[終わらない歌。]
|
「・・・でよー!」 「ぎゃははは!だよなぁ!」 ――――騒がしい、教室の中。昼の木漏れ日が当たる休み時間には、 仲間達のバカで楽しい笑い声と話し声が充満する、この場所。 「・・でもよぉ」 「・・・・ん?」 自分に向けられたその言葉に、慎は突っ伏していたその身を上げて、声の主の方へと顔を向けた。 「・・なに、クマ。」 目を向ければ、ニコニコとしたクマの顔。 他の仲間も、自分と同じく不思議な顔でクマの顔に注目していた。 「ん、俺らってさー、昔に比べて丸くなったよなぁ、って思って。」 「・・・は?お前まだ丸いじゃん?」 と南。 「違ぇよ!そう言う意味じゃねぇよ!なぁ、慎なら分かるだろ?!」 再び向けられたその言葉に、慎はゆっくりと周りの4人を見渡していく。 「・・・まぁな。」 ガタ、と寝ていた身体を起こして座りなおせば、今までの自分たちが教室の向こうに見えてくる。 『・・・ざけんなよ!』 『いらねぇんだよ、先公なんて』 『役立たず』 と罵られて。 『この馬鹿』 と人に言われて。 お前なんていてもいなくても同じだと言われて―――荒れた日々。 どこか空っぽな生活を送ってきた自分たちの姿が、漏れる光の中に浮かび上がる。 ・・・・でも。 そんな生活が最高潮に来ていた時――――・・・ 「・・・ヤンクミって、すげぇよなぁ・・・」 ポツリと、クマが零す。 ・・・ホント、すごいよな。 一瞬にして、自分たちのスタイルを変えた、人。 山口久美子。 その人に会わなければ――――きっと、このクラスのヤツらは全員無駄な劣等感を持ったまま、 ここを卒業して、クズになってた。 『劣等生?結構じゃねぇか。はみ出しモノ上等だろ?どんな世界だって規格外はいるんだから 気にすんじゃねぇよ。』 ポン、と一人一人の頭に手を置いて、放課後ぐずっていた俺たちの背中にハッパかけてくれた事もある。 『誰かに合わせて生きるこたねぇよ。自分を殺す必要なんてねぇ。・・・ただな。曲がった事だけは、 すんじゃねぇぞ。芯はいつも持ってろ。前も、似たような事、言ったろ?』 真剣に言った、その顔に――――・・見えないものが、繋がっていった。 自分達と、久美子との。 そして――――自分とは、また別の。 『・・好き。』 繋がりが、二重になって自分を変えていった。 「・・・すげぇよな・・」 ポツ、と自分の唇からも純粋なその言葉が漏れれば、周りの仲間も口々に「すげぇなぁ・・」と、 一言洩らしていく。 「・・・俺さ。やんくみには言わねぇけど・・卒業、まだしたくねぇなぁ・・」 「「「・・・・クマぁ〜・・」」」 その言葉に、周りの3人から上がる、ぐずった声。 ・・もちろん、自分も、そう――・・思ってる。 したくない、卒業なんて。 いつまでも、終わらない歌のようにこの場所でバカをやっていたい。 「・・・・・でさぁ!」 「・・・バカじゃねぇ!?」 「・・あははははは!」 自然と聞こえてくる、この笑いを、もっと感じていたい。 教室に零れるこの光を、いつまでも手に入れていたい。 「・・・・でもさ。いつまでもいらんねぇ、ってのは分かってるけどさ・・」 「・・・・・・・。」 キーンコーン・・・・・・ 窓から降り注ぐさらさらとした太陽の光が、昼休み終了の鐘の音に遮られる。 うるさい教室の中に根強いている、確かな思い。 暫くすれば、5時限目の授業をしに入ってきた自分らの担任教師が、騒がしい教室の中で さらに大きな声をだす。 「・・・終わらないで欲しいよな。」 「「「「・・・慎・・。」」」」 その合間に、確かめあった互いの寂しさも、また日々の喧騒の中に消えていったとしても。 「授業始めるぞ!・・ってもうお前たちはー!!うるせぇぞ!!!!!」 「・・・うるせぇのはお前だっつーの・・・・」 ガタッと大きな音を立てて扉をあけて入ってきた彼女に、笑いながら静かに言葉を発していく。 「なんだとー!!こら、沢田ー!」 ・・・バーカ・・・・。 彼女の存在を、いつまでも感じられれば―――― きっと、この気持ちを忘れる事は、ないから・・ 「・・・さっきの、やんくみには秘密な?」 「「「「・・オッケー!」」」 教室に零れる光と、笑い声と、怒涛の日々。 それを包み込む、彼女の存在。 『いつまでも続いて欲しい』――――少年達の、小さな願い。 卒業したって。 ここを離れたって。 「・・・・・終わるわけねぇよな。」 終わらない歌は、いつでも、胸に。 |
ラブなんて全くない話になってしまいましたが、何となくいつものメンバーの胸中を書いてみたかったので・・・書いてみました;; ちょっと書いてみたかったんで・・・えへ><; ちなみに、タイトルも中身もブルーハーツの影響99%です。物凄い大好きなせいもあるし、詩がロクデナシのヤツラにピッタリなので・・書いちゃったv 中身は『ロクデナシ』っていう歌に近いです。ゼヒ一度。 読んでくださって、ありがとうございました〜〜><! |