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「ふー・・どうしよう・・・・・なんてハクに言えばいいのかな・・・」 千尋は今日何度目かのため息をついた。 朝、兄役から言われた後、自分はいったいなにを言ったのだろうと考えてみた。 確か、夢では昔住んでいた所で中の良かった、理沙とたけしとケンとで、追いかけっこをしていた気がする。 昔の友達、と言うことも在って、なおさら楽しかったのだろう。きっと、その楽しさが口に出てしまったのだ。 「理沙ちゃんに、たけしくんに、ケン・・・。ケン、元気かなー?」 バン! 「ひぇっ!」 ボそりとそう呟いた途端、そこここのドアがバンバンと音を立てて閉まりだした。 それは、ココの部屋の主が帰ってきた印でもあった。 「千尋、ただいま。」 ニッコリと笑ってただいまと言うハク。声だけを聞いてれば、特に何も問題はなさそうだが、いかんせん顔が悪い。口元はニッコリとしていても目が笑っていないのだ。 きてる・・・これは、相当きてる・・・ 目が笑ってない時は危険信号。千尋は今までの経験の中からそれを学習していたので、スッと距離をとってからお疲れ様、と返事を返した。 パシっ パシっ どこかで、ラップ音のような音が聞こえる。 これは!! 千尋が何気なし二ドアへ手をかけて開けようと確かめると、やはり、開かない。 かなり来ている証拠・その2・・・・部屋の中に、結界を張られてしまった。 「ハ、ハク今日は疲れてるみたい・・・?お話、明日にしよっか?」 千尋の言葉に、ハクはまたニッコリと笑い優しく言葉を返す。 「ははは、私は疲れてなどいないよ、千尋?試してみるかい?」 ヤバイ―――!!!! 墓穴を掘ったと気付いた時には既に遅く、千尋の体はハクの魔法によってピッタリと吸い寄せられてしまっていた。 「きゃあ!!」 「千尋、黙って。質問に、答えるんだよ。」 耳元で聞こえるハクの声。その感覚に千尋はドキドキと鼓動が高鳴っていく。 「昨日、何か言っていたね。寝言で・・」 「・・・・」 「何て言ったか憶えているかい?」 千尋は知らないというように、ブンブンと頭を振る。 「ふぅん・・・・・じゃ、質問を変えようか?『ケン』とは一体誰のことなのだ?」 「!!!」 案の定、来るであろう質問がいきなりストレートに投げつけられてきた。 ・・・普通の時ならいえても・・なんか今言ったらまずい気がする・・・ 千尋の脳裏に危険信号の黄色が点滅し始める。 「え。。と・・」 「誰なんだい、千尋?」 ニコニコと千尋に話し掛けるその口調には、真剣さが深々と混じっている。 「怒らないから、言ってごらん・・」 「えっと、えっとね・・む・・・昔飼ってた犬の事なの!友達と一緒にね、いつもその犬も遊んで・・・・んっ!」 明らかに動揺した千尋の声に、ハクは軽く唇を合わせた。 「千尋・・・」 はぁ・・とハクはため息をつく。 まずい。まずいまずい・・・・・千尋は、今とっさに『犬のこと』などと嘘をついてしまったことに対して深く後悔した。 「怒らない、と私は言ったね。それなのになぜ嘘をつくのだ?私はこれでも神だ・・嘘をついたことくらい、透かして分かってしまうのだよ?」 「ご・・ごめんな・・・」 「いや・・・この状態でいるから、千尋も嘘をつくなどという事をしたのかも知れぬな?」 その瞬間、千尋の体は中に浮き、気がつくとハクに抱かれていた。 「ハク!!!」 「やはり、いつものやり方で問うことにしようか?嘘をついたこと。それから、寝言で言った名前のこと。それから・・・私を一日中不機嫌にさせたことについてお仕置きをしようか。」 「え!!??」 最後のも私がいけないの、と言う言葉は案の定飲み込まされて。今夜も甘い泣き声が油屋のある一角から漏れることとなったのだった。 後日、リンが千尋から聞いた話によると。このときの寝言で言った名前は、どうやら幼い時の初恋の人だったらしい。 「おっまえ、よく初恋の人だなんて素直に言ったなー?」 「だって、言わないと何されるかわかんなかったんだもん・・・」 「ナニって、いつものことだろうが?っておわぁ!いてっ!!」 その言葉に千尋はリンの背中をバシッと叩く。 「もう、リンさん!そ、そ、そんな事大きな声で言わないでよ!!!」 「ってぇ〜・・。ったくなぁ、いつもと同じコトだろ?それじゃなにか?もっと別のことでもされそうになるってか?」 「・・・・うっ・・・・」 「コラ―!!!お前達!しっかり働かんか!!!!」 「ヤベ!父役だ!うし、千!さっさと終わらせよ―ぜ!」 「うん!」 「・・・・で、あとで何をされるんだかこのリン姐さんに教えてくれよ?」 「・・・え゛。」 余計なことを言わないように、考えてから発言しよう――― リンの言葉に、千尋はまた一つ油屋にて学習するのであった。 (完) |
一体何が書きたかったんだか・・・(汗) ** BACK |