=5000Hitリクエスト小説= 【 5 】 |
『私、思い出したの!!』 「・・・・・・・何を??」 タタタタタタ・・・・ 千尋はトンネルに向かって一目散に駆け巡る。 『あなたの名前。』 「・・・・・・誰・・・誰の名前なのよ・・・・・・っ!!!」 その間にも、落ちていた記憶がだんだんその形を現し始める。もう、遅い―――?まだ、間に合う――――??? 「何がっ・・・??何が遅いの?何が間に合うの・・・??」 ざぁっ・・・・・・・!!!!!!! 着いた。ここと、現実を結ぶ境界線――― 「あ、れ???」 千尋は違和感を感じた。いつも、夜ってここに来れるようになっていたっけ・・・・? 目の前にはあのトンネル。後ろを振り向けば、湯屋への道。 『振り向いちゃ、いけないよ・・・』 「振り向かないもん・・・・」 サク。 サク。 一歩一歩、トンネルへと近付いて。そのたびに、西に傾く月も少しづつその身を沈めて行く。 『――忘れちゃうんじゃないんだって。ただ、思い出せないだけで・・・』 「忘れちゃうんじゃない・・・?思い出せないだけ・・・?・・じゃぁ、私の記憶も・・」 サク・・・ ようやく、千尋はトンネルの目の前にたどり着いた。後一歩、踏み入れればこの世界からは居なくなる―― 『思い出したの、私。ハク、あなたの本当の名前は―――!!!』 「―――本当の名前・・・?本当の・・名前・・・ハクの・・・・ハク・・・コ・・・コ・・・・ハ・・・・ク・・・っ・・・・・・・・」 カラカラカラ・・・・・・・・・・ 何かが、崩れ落ちる音がする。 「ハクの本当の名前は、コハク・・・・ヌシ・・・・・・・・!!!!!」 「千尋―――!!!!!」 バっ!!!!! 後ろから、ハクの声がする。千尋は、迷うことなくその方向へ――後ろを振り向いた。その瞬間。 『私の名前はニギハヤミコハクヌシ。千尋・・・おぼれかけたそなたを救ったのは・・』 「ハク・・・」 『振り向かないで』 「ハク・・・ハク・・・・」 『きっと・・・会える・・・』 「ハク―――!!!!!!!!!」 小さな川が大きな清流になるように。千尋の失われた記憶の欠片が一気に頭の中に押し寄せてくる。 「千尋!!」 「ハク!!ハク!ハク!!わ・・忘れててごめんなさい!!」 白い竜の姿になったハクに千尋は抱きつくと、不意に自分の立っているところが波々とした大河に変る。 「きゃ!!!!」 「千尋、私の背に乗って。」 「う、うん・・・・!」 千尋はハクに勧められるまま、ハクの背中に飛び乗って大河を見下ろす形になり――ふ、と西の方向に目を向けた。 「あ、月が・・・・」 「やーれやれだね!!!まったく、人間をこの世界から追い出せると思ったんだけどねぇ!!!」 ポゥっと光が現れたかと思うと、突如湯婆婆の姿が現れた。 「!!!おばあちゃん!!!!!」 「ああ、その言い方ではお呼びなぁよ。ったく・・・強烈な魔法をかけたつもりだったけどねぇ?あんた達の前には敵わなかった訳かい・・・」 はぁ、とため息混じりに湯婆婆はハクと千尋の二人を睨みつける。 「・・・・・・・・・それは、どういうことですか湯婆婆様!!!千尋は・・・事故で記憶を無くしていたわけではないのですか!!!!」 「まぁそういきり立つでないよ、ハク竜。これはね、あたしと千との契約だ。いくらあんたでもおいそれには口を出せやしないよ。千と交わした契約はね・・・3日後の満月までに記憶を思い出せなければ、今後一切ここに来ることは叶わない。そして、記憶を無くしてもらうと言うものだったのさ。」 「―――な!!!!!!!」 「話は最後までお聞き!その代わりね・・・・記憶を思い出せたときは、ハク。お前も千尋のように私の許可なく・・許可無くね!この世界と現実世界を行き来できるようにするっていう取引だったんだよ。まったく、こんな具合に自体が転んじまうとは予想外だね!やれやれ・・・・骨折り損だね。さ、あたしは仕事がある。お前達は・・・今日は使い物にならないね!暫くそこで頭を冷やしてから戻りな!!!」 その言葉が、湯婆婆の精一杯の優しさに聞こえた。そして、言葉どおり湯婆婆は言いたい事だけ言うと――すぐに油屋へと姿を消していってしまった―― 「千尋・・・・」 「はは・・・はいっ!!!」 ・・・怒ってる・・・声が・・・ 自分を呼ぶ声が、怒りを含んだ声だと分かるのに数秒もかからない。ハクの竜化した体も心なしか怒りのオーラで纏われているため、少々熱い気がする。 「・・・湯婆婆のいったことは本当かい・・?」 「う・・・・・」 「千尋、答えなさい。」 「あ・・・はい。本当・・で・・・・きゃぁ!!!!」 不意に竜の体からハクは人型に変貌して、千尋を痛いくらい抱きしめた。 「い、たたたた!!ハク、痛・・・!!」 「千尋は!!!・・・千尋は、私がどんな思いをしていたか知っている?」 その言葉に、バッと顔をハクの方にあげると――今にも泣きそうな・・顔。 「千尋の記憶が無いまま・・このままなのかと思って――私は生きていけないと思った。」 「ハ・・・・・・んっ・・・!」 名前を呼ぼうとすると、ハクの唇が急に降って来た。 「!!!ハ・・・・っ!」 「千尋・・・・千尋・・千尋!!!もう・・・私に黙って危ないことはしないでおくれ・・!!」 「うん・・・・・・ごめん・・ごめんね、ハク・・・・!」 ギュウウウウウッと2人は抱きしめあう。まるで、何年も会ってなかった恋人同士のように、いつまでも、抱き合い・・・・そして、思い出したかのようにハクが口を開いた。 「そう言えば、千尋・・リンにも言いに行かなければいけないね?凄く心配していたから・・」 「!!!!あ、リ、リンさん!!・・・どうしよう〜〜・・・すーーーっごく怒られそう・・」 千尋は困った顔でハクを見上げるが、そんな千尋とは裏腹にハクは声を上げて笑い出した。 「も、もう!!!何よ、ハク!!」 「ははっ・・・・!!そうだね、すっごく怒られると思うよ・・・くくくっ・・・!!」 「もう・・・・・意地悪なんだから・・・・!」 「でもね。」 「え。」 もう一度、唇を重ねられる。さっきのように、今度は短く無く、深く、長く・・・・ 「ん〜〜〜っ・・・・・はっ・・ハク!!」 「一番怒っているのはこの私、なんだからね?わかってる?」 「・・・・はぁい・・・」 ニッコリ笑顔で微笑まれると、もう逆らう余力なんて残されてはいない。・・完敗・・。 「だから、このあとリンに会ったら――私の部屋に来ること。」 「えぇ!!!??」 「・・いいね?」 有無を言わせない圧力に、千尋の出す言葉はこれしかない。 「・・・はいぃ・・・」 きっと、私の記憶の無い3日間以上にお仕置きされるんだろうなぁ・・・・でも・・・・・・ 「ま、いっかぁ・・・・」 「え、何か言った、千尋??」 「ううん!なんでもなーい!!」 今回は、私が悪いから・・・許してあげるっ・・・!! ―――短いようで、長かった千尋の記憶が無い3日間。いかに強い魔法を掛けられようと も、その思いだけは縛られることは無い。 どうあがいても、消しようの無いもの。それが―――― 記憶 鮮明。 (完) |
終わりました。初の、きり番リクエスト小説でした。asuka様、本当にリクエストをありがとう ございました!えと、リク内容は『大泣きする千尋』だったんですが・・・書いていくうちにだ んだん・・こう・・悲しい物語になりそうになってしまって・・ごめんなさい!!終りは一応、ハッピーエンドにしてみたんですが!ちょっとブラック入り(?)で・・・!!千尋は今回嫌がらずに・・・・・ということで・・・・。。。。ああ〜〜リク通りになってなくてごめんなさい!今の私の腕ではこれが精一杯のよう・・・です・・・・(汗) asuka様、このようなものですが、潔く捧げたいと思います!!!そして、ここまで読んでくださった皆様に、深くお礼申し上げます。ほんとうにありがとうございました!!! 12/12 月子拝 |
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