【働きましょう!】 |
「会いに行くからねー!」 そう言ってから3日が過ぎ、千尋は高校最初の夏休みを向かえ、今またトンネルの前へと足を運んできていた。 「よ・・・よしっ!!行くわよ!!」 ギュ、と銀の鱗を掌に握り締めて行こうとすると、またあの声が聞こえてきた。 「千尋・・」 「ハク!?」 どうやら、この銀の鱗はあっちとこっちの通信機能も果たしているらしい。 「ハク、今から・・・!」 「うん、分かってるよ。もうすぐ傍に千尋の気配がする・・・・早く、おいで・・」 ハクの声に背中を押されて、千尋はトンネルの中へと真っ直ぐに進みだした――――― 「わぁっ・・・・!!!」 さわさわと、頬をくすぐる風。相変らず緑が豊かで、気持ちのいい世界・・・ 「千尋。」 景色に目を奪われていた千尋に、クスクスと笑いながら声をかける人物・・・・ 「ハク!!!!!」 瞬間。千尋は、声の主の方へとかけ出すと、バッと抱きついた。 「ハク・・・ハク!ハクゥゥ・・!!っぅ・・・会いたかったよ・・・!」 「千尋・・・私もだよ・・・そなたにあえないこの5年間・・・・・辛かった・・!」 ギュウっとハクと千尋は抱き合うと、ふいに、ハクが話し出した。 「本当に良く来てくれたね・・・嬉しいよ・・」 フッと笑うハクの笑顔に、千尋の心臓は大音響を奏でだす。 うぅっ・・!!こんな抱き合ってる時にそんな笑顔は反則でしょ・・・ハクゥ! 「うん、だって・・ハクに早く会いたかったもん・・」 「それにしては鱗を手にしてから来るまでに時間があったみたいだけど?」 その言葉に、千尋はまたも「うっ」と言葉を詰まらせた。 案外・・ハクって意地悪なのかも・・・・・。 5年前のハクとは思いもよらない態度に、千尋は一抹の不安を覚えたが、目の前にいるハク自身の姿にまたそんな考えは頭の奥へと追いやられた。そして、来る前から疑問に思っていた事を歩きながら聞いてみることにした。 「ねぇ、ハク。」 「ん?どうした?」 「私がこの鱗を手にした日・・・ハク、何か言ってたでしょ?ほら、最後のほうで・・・アレって、何て言ってたの?」 千尋がその言葉を口にした瞬間、一瞬ハクがニヤッと笑った気が・・しながらも、千尋はハクの言葉をじっと待った。 「ああ、あれか・・。千尋は聞こえていなかったのか?」 「うん、そうなの。ちょうど、魔法が切れ掛かってたみたいで・・途切れ途切れで良く聞こえなかったの。ね、1がどうしたの?」 その言葉に、ハクはふぅん・・と頷くと、ゆっくりと千尋に諭すように話し始めた。 「一つ難点があるって言ったと思うけど・・それは聞こえた?」 「うん、そこは聞こえたよ。」 「それはね、まずこの世界に来たら必ず働かなくてはいけない。それは、千尋も分かることだね?」 「うん、おばあちゃんとの契約ね?」 「そう・・・契約なんだ。私が言った難点というのは、この契約についてなんだよ。」 契約について・・・・・なんだろう?そう思いながら、千尋とハクはどんどんと湯屋への道を進んでいく。 「実は、千尋が帰ってから契約期間というモノが持ち出されてね。この世界にいるはずのないものを雇う時に対して効力が発揮されるものなんだけど。その契約期間というのが、最低でも1ヶ月はここにいなければいけないんだ。」 「・・・・・・・はい・・・?」 耳を疑うようなハクの言葉。・・・・なに?今、ハクは何て言ったの?? 「だから・・・千尋。そなたが今日ここに来たこの日から、一ヶ月間。そなたは湯婆婆様の下で契約を結ばなければならない。そして、契約は絶対だ。途中で切り上げは許されない・・・意味はわかるね?」 ・・・・つーことは、つまりあれですか。私は、一ヶ月間・・夏休みも終りまでここにいるって事ですかい・・・・・・行き来できないって事は・・つまり・・・・・あああああ!!! 「えええええ!!!!??わっ・・・私、ここと向こうを行き来できるのかと思って・・・お母さんに長く家を空けるなんて言ってないよー!いっ・・・今から帰って・・・!」 「千尋・・・・・諦めなさい。」 ポン、とハクは千尋の肩に手を置いて、そのままくるっと自分の方へと向きなおさせた。 「でも・・・えっ・・・ハク?」 「千尋は、私と一緒なのが嫌なのか?」 ググッとハクの端正な顔が千尋に近付き始める。 「えっ・・・いや・・そんなことは・・・」 「フフ・・千尋、どうして逃げるんだ?」 「えっ・・どど・・どうしてって・・その・・・」 そっそっそんなに顔近づけないでーーー!!!!!!! 千尋は顔を真っ赤にしながら身体をそらせてハクとの距離を置き始める。 やばい!このままいったら・・・ヤバイって――!! 「千尋・・・」 「ハハ・・ハクっ・・だ・・!」 あわや、もう少しで互いの唇が重なり合おうとしたその瞬間、パッカーンと小気味いい音がどこかにぶつかり転げ落ちる音がした。 「・・・・・・・・・・。」 「ハ・・ハク?」 千尋の目前まであったハクの顔がスッと元の位置に戻り、ハクは自分の後頭部を掌でさすりながら投げつけられた元へとキッと睨みを付け出した。 「なーーーーーーーーーーにしてるんだよっ!!!!!!この能面ヤロー!!!!!!!」 「りんさんっ!!」 「千!!!!!お前もさっさとそいつから離れな!何されるかわかんねーぞ!!!!!」 「え。」 その言葉に、反射的に千尋は離れようとするが・・・ガシっと自分の腰を掴まれて、どうにも離れられない状況にいつの間にかなっていた。 「え!ハ、ハク!!!?」 「・・・何処いくんだい、千尋?」 ニッコリと極上の笑顔で微笑まれた千尋にはもう逃げ出す術は残ってはいない。 「えっ・・と・・・・」 「ま、今はいいか・・・。もう、逃がしはしないからね、千尋?5年間あえなかった分・・・ゆっくりと楽しませてもらうから。」 「・・・・へ!?」 た・・楽しむって・・何を?今はいいかって・・・いつはダメなのよぉぉ〜!!!! 「せーん!! 早くこっちに気な!!!!」 「あ・・・」 「行っておいで。そなたがはじめてこの世界に来た様に、また湯婆婆様の元へ行くんだよ。そして、私のことは・・・・ハク様と呼ぶように。いいね?」 「う・・うん・・」 コクリ、と千尋が頷くのを確認すると、ハクは今まで何もなかったかのようにスッと千尋から離れると湯屋の中へと足を進めていき、この事態を見守っていたギャラリーに声をかけながら中へと消えていった。 「せーん!!!!!!!」 タタタタっっとリンがせんの元へ駆け寄ってくると、ギュウっと抱きしめられた。 「リンさん!!!!!」 「千!ひっさしぶりだなぁ!!!お前、おっきくなったなぁ!!」 「リンさん・・・・・・また、私ここで働くことになったの!今回は一ヶ月なんだけど・・・」 「そうか!じゃぁ、湯婆婆様と契約はつけたのか?まだなら、これから行ってきな!あたしは部屋で待ってるからよ。部屋、覚えてんだろ?」 「うん!!」 「じゃ、また後でな!」 かくして。千尋はリンと別れた後に、湯婆婆の元へと行き、契約を取り成してきた。 はぁ・・・・契約したのはいいけど・・・私、宿題も何も持って来てないし・・・何よりもお母さんにこんな長くなるなんて言ってないし・・・・どうしよう〜〜〜〜!!!! 目の前には愛しい人。そして、帰ったあとに待っている母親のお説教とのしかかる夏休みの宿題。 千尋は、色々なことを考えてうーんと唸ってしまう。 「もう!!!!とにかく今考えてもしょうがないし!!!これからここにいる事は変えられないんだし!!! 働きますかー!!」 千尋が気合を入れたその影で。ニヤッとハクが笑ったその理由は・・また後日。 <おわり> |
さっぱりわけ分からない小説になってしまった・・・・ハクをブラックにしていく大切な過程だったの に・・(汗) 次からは、ブラック全開でいきまーっす。(笑) |