[約束。] |
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「・・・いいもんね、だ・・・」 コツン。 夕暮れに影が伸びる暖かな日。 ガタン・・ガタン――――と、ローカル線の音が近い場所で聞こえながら、 石ころがつま先に当たっては弾き飛ばされる。 別に、一緒に帰ろうとかそう言う約束をしていたわけじゃない。 ただ、自然に――――そうなっていた、だけ。 ・・だから。 『・・あ。』 その光景に、何かが零れ落ちたような声を上げてしまった。 『・・・俺、好きな奴居るから』 そう言って、目の前の女の子を断るあいつの姿。 ・・・・・知らなかったわけじゃない、けど。 もてるんだ、って。 選り取りみどりだ、って。 いつか、あの大騒ぎする仲間達が聞いてもいないのにそう言っていたのを思い出した。 「・・・・いいけどっ!」 カーっン!っと近くにあった石を思い切りよく蹴っ飛ばす。 ・・・いいじゃん、別に。告白されてようが、何されてようが――― 決定権は全てあいつにあって、あたしには・・・無い。 付き合ってても、その部分は、踏み込んじゃいけない・・気が、する。 から。 『・・・お邪魔、だな・・』 ポツリ、言葉を洩らしてその場を後にした。 約束をして一緒に帰らないのは――――いつか、離れる日が怖いから。 今日、目の前に起こった事が、本当になるのが怖いから。 だから・・・・しないんだ。約束、なんて・・・。 「・・・・はぁ。」 カンカンカン・・・・・・ 踏み切りのところまで歩みが進めば、小さく溜息と言葉が口からこぼれ出た。 「・・・なんか、淋しい・・。」 ・・淋しい。 何も言う権利が無いのが。 ・・悔しい。 逃げるだけしかできない自分が。 ・・恋しい・・。 隣に、居てもらいたいのに・・・・・ 「・・あーぁ・・・・・。」 首を項垂れて、そっと地面へと目を伏せる。 視線の先には、夕暮れが後ろから自分を照らして出来た長い影。通り過ぎる電車にも かかっていく位――――いつもよりも、長く。 そう、いつもより、長く・・・・・ 「・・・・」 ・・ん? あれ。なんか違和感。 いつもより・・・・・・ってなんだろ? ・・・・・タタン・・・・・・・ 電車が通り過ぎていく。 キィ――――っ・・ 軋んだ音を立てながら、踏み切りが上に上がっていく。 ・・あれ。あれあれあれ・・・・・・ 目の前の大きな影が――――・・・。 「・・・・・・・っ・・・!!」 分かれて、延びた。 ・・・・・・・えっ! 驚いて、振り向く、その、後ろには。 「・・・・・・・んで・・先帰ンのお前・・・・・」 ムッとした口調で、額に汗をかきながら自分を見つめる、その姿。 もしかして――――――・・走って、きた? 「あ・・・・・・」 なんで?なんで?なんで?? だって、約束してた訳じゃないのに。 なんで、こいつは、一番あたしが望んでいる、事を――――・・・・・ 「・・だって・・・」 ・・あ。ちょっと、涙声。ダメだって、久美子。 困らせたくないよ・・・・・ 「・・・・ん?」 ・・・優しい、声。止めろよ、お前・・・。 自分が困るだけなんだから・・・・ 「・・・邪魔かな、って・・・思ったから。」 ・・・止めて。それ以上は・・・・ 「・・・何がだよ。」 ・・・お・・怒らないで。 お願い・・・・・ 「・・・だから・・その・・お前がっ・・・告白されてるの見て、邪魔かな―って・・・っひゃ・・痛っ・・」 ・・・・いたぁっ・・・! そこまで言うと、ギュッと両腕を掴まれた。 直視できなかった視線を上げれば、熱い瞳が自分の視線を灼け尽くす。 「あ・・・・・・」 「・・・・・バカか、お前。」 呆れたような顔に、怒りで熱のこもった声。 ・・・・・バカって・・・・・・バカって。どうせあたしは・・・・ 「・・お前今、「どうせ」とか思ってんだろ。・・ふざけんなよ。お前、俺のなんなんだよ?」 「な・・・何って・・・・・・」 あたしは、お前の・・・・ 「・・・お前、俺の女じゃねぇの?女だろ?彼女だろ?だったら・・・逃げンなよ。 俺から逃げてンじゃねぇよ・・・」 「そっ・・・・」 そんな・・・逃げてなんて・・・・――――・・・・ 「・・・逃げてねぇ、なんて絶対言わせねぇ。お前、俺が告白されてる時邪魔してもいいんだぜ? 俺の事、引っ張って行っていいんだぜ?お前は・・・・それをできる権利、無条件で持ってるんだから・・」 「・・・・っ・・・!」 ・・・・・・あ・・・・・・・。 「もっと・・・俺の事、困らせてよ・・・・・」 「・・・・・っ・・・!」 グッと両腕に食い込むように入った指が離されて、その場でギュッと抱きしめられた。 人目なんか気にしない、その真っ直ぐさが心に刺さる。 ・・・・泣きそうだから、ダメ、ダメだって・・・! 「・・・ぅ、ん、ん、ん・・・な、ちょっと離っ・・・」 「・・・離すわけねぇだろ・・・。俺の事・・・不安がらせた罰。」 「・・・ふ・・不安って・・お前は別にそんな・・・!!」 「・・なんだよ。俺の事なんだと思ってるわけ?」 抱き合ってるから見えないけれど、背中に上からの視線が突き刺さるのが何となく、分かる。 きっと、またムッとした顔をしている、のも。 ・・・う・・そ・・・・・だって、お前が不安なんて・・・・・そんなこと、あるはず・・ 「・・・俺、これでもすげぇ抑えてるから。でも・・今日みたいに。」 ・・・え。 「・・今日みたいに、お前が遠慮して帰るとかそう言うんだったら・・もう、抑えねぇ。」 え。え。え。 「・・・な・・・なにを・・・?」 ゴクリ。 緊張が身体に走る。 お・・・抑えないって・・・なにをだよ・・・! 「・・これからは、ずっと一緒に帰る事。お前が遅くても、俺ずっと待ってるから。」 「なっ・・!」 「・・ダメだ、っつっても聞かねぇ。お前の負担になるからな。お前の迷惑なんて、考えねぇ。だから・・・・・・・・・・お前も、俺の迷惑なんか、考えるなよ・・・」 「・・・・・・・・・っ・・!!!」 「それから・・・・・・・・」 「ま・・まだあるのかよっ!?」 「・・・・・・当たり前だろ。あと授業中に・・」 「・・・・・・・っ・・・!」 ――――夕暮れ時。 延々と続く、二人の甘い、話し合い。 影が、延びきっても・・・・・影の質が、陽から陰に変化しても。 二人がそっと、口付を交わすまで・・交わしても。 終わる事のない、とろける対話。 「・・・・約束、な。」 「・・・・・・っ・・・ぅん・・・・・・・」 ・・・約束が、怖かった。 裏切られると、決め付けていたから。 で も ――――――・・・・・ こんな風に、いつまでも温かな腕の中に居られるような幸せな約束・・なら。 「あ・・・・・星、綺麗・・・・・」 二人で、つくりあげていく約束、なら――――――・・。 「・・・約束、ね・・・・?」 「・・・・あぁ。」 『離れていくのが怖いから』 なんていう言い訳も、全部全部優しい腕の中に包まれて。 「・・・かえろ・・っか?」 「・・・・・そうだな。」 抱きしめあった腕を緩めれば、大きな手の平が自分の指を絡めとる。 自分も、絡み合う指先にぎゅぅっと力を入れて握り返す。 「・・あたし、明日会議で遅・・・・・」 「待ってる。」 「・・・・っ。」 「・・・・さっきも言っただろ。待ってる。・・お前は?俺に言うことは?」 「ぁ・・・・う・・・ん・・・だから・・待ってて・・・」 「・・よろしい。」 「・・ふふっ。」 顔を見合わせて微笑み合えば、どちらともなく歩き出した。 ・・・・・・・まだまだ道は長いけど。 最高に幸せな約束が、叶えられるのは・・・・ 「・・・・あとちょっと、か・・・。」 「・・・・・・?なにが?」 「・・・・なんでもね。」 ・・・今の二人の位置からは、もう少しだけ、未来の、お話し・・・。 *おまけ* 歩きながらにて二人の会話とその後の行方。 「・・・お前さ。俺が今ここにいなかったら明日どうするつもりだったの?」 「・・へっ!?ど、どうって・・・!そ・・そりゃあの・・・・っ」 「・・・・『やっぱり沢田はあたしにはもったいねぇ』・・とか似たような事言うつもりだったんじゃねぇだろうな?」 「・・・・・・・えっ・・・・・・・・。」 「・・・図星かよ・・・・」 「・・・・うっ・・な、なに言ってんだよ・・!そんな事い・・い・・・」 「・・・『い』?はい、その後は?」 「あ・・あのー・・・言ってた・・ "かも" しれない?えへv」 「・・・・・・なにが 『えへv』 だっつーの・・ふざけんのもいい加減にしろよお前。」 「・・・だ・・だって!」 「だってじゃない。でももない。お前って全然分かンねぇ奴だな・・」 「・・・・・ぅ・・・・・だっ・・・あ、いや・・・」 「・・・・・・・今日俺ン家泊まり。決定。」 「・・・ええええ!なんで?!」 「・・・・・・なんで?・・・あっそ・・そう言う事言うんだ・・・・・・・・」 「あっ・・・・!まっ・・・・明日学校だしその・・・・!!!」 「お前の迷惑は考えない―――――・・・って言ったろ?」 「・・・・ずるっ・・!」 「・・・・・・・覚悟してろよ。」 「・・・・・・な・・・何のっ・・・!」 「・・・・寝れねぇ覚悟に決まってンだろ・・・ばか。」 「・・・・・・〜〜っ・・・!!」 *オワリ* |
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・・・・・は・・ハズカしい・・(汗) なんだかまとまりがなくて、ホントに私が一番お目汚しじゃん・・!(汗) でもあの、せっかく書いたからUPしちゃいましたー!(ドーン) ただ慎に、駆けて来てもらいたかっただけ・・それを表現したかっただけですた(汗)。 そして一番最後の台詞だけが一番書いてて楽しかったです・・・ヘヘヘ。 で・・では!読んでくださってありがとうございました―!(逃) あっ。ちなみにこの時間軸は・・えっと・・どの辺かな?とりあえずまだ高校生編、と言う事で・・! |