[ まどろみの中で・・]



「慎!しーんー!」


「・・・・・なんだよ。」


「行く年来る年が始まったぞ!ほら、そんな風に一人でかっこつけてないで、見よう、テレビ!」


「・・・別にカッコつけてるわけじゃねぇよ。大体お前、さっきからテレビ見すぎだぞ。」


「なんでだよ!だって、紅白見なきゃ年末じゃねぇだろ!北島サブちゃんもやっぱよかったけど・・・
一番はな!」


「・・一番は?」


・・・・・なーんか、嫌な予感。


「歌の一番は、ゴスペラーズだな!男の歌声って落ち着くなーv」


・・・・・ふーん。落ち着くんだ。


・・何か、面白くねぇ。


「・・・・歌以外にもあんの?」


「おぉっ!あるぞ!実は・・あたしの好みのタイプがいたv」


・・・・・・は。好み?


「なにそれ。」


「わ、ぁ!いき、いきなり引っ張るなって!」


ガサ、ともたれ掛かっていたベッドから身を起こして、目の前で楽しそうにテレビを見てた久美子を
引きずり寄せた。


「・・・・・誰かな、久美子ちゃん?」


「・・うぁ。なんだよそれ。き、気持ちわりぃな・・・・」


気持ち悪いとか言うなよ、お前・・。


ていうかそれよりも。


「・・・・・で、誰よ。」


「・・え?何が?」


・・・引きつってるぞ、顔が。


段々学習能力がついた来たみたいだな、お前。


「『何が?』じゃねぇよ。好みのタイプ、って誰だって。」


「・・・・・・・。」


「黙ンなよ。」


「・・・・こ、声怖い・・・顔怖い・・・から言いたくない。」


「・・怖くさせてるのは、誰?」


「・・・・・・はーぃ・・」


・・・・わかってンじゃん。


でももう遅いけど。


「・・・・・じゃ、責任とって言いましょうか、久美子ちゃん?」


「・・・・・ぅ・・・・ちゃんは止めろよぉ・・怖いぃ・・」


う、と詰った顔で見上げてくるからもっと苛めたくなるんだけど・・・


「言え、早く。」


「・・・・・・・・・ん。」


「は?聞こえねぇよ。でかい声で言えっていっつもいってんだろ。」


・・・・ちゃんと言わねぇと優しくしねぇぞ。


「・・・・う・・怖いよぅ・・」


「いいから。早く。」


「だから・・・平井堅・・・・」


・・・・・・・・・マジかよ。


「・・・どの辺が好み?」


あー・・・声怖ぇな。でも隠せねぇよ、この不機嫌さ。


「・・え。い、言っちゃっていいの?」


・・良くねぇに決まってンだろ。


「いいよ。言えって。」


・・答え次第によっては、お前大変な事になるけど。


「・・・体が、がっしりとして強そうな所。」


「・・・・・・・ふーん。」


・・・体か。まあ顔じゃ無いってだけ救われてるけど・・


・・・俺、がっしりとしてねぇしな。


・・・・あー・・・ムカツク。


にしても、体って、こいつ・・・・・・・。


「お前、いやらしいとこ見てんなよ。」


「なー!ど、どこがいやらしいんだよっ!男って感じがして、すごいカッコイイだ・・・・・ぁぅ・・・」


「・・・カッコいいんだ。へぇ・・・・」


ギュ。


その言葉にギュッと回した腕を強めていった。


「あ、や、その・・・な、なんだよぉ・・腕、苦しいって慎・・!」


ぜってぇ、コイツ許さねぇ。


いつも俺のこと不安にさせるし。


いつも嫉妬してんの俺だけだし。


いつも――――こういうことしてンの、俺だけじゃん。


「・・・・ご、ごめんって・・・」


「何が。いいんじゃない、好きなら。」


「・・・・ごめん・・ごめんなさい・・・」


「・・本気で謝ってンの?」


「・・・・・・・意地悪ー・・・」


うるうるした瞳で見上げてきても。


・・・・・・今日は、許さないから。


お前から――――・・・・態度で示すまで。



「・・どこが?俺、意地悪じゃねぇだろ?」


・・・意地悪だよ、いつでもお前だけには。


「意地悪じゃん・・・・怒ってるんだろ?」


・・・・・そこまでわかってンなら、この後の事も分かるよな?


「・・・さぁ?どっちだと思う?」


「・・・・・ぅ・・・」


詰って、詰って、もっと詰って・・・早く、答えを出せよ。


「・・・な、どっち?」


サラッとした黒い髪を指に絡ませて、低い声で問い掛ける。


「・・・・怒ってるぅ・・・・・・」


・・・・良く出来ました。その後は?


ん、と眉を片方だけ上げて、その後を促していく。


「・・・その、だから・・・。機嫌、直して?」


言ったあと、キュ、と結んだ唇が少し震えていた。


・・可愛いな、もう・・早く来てくれよ、たまんねぇから・・・。


「・・・で?どうする?」


「だから・・その・・・こうする・・・・」


フ、と久美子の顔が近づいてきた。フワッと鼻先に漂う、甘い香り。


ムニ・・


小さくて柔かい両手が、そっと自分の頬を包み込んで――――・・


「ん・・・・・・」


チュ。


唇に、そっと軽いキスが降ってきた。


・・・いい感じ。


やっと、二人っきりの年末って感じだよな。


「んん・・・・」


パっ。


・・・・・・もう終りかよ。


パチ、と目を開けてまだ数センチ先にある久美子の顔を見れば。


「ぷっ・・・・・・」


「な、なに笑ってんだよぉ・・・・!!!!」


茹蛸みたいに、真赤っか。


「・・・お前、このくらいで照れてンの?」


自分が言えば言うほどに、顔も首筋も真っ赤に染まってく。


「だって・・・・・・恥かしいよ・・・・・だ、大体!機嫌直ったのかよ!」


・・・可愛い、コイツ。恥かしがったり怒ったり、忙しい奴だな。


でも、そこが好きなんだけど。


・・・・俺、マジで重症・・・


責任、取ってもらわないとな。


「まだ直ってねぇ。」


「えっ・・・!」


「もっと、激しいことして貰わないと。」


「・・・・・・・バカ、お前それは・・・!」


「・・・それは?」


「その・・・・・・」


「その?」


「・・・・・うぅっ・・・もっと恥かしいよ・・・」


・・・・・・ンな顔、すんなよ。俺から行きそうになる・・・・・・・。


「いいじゃん。前も、お前からしてくれただろ?」


・・前、お前が研修から帰ってきたとき。


「・・・あ、あの時は特別・・・!」


・・・・嘘つけ。ホントは、俺のコト愛したいくせに。


「・・・なあ?しないの?」


「う・・・・意地悪・・バカバカ・・・・!」


ポンポンと軽く胸を叩いてくる。


・・・余計煽るんだよ、その行動。わかってねぇんだろうけど・・・・・・・・・


「・・・早く、久美子。じゃないと・・・ずっと俺、怒ってる。」


「・・・・もう怒ってないくせに・・・・」


・・・お。分かってる、分かってる。


でもそれだけじゃダメ。


「・・・・お前からするまで、俺は何もしねぇからな。もう話しもしねぇ。」


「・・・・・バカ・・・怒んないでよ。慎、しーんー。」


「・・・・・・・・。」


「・・・ね、ホントに?話もしないのか?」


「・・・・・・・・。」


・・・早く、来いってば・・・・久美子。


「・・・・・そんなのやだ・・・・。」


・・イヤだろ?


「・・・そ、その・・・何からすればいいんだ・・・」


・・・・・なんでもいいよ。その唇が触れれば――・・どこからだって、感じる事が出来るから。


「・・・・・するよ?」


・・・・・いいよ。


「・・・・・好き・・・。」


・・・あ。


ドウゾ、とでも言うように再び片眉を上げると、そっと久美子の綺麗な指が、自分の唇を開かせて。


「ん・・・・・・ん・・」


そのまま、柔かい唇の感触と舌の感触が、体の神経をゆっくりと刺激していった。


『・・・は、よいお年を〜!』


あ・・・・終わった。


チラッと横目で見たテレビからは、行く年来る年の終わる声。


・・・・・あと、もちっとだな。


ピ、ピ、ピ・・・・・・・


ポーン・・・・・・・・・・


「んん・・・・・・・・」


あけましておめでとう。


その言葉を、コッソリと心のうちだけで呟いて――――・・・・・・


「・・・慎ン・・・」


「・・・・・・・はぁっ・・・」


今は、まだ――――・・・・二人で、夢の中にいよう。


そして、全ての愛しい行為が終わったら――――飛び切り甘い声で。


「・・・・・・・ぁ・・・」


言って、やるから。


それまでは、まだ、まどろみの、中で。



=END=



えー・・・・一応、書下ろし。。なんて大そうなもんじゃないですが、年越し、と言う事で一日早くUPです。31日は、紅白やら色々と釘付けなモノが多いので(汗)。 今年の締めくくりが、まさか慎久美になるとは、今年始めの私には思いつきませんでした。縁合って、慎久美ラブになれたのを、とっても嬉しく思います。来年も、もちっとだけ慎久美ラブラブ大推奨で参りますので、どうぞ皆様宜しくお願いいたします。

では、よいお年を・・・!!!!!!(ヤバ・・!リクエストSS書かなきゃー!(焦り))