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<お題4 : 友情> |
「・・・そういや、あのあとすっごい恥ずかしかったんだよな〜」 ガサっと焚き木を炎にくべながら、悟天は昔を思うと「今でも顔から火が出るよ・・・・」と、ポツリとつぶやいた。 <2> ざざぁ・・・・・っ・・・ 冬の風が、容赦なく自分のほほをたたきつける。 バン! と。 家から飛び出して、悟天は力の限り進んだ先の荒野でぽつんと座っていた。 「さむっ・・・・・・・・・・・・・」 ぶるっととまらない身震いを抑えながら、あーあ、と悟天は思った。 とうとう言ってしまった。 まさか、あの場で言う事になろうとは思ってなかった。 ゴロン。 ゴロン。 何度寝返っても、自分がしたことは巻き戻し出来ない。 ・・・後悔を。しているわけじゃないけれど。 でも でも あんな形で、言ってしまうなんて。 『ごて・・・』 母のショックを受けた顔が忘れられない。 「・・・親不孝だ・・。」 あんな顔をさせてしまうなんて。 自分が傷ついたと感じる以上に、そんな顔をさせてしまったことに深く傷つく。 「・・・どうしてうまくいかないんだろう。」 誰かを傷つけたかったわけじゃない。 自分が傷つきたかったわけじゃない。 ただ 分かってほしかっただけだった。 結果 誰かを結局傷つけた。 「僕ってバカだな・・・・・」 そう一人ごちて地面に突っ伏すと。 「本当にな。」 「!!!!!!!!」 心臓が口から本当に出るかと思った。 「ト、トランクス君!!!!!」 いつの間に来たんだろうか。 トランクスが、自分の横に、いた。 「お前って、ほんっと〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜にバカだな。昔からだけど。」 ガサっ。 座りながら、自分を鋭い目で見ながら、派手にこき下ろされる。 ・・・・そ、そうだ・・・・・・・・・・。 さっきの、あの場に、トランクス君もいたんだった・・・・・。 取り乱した自分。 近頃見せなくなった素直な自分を、久しぶりに見られてしまった。 は・・・・・・恥ずかしーーー!!!!!!!!!!!!! 恥ずかしさで顔から火が出そうだ。 「い、いやだって・・・・僕はさ、その・・・」 かっこ悪いかっこ悪いかっこ悪い。 幼馴染のトランクス相手にかっこいいも悪いもないのだけど、そこはそれ、やっぱり男としては 友達であれどそんなところは見られたくないと思うのが常じゃないか。 ましてや、自分の中にたまっていた――――トランクスにでさえも、打ち明けてなかった心の内を 見られたとあっては。 「・・・さっきの、忘れてよ。」 カッコ悪さ倍増だが、そんな風に言うしかない。 「・・・なにが。」 なぜだか憮然とした言葉。 な、な、なにがってなんでだよ!!!!!!!!!! ていうか、何でトランクス君がそんな声出すんだよ! 言葉に出来ない言葉でパクパクと口をさせていると、途端に頭に痛みが走った。 ガン!!!!!!!!!!!! 「い、いって〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!」 「お前、わかんないのかよ!!!!!!!!!」 「なにがだよ!!!!!!????」 ガツっ!!!!!!!!! 互いに互いの胸ぐらをつかんで、一触即発の空気が流れる。 いや、もう一触は一方通行であったけれど。 「なんでだよ!!!!!!!!!!!!」 トランクスの叫びが、荒野に響き渡る。 真剣な眼差し。 殆ど見たことがない、瞳に宿る色。 ・・・・・え・・・・・・? 一瞬、トランクスの気持ちを量りかねて動揺してしまった隙に。 「この・・・・バカやろーーーーー!!!!!!」 え、う、わ・・・・・ バキィっ!!!!!!!!!!!! 「うわーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」 ものの見事に、悟天は吹っ飛ばされていた。 ガラン・・・・・・・・・・・ 「い、いててて・・・」 起き上がれば、どうやら大きな岩場にめり込まれたらしい。 上から岩が頭の上に落ちてくる。 なにがどうしてなんでがこうで? 図り損ねたトランクスの心。 なんだか、悲しそうな―――― そこまで考えると、大きな光が埋もれた岩の隙間から見える。 「・・・・・げ。」 これは。 間違いない。 「う、うっそだろ・・・!!!!!!!!!」 がっ!!!! 考える暇もない。 「何でだよーーーーーーーーー!!!!!!!!」 ボウッと自分も金色の光を放つと、悟天は岩の中から這い上がって。 次の瞬間。 ド・・・・!!!!!! 今時分がいたその場所が、四散していた。 「な・・・・・・・」 なんで。 自分が、ここまでトランクスにされなきゃいけないのか。 「・・・・」 何もいわずに目の前に浮くトランクスをにらみつける。 「・・・」 トランクスも、自分をにらみつけて―――― ・・・・どのぐらい、たったのだろうか。 「・・・なんで、俺に何にもいわなかったんだ・・・」 泣きそうな声、悲しそうな顔で、そう言った。 「・・え・・・?」 その言葉にハ、とする。 「なに・・・」 なにが、と言いかけたところで、畳み掛けるように言葉をぶつけられた。 「俺、お前の友達じゃなかったのか?!」 「・・・・・・!」 「俺は!!!・・・俺は。悟天が、独りだったんだって。俺にも言わなかったって事は、本当にお前が 独りだと感じていたんだって・・・・・さっき、は、初めて気がついて・・・」 「トランクス君・・・」 しゅん・・・・ 俯く、二人。 気も小さくなり、元に戻れば。 「・・・何年も、気づかなくて・・・・・ごめん・・。」 「・・・・!!!!」 トランクスの、心の言葉に。 ポロ、と。 押さえ込もうとしていた情けない、涙が。 少しずつ、こぼれだした。 ――――ああ。 そうだ。 そうだったんだ。 自分は、独りじゃなかったんだ・ こんなに。 こんなに、大切な友達がいたというのに。 どうして、自分は――――――。 「・・・・・ごめん・・・・・・」 流れ出した涙とともに、心のつかえが消えていく。 素直な気持ちで、大切な友人に謝れば。 「お・・・・お前は、本当に本当にほんっとう〜〜〜〜にバカでどうしようもない友達だよ・・・」 ズズっ・・・・・・ トランクスの言葉に鼻水をすすって俯いた顔を上げれば。 「・・何だ、お前泣いてンのかよ。」 「ト、トランクス君だって!!!!」 互いの顔をからかい見合いながら。 そっと二人は握手する。 「・・・これから、どうすんだよ。」 握手しながら言われた言葉。 「うん・・・・・・・・」 さっきも、トランクスが気持ちをぶつけてくれたから初めて分かったことがあった―― ――ことに気づいてから。 「・・・一度、家を、出ようと思う。」 悟天は、自分の考えてることをポツリとトランクスに伝えて、いった。 「そうか・・・・・・」 伝え終わると、少し寂しそうではあったが。 「がんばれよ。」 真っ赤な目をしたトランクスが、笑って自分を送り出す言葉を言ってくれた。 それは、たとえ家族が同意してくれなくても反対しても。 「ありがとう・・・」 胸を張って家を出れる、そのぐらいパワーのある言葉だった。 友達の。 友情の。 存在を、気づかないままの自分じゃなくて、よかったと。 心からそう思った。 「・・家、帰るよ。伝えに。」 「そうだな・・。もう、3時間ぐらいたってるしな。しかもここ寒いしな。誰かがこんな遠くまで来たおかげで 俺も風邪引きそうだぜ。。。」 「・・・・・・それは僕のせいじゃ・・・・」 「うるせーな。お前のせいだよ!ほら、かえろーぜー。俺疲れた。」 「な、何だよトランクス君!僕のせいじゃないよー!!!!!」 家路までの1時間。 来たときとは裏腹に――――今は、こんなに。 「トランクス君!」 「なんだよ?」 「ありがとーーーー!!!!!」 「!!!!!!う、うるせーな!一回言えばわかんだよ!」 「あははははは!何だよー!照れるなよー!!!」 こんなに、楽しい帰り道。 「て、照れっ・・・き、気色悪いこというな、バカ!!!!!」 「あはははははーーーー!」 笑いながら、友情を感じながら。 二人は、パオズ山へと空を飛ぶのだった。 |
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