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<お題4 : 友情> |
「星、きれいだ・・・・・」 焚き火の炎に邪魔されながら、寝転がった天に散りばめられた天体を見て、心から言葉が、出た。 流れ星が流れると。 「あ。」 不意に、父の顔が浮かんできて。 「・・・ありがとう。」 感謝の心が沸いてきた―――― <3> バキィっ!!!!!!!!!!!! 「い、いってーーーー!!!!!!!!!」 1時間かけて帰った、家。 『ただいま・・・・・』 と、恥ずかしながら小さな声で言ってドアを開けた瞬間、誰かの鉄拳が自分の頬にヒットした。 ま、またかよ・・・・・・・! そう思いながら、今度は誰・・・・・・と、顔を上げれば。 「ご〜て〜ん〜〜〜・・・・・・」 「・・・ひっ・・・」 ゆらっと陽炎でも立ち上るぐらいに怒りをあらわにした――――兄。 「に、兄ちゃん・・・・っ」 悟飯が、そこに立っていた。 「お前、母さん泣かすとは何事だ!!!!」 「う・・・・!!!!!」 兄の言葉に、トランクスとの喧嘩で一瞬忘れそうになっていた心の傷が疼きだす。 ・・・ああ、あんなに反省したのに・・・。 自分を情けなく思いながらも、隙を突いて二度目の攻撃に移りそうな兄から逃げるように家の中に 飛び込んだ。 飛び込んだ自分に、飛び込んできた光景。 と、いうか。 「悟天ちゃ〜〜〜〜んっ!!!!!!!!!!!」 ぎゅむ! 「んぐ!!!!!!!」 自分に飛び込んできた母に、首を絞められそうなくらい、抱きしめられる。 おーいおいおい、と泣きはらしたに違いない母の目から、そんな言葉とともに涙が流れていた。 「ごめんな、ごめんな・・・・・」 謝る母の姿に、これ以上痛くなりようがないぐらい、胸が締め付けられた。 ・・あんなに。 あんなに、感情をあらわにして。 罵ってこそはいないけど、きっとたぶん、15年間の中で一番母を傷つけた行為をしたのに。 それでも、こんなに、自分を愛してくれる母の、存在。 違うんだ、と。 母のせいではない、まして周りのせいでもないんだ、と。 あのときの言葉を、撤回したい気持ちで一杯になる。 あれは、何も知らない、分かろうとしない、自分が引き起こしたこと。 誰のせいでもない―――― ・・・それが、わかった。 さっき、トランクスが来て。 一緒に、荒野の果てを見つめながら、ふつふつと心に湧き上がった、熱い思い。 ・・・変わらなきゃいけない。 自分の目で、自分の世界を超えたところを感じに行きたい。 その旅が、終わったらきっと―――― 違う自分に、なっている。 「・・・お母さん。」 いつの間にか自分よりも背が小さくなっている、母に話しかける。 「・・・お父さん。」 成り行きを見守っているんだか、何も言わない父へも。 「兄ちゃん。」 ふう、とため息をついて自分の言葉を待つ兄にも。 「僕」 「僕、一度この家を出る。」 その意思を、告げた。 「――――――な・・・・・、なにいってるだ!!」 お母さんの反応は、予想通り。 やっぱり・・・という感じに言われてしまう。 父は、というと。 「そっか。わかった。」 ・・・・はは・・・・・・。 緊張していた自分の気が抜けるぐらい、ニコリと笑顔を浮かべたいつもの父だった。 「悟空さ!わかったじゃねえべ!そったらこというでねえ!」 母と父の喧嘩が始まったところで、家の中に入ってきた兄が静かに言った。 「・・・・どうするんだ、高校は。」 流石、というべきか。 すでに家を出て、ビーデルさんと暮らしている悟飯は現実的な面を指摘した。 ・・・ほんと、うちって兄ちゃんがいないとな〜・・・。 変に感心してしまうと、「悟天。」と、考えを言うように促される。 ・・怖いってば・・。 ビーデルさんも結構大変だ・・・・・。 そんな風に思いながら、深く息を吸って、はいて。 「学校は、まだ、いかない。高校に行くよりも、大事な事だって思うんだ。」 真摯に言葉をゆっくりと紡いだ。 「・・それが、自分の出した答えなんだな?」 兄の言葉にコクリと頷く。 繋がる視線。 息をするのも苦しいくらい、張り詰めた周囲。 「・・・じゃ、いいんじゃないか。」 いくばかもしないうちに、そういった兄の表情がすっと和らぐと。 「兄ちゃ・・・」 「母さんは、大丈夫だ。これから僕とビーデルがここにくる。だから」 だから、行ってこい。 最後の言葉は聞こえなかった。 でも、心の中に響いてきた。 「兄ちゃん・・・・・」 ああ、やばいな。 また、涙が・・・・・・。 「バカ、悟天。男が泣くな。」 ・・・ポン。 言いながら、優しい、厚い手が自分の頭をぐりぐりと乱暴になでる。 「う、う〜・・・・・」 父がいない間、ずっと自分を守ってくれていた兄。 厳しいけど、優しさでずっと守ってくれていた。 分かっていた。 知っていた。 恥ずかしさにまぎれて、一度も『ありがとう』なんて言っていなかった。 家を出たら暫く会えない、会わない。 そう思うと、無性に涙がこぼれてきて―――― 「・・・ほんっと、心配だよ。お前がいつまでも・・・」 そう言った悟飯の言葉に、ずずっと鼻をすすり上げて、言った。 「・・・ありがどう、兄ぢゃん・・・・」 ぽん! かいぐりされていた頭をポッと離される。 「父さんは分かってるよ。お前の強さ。」 その言葉に、ぐしゃぐしゃになった顔で、母に叱り付けられている父を、見た。 「まったく悟空さは・・・!!」 「ま、まあいいじゃねえか・・・・」 たじたじになりながらも―――――― 「悟天、オラも昔世界を回って修行したんだぞ。今のおめぇよりもちっと小さかったけどな!でも」 「・・うん。」 「それは全部、全部、オラのためになった。だから悟天。」 「うん・・・」 「おめぇにも、出来るさ」 ――がんばれ―― パチン! ウィンクとともに、伝わってきた悟空の言葉。 「・・・うん・・・!」 熱い想い。 自分も本当は父のように強くなりたかったからこそ感じた、差別感。 それが、今、対面することで解けて―――――― 「・・・行ってきます!」 悟天は、自分を創る旅へと大きな一歩を踏み出した。 右手には親友の『がんばれ』を。 左手には兄の優しい気持ちを。 胸の中には両親の重みを感じて―――――― 一歩一歩を、踏みしめた。 ――――――そうして、一年。 色々なところを、見た。 さまざまな思いを、感じた。 寒い北の地方では、自分を見て、はるか昔の父を知り懐かしむ人に出会い。 『あれぇ?あなたもしかして!』 『あ、あの』 『嬉しいわ!お家に寄っていってちょうだい!』 その笑顔から感じる父の行いに何か誇らしげなものを感じ、くすぐったい思いに駆られた。 途中で髪形も変え、そこから先は一層『自分』が一個なのだと感じることが出来た。 ―――――― 一年の間、そうやって、自分と周りを見つめられた。 「・・・・夜明けだ。」 一晩中旅の始まりを振り返っていたら夜が明けてしまった。 パァッと朝靄を分けて、光が大地に降り注ぐ。 「いい朝だなー・・・・」 一年前じゃ、朝を感じてもそれが当然だと思って、考えるにも至らなかったそんな思考。 「・・・帰ろう。」 今日。今日だ。今日帰るのが、一番良い。 ガサっと地面から起き上がり、帰り支度を整える。 「帰ったら、皆どんな顔するかなー」 『おかえり!』 きっと、言ってくれる。 お母さんなんか、また泣いちゃうかもな・・・ お父さんも、兄ちゃんも笑ってくれるかな。 そして 一番、自分を最初に勇気付けてくれた友人は。 「なんていうかなー・・・」 空を仰ぐ。 輝く朱色が空色へと続くグラデーションを見ながら、深く息を吸う。 心にいつもあった、大切な人たちを思いながら―― 「よし、っと。」 すっくと立ち上がる。 それは 少年が、青年への道を踏み出した、瞬間。 『ただいま!』 その言葉を声高々に、言うために。 悟天は、軽やかに帰路へと向かって前へと進んでいったのだった・・・・。 -fin- |
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友情というか悟天の成長物語風になっているのは、先に話が思い浮かんで、「飯ビーサイトなのに悟天メインじゃ・・・!」という事で無理やりお題にはめ込みました。元々<友情>メインで行く予定だったのでそれはよかったんですが、皆様の悟天像が崩れたらすみません。 彼が一番、普通の少年らしく葛藤したんじゃないかなーと思ったのです。くだらない、小さなことで。 これを書いて、意外と悟天とトランクスの友情っていいなぁ・・とちょっとだけ芽が吹きました。 久々の創作、読んで下さり本当にありがとうございました。また次回・・! (05/11/20 アイコ> |