【2】




「千尋!!!」


「はっはいぃ!!」


や、やばぁぁいぃぃぃ!!!!


ハクの目は本気で怒っている。千尋は背中にたらりと冷や汗がつたリ落ちる感触を感じた。


「どうしてここにいるのか・・・じぃぃっっくりと、聞かせてもらおうか?千尋の口からね?」


ニッコリと笑いながらも、目は笑っておらず・・・・・・誰が見ても、ハクが切れた状態にあると分かるであろう・・・・。


ど、ど、どうしよう!!


千尋はとにかく最悪の事態は避けたいと、視線を色んな所へ泳がし――はた、と目が合った湯女の五月へと助けを求めたのであった。


お、お願い五月さん〜〜〜!!!!!!!!!



「はぁ・・・・・」


目が合った五月の方も、とんだとばっちりが来そうだ・・とため息をつく。出来れば避けたかったが、ここは自分の体を張っている勝負の場だ。なんとかやってみるか、と千尋をフォローしようと口を開いた。


「ちょっとハク様。ここはあたしら湯女の勝負処なんだよ!お飾りでもなんでもいい、れっきとした湯女の一員となった千を連れて行くのは止めてくれないかい!?」


「ほぉ・・・・・そなた、私に歯向かう気か?」


バチバチィっ!と、ハクと五月の間に火花が散った。――どうにも、千尋が思っているほど平穏に話し合いへと進む雰囲気ではない・・・


「当たり前だろ!!まだ昨日今日としか千は来てないけどね、その分みっちりとあたしが教え込んでんだよ!千を連れて行くってことは、あたしがした労働も水の泡になっちまう!!」


ハクの偉そうな態度(当たり前だが)に、五月は思わずカッチーンと来たのか、ついつい興奮してベラベラと言葉が出てきてしまっている。その様子に、千尋は冷や汗が止まるどころか流し続けていた。


あ。あ、あ、あ、あ、さ、五月さんそれ以上はぁぁぁ〜〜!!


「千に、何を教えたというのだ?」


チラッとハクを見ると、にこやかな笑顔の周りにある冷やりとしたオーラが先ほどよりも一回り大きくなっている。


「決まってるだろう!"湯女の仕事"っていうのを間近に見せてやったのよ!」


うきゃぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!


千尋は心の中で叫び声をあげた。そう、五月は千尋が一番言って欲しくないこと・・・・・情事の現場を見た、という事を勢いに任せていってしまったのだ。


に、逃げなきゃ・・・・・・


コソ・・・・・・・・・・と、千尋は足を出口へと進めて行く。ここまでハクに知れてしまったのならきっと結果は同じだ・・・・いや、それ以上に悪いことが待っているかもしれない。そう瞬時に判断すると、ハクが五月に気を向けている隙に、廊下に飛び出て逃げてしまおうとしたのであった。


「ほぉ・・・・・・情事の現場を、ねぇ・・・・」


五月に向かってハクが言葉を返す。


出口まで後、一歩・・・・・


二歩・・・・・・・


三歩・・・・・・・



やった!と千尋が思った瞬間。



バシィィン!!!!!


「きゃっ!」


扉がひとりでに閉まり、そして――


「千尋・・・・・逃がしはしないよ。大体どんなことをしたのか分かった。これは千尋の口から教えてもらうのではなく・・・実際に千尋から手取り足取り教えてもらおうか?」


ジリ、ジリ、とハクが千尋のほうへとゆっくりと近付いていく。


「や、ほら、見、見たっていっても一瞬だし・・・・ね、五月さん!」


千尋は最後の悪あがきとばかりに再度五月に助けを求めるが、


「そうかい?あんた、『湯女ってあんな事までするんだ?』って言ってたじゃないさぁ?」


フォローの仕様がない、と諦めた五月にあっさりと裏切られ、結局自分の首を締める羽目になってしまった。


「さっ五月さぁぁぁんん!!!!!!!!きゃ、ハク!?」


いつの間にか自分のすぐ横まで来たハクに千尋は抱き上げられると、耳元で囁かれた。


「『あんな事』というのを、早速私にも教えてもらおうか、千尋?」


「あ、や、やだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」





―――――その後、結局千尋は一晩中甘い声を上げさせられることとなり、五月が口にしてしまった『あのこと』も実戦させれる羽目になるのであった――――




そして翌日。湯女の間では千尋が見てしまった『あの事』の行為が大流行したという・・。





(追記)


しこたま甘い声を上げさせられる羽目になった千尋は、最後の最後にハクから王手をかけられてしまう事となった。


「千尋・・・・もう頼まれても返事は返さないと誓うね?」


「・・・・・・・っもう、しないもん・・!!」


涙を零しながら千尋は答える。


「――いい子だ。でも、もし今度押し切られたら―――他の神々の湯女ではなく、この私専属の湯女になってもらうからね?」


ピキィィン!!!!!


千尋は布団の中で小さく固まりつつ・・・・返事は一つしかないと諦めて、小さく呟いたのであった。


「はいぃ・・・・」


その答えに、ハクが心よりの笑顔を千尋に返したのは言うまでもない・・・






(おわり)




あ、なんだか前の話と繋がってない・・ごめんなさい(泣)
それにしても・・千尋が見た『あの事』ってなんだろう・・・(笑)





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