[ナゾナゾの行方]
「じゃあね、じゃあねっ・・・・!

仕事も終わってハクの部屋。誰も邪魔できないその部屋で、それは夜毎行われていた。

「切っても切っても切れないパンってなーんだっ!?」

最近のお気に入りの遊び―――2人っきりのナゾナゾ大会が。

「切っても・・切れないパン?うーん・・なんだろう?」

・・よっし・・!

ぎゅ、と千尋は胸の前で小さくこぶしを作る。

いつもいつも、ハクには適わないけれど、この時間だけは唯一ハクに対抗できる瞬間で。

勝った・・・・!

なんて、ちょっと優越感。

だって。

いっつも、いっつも、いーーーっつも、負けてばっかりじゃ・・悔しいもんっ。

「答え、分かった?」

顔を横に向けて、ハクの顔を覗き込む。

覗き込んだその先には、「うーん・・・」と本気で悩むハクの顔があって。

不覚にも。

『可愛い』なんて思ってしまっていた。そして、思わずーーー

「可愛・・・・」

ポロっと。

小さく漏れてしまったのだった。

・・・・・・・・はっ!!!

やばい・・・・・・! そう思ってチラリとハクの顔を見上げると、ちょっとだけ怪訝な、表情。

でも。

「・・・・ん?どうかした?」

何事も無かったかのように、ニッコリと微笑んでそう言ったので―――

あ・・聞こえてなかったんだ・・・!

よかった、とホッと胸をなで下ろした。

「う、ううん!何でもない!・・で、答えは?」

千尋は、自分も何事も無かったかのように、返事を返す。

「うーん・・分からないな。」

やたぁー!私の、勝ちっ!

「じゃあ、答えねっ!それはね・・・」

「待って。」

勝ち、と思って答えを言おうとしたら、ハクに言葉を閉ざされる。

「ハク、答え聞かなくていいの?」

本当に素直にそう思って聞いたその言葉に、ハクはニッコリと笑って、言葉を返した。

「千尋だけから、って言うのはちょっとずるいな。私からも問題を出すから・・・その答えが分からなかったら、お互いに言うということにしないか?」

う。

そんな、優しい顔されたら。

いや、なんて言えるわけないのに。

絶対分かっててやってる・・・・・・・。

「う、うん。いいよぉ・・・。」

言葉の最後はフェードアウトさせながら、小さく了承の返事を返すと、ハクは「それじゃぁ」と言って、問題を口にした。

でも。

「ええーーーー??!」

聞いた瞬間、不満の声が上がってしまう。

だって。

「好きの反対は?」

なんて・・・それって。

ナゾナゾなの??

「分かった?」

私が悩んでいると、今度はハクが覗き込んで来た。

く、悔しい〜〜!

さっきまでは、私の方が優勢だったのに。

「えっと・・・反対、は・・・」

単純に考えると・・『嫌い』? うーん、でもそんなじゃないような。もしかしたら、『好き』じゃなくて・・・・道具の『スキ』かも?でもそれの反対って・・・

ぐるぐると色んな考えが頭を回っていく。

――と。

ハっ・・・・。

本当に、本当に、単純なことに、思わず気が付いてしまった。

えっ・・・・・・・ま、さ、か。

うひゃ。

ボっと、顔に火が点いていく。

チラッと最後に考え付いたのは。

本当の本当に反対の言葉なんじゃ・・・・なんて。

「・・・分かった?」

再び聞いてきたハクの顔を見ると、さっきよりも更に甘い顔でこちらを見ている表情で。

〜〜ぜ、ぜ、絶対、確信犯だ・・・・!!!!!

そう思ったものの、やっぱり言い出せなくて。

「分からないんだったら・・・私から先に教えてあげようか?」

えっ・・・!

いい、と声を上げる間もなく。

ちゅっ。

短い、音を立てて唇を掠め取られてしまう。

「〜〜〜〜■×○△☆っっ!!!!!」

や、や、や・・・・・

やられたっ・・・!!!!!!!!

「・・・ご馳走さま☆」

まるで、いたずらっ子が笑いながら謝るようにそう言われてしまったら、こっちが折れるしか・・・方法は、ない。

「・・・・・・もぅ。ずるいんだから・・・・・・」

少しだけ、わざと膨らました頬でそう言うと――ハクが、ギュウ――っと抱きしめてくれる。


――ああ、何て幸せなんだろ。

――なんて、なんてこの時間は嬉しいんだろう。

なんだか、楽しくて、幸せで―――ポロっと、一滴、瞳から涙が零れる。

あ。やだ。

こんな嬉しい涙、初めて出した・・

「・・・・千尋?」

心配そうに、ハクが覗きこんできて、自分の流している涙に気付くと――そっと、瞳に、口付をくれた。

「ん・・・」

「・・どうしたの?」

ハクの優しい声。優しい瞳。優しい唇。

みんな、みんなみんな―――大好き。


「・・・・・あのね・・・・」





――そうして、どんなに幸せで、どんなの嬉しいのか私はハクに話し出す。



ハクは、ジィっと聞いてくれて、最後にフッと優しい笑顔で―― 「私もだよ」と、言ってくれる。



悔しいけれど。


絶対絶対、ハクには敵わない。


でも、でもね。


まだそれは、ハクには言ってやらないって決めているの。


だって・・・・・・


負けっぱなしじゃ悔しいし。一回ぐらい勝ってからでも――遅くはないよね?






そんなわけで。






「えっと、今日はね・・・・!!!!!!」



今日も明日も明後日も。



仕事が終わったその後は、2人のお気に入りのゲームが夜毎始まるのでした。




・・・・私が勝てる日って、来るのかなぁ・・・・・???






(終り)



切っても切っても切れないパン・・・お分かりと思いますが、「フライパン」です。初歩的ナゾナゾなのに・・解けないハクって・・(笑)。再び、意味のない短編を書いてしまいました・・・す、す、スミマセン・・ここんところ、頭の中はスウィーツ続きです。これも会社で半分以上書きました。仕事中に・・・違う世界へといってらっしゃい状態で・・・。だって、暇だったしさ・・。いやいや言い訳は置いておいて。もう、甘々が読みたくて読みたくてしょうがありません。なんで、自分で書いている始末です・・・えへ☆
イメージSONGはドリカムの、「Wherever you are」です。あの曲が途中でイメージに沸きました。思わず、ニッコリとしたくなるような・・そんなお話、と皆さんが感じてくだされば良いな、とか思ってます。では、ここまで読んでくださってありがとうございましたvv アイコでしたvv(*^▽^*/

**BACK**