになつみもいたけど。


でもな、はっきり言って、いくら同年代でもあんな香水クサイ女、男からしたら願い下げだぞ。


変に色気振りまいた同世代の女よりも、俺にとってはお前のほうが色気があるって事、なんでわかんねぇんだ、バカ。


それに・・・年上年上、ってお前は言うけどな。23歳のどこが年上で大人なんだよ。俺から見たら、お前も充分子供だ。


なんて事を、さり気なく久美子を抱き寄せながら言ってみると。


「・・・・・・バカ・・・!」


胸で泣かれながら、そういわれた。


「・・・・・・泣くなって。」


・・弱いんだ、俺。こいつに泣かれると・・・・・。


女の涙って、ホント武器だよな。


「・・・あんま俺のこと、脅かすなよ。」


「・・・・・?」


ポンポン、とあやす様にして背中を叩きながらそう呟くと、「何?」と言った風に久美子が見上げてくるもんだから。


ちゅ。


不意をついて、キスをした。


「・・・・・慎?」


「好きだ・・・・って、何回言えば安心する?」


意地悪な問いかけ。


何回言っても、きっと本当に安心は出来ない、って言うのをわかっていての、質問。


「・・・・・・・意地悪だな、お前・・・。」


案の定、頬を膨らませて可愛く言ってくる久美子の姿。


「・・・・・・意地悪だよ、久美子だけには・・・」


クス。


二人で顔を見合わせて。


小さく笑いながら――――・・・・・ベッドに横たわる。



一瞬の危機が訪れた後の、幸福。



きっと、この先こんな小さな問答が何度も繰り返されるのだろうけど。


いつだって、俺は言ってやるから。


「好きだ」


って。


もっともっと、時がたてば―――


「愛してる」


って・・・・・何度でも、言ってやるから。


不安になったら一人で考えるなよ。


・・・俺に、何でも言えよ。


「・・・・・・わかった、久美子?」


「・・・・・・ぅん。」


ベッドの中で、そう囁くと――真っ赤な顔をしながらコクリと小さく、頷いた。




不安は愛の裏返し。



いつになっても――――繰り返される、愛し合う恋人達だけの、特権。


「・・・・・いつまでもやられちゃたまんねぇけどな。」


「・・え?」


なんて本音もさておいて。


今日も、彼は、彼女の不安を取り除く為に。


色々苦労しながら、奔走するので、あった。





*オワリ*



・・・・ええーと。。慎の、一人独白を交えたお話し、という感じで。。(汗)
背景もイラスト使い回ししすぎ―、ですね!こんな感じのイメージで問答が行われている、と言う事で・・・・!!!
うわ、うわ、変なのー!!!!!
お風呂で思い浮かべて、そのまま書いて見たんですが。。えへ(汗)。女の子はいつでも不安、を慎視点で書いてみました。しかし、撃 沈 ・・・!