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<お題4 : 友情>

(1)



「僕はお父さんじゃないよ!!!!!!」


爆発した感情。

静かにそよぐ夜の風。

周りの皆が、目をむくようにその場が凍りついたのが、気配で分かった。








<友情>










パチパチパチパチ・・・・・


「あちっ、あちっ!」


火花散る、目の前の薪の周りに指した焼き魚を、悟天は不器用な手つきで口へと運んだ。


「あ〜〜〜・・・」


もぐもぐもぐ。


食べながら闇夜に染まり、星が瞬く空を見上げれば。


・・一年か・・・。


もう、一年が経ったのだとふと感じた。


「僕、この家を出る。」


たった一言告げたその言葉を発してからもう一年。


「っふう。」


ドサっ!


草の上に寝転んだ。


我が家へはあと数日の距離にいる。


・・もう少しか・・・


思いながら一年前を思い出した――――













一年前。






今なら言える、きっかけなんて些細なものに過ぎなかったと。



でも。



15歳の自分にとっては、些細なもの、で片付けられるものではなかった。




以前から言われていた、父と似ていると。



いつからだったのだろうか。



言葉に出来ない、『何か』を感じていたのは。



自分を通じて、皆が父を見ているのだと気づいてから。



胸に詰まる何かを感じていた。





じぶんは、なに?



言いたかった。



ぼくは、ぼくだよ。



言えばよかった。



いつも、言えばよかったのだ。



でも、言えなかったのだ。





事を起こす前から――――諦めていたから。



無駄、なんだと。




何を言っても、きっと子供がよくする他愛もない自己主張だと受け止められたことが何度かあったから。




そんな風に、諦めの境地で今日もこの言いようのない気持ちから逃げ出せると思っていた。






――けど。







『ほんっと、似てきたなぁ〜』




誰が言った言葉かもう覚えていないけれど。


珍しく、孫家で仲間の集まりがあった、今日。



その一言で、全員の目が自分に向けられた。




お願い、止めてよ。


・・いたたまれない。


そんな目で、僕を見ないで・・・!


・・視線の先には好奇しかない。



悪気はないんだ。



分かってはいても、分かってはいても。



だったら、この気持ちはどこに出せばいいんだろう。



「そ・・・」



・・落ち着け、自分。



「そ、そんな言わないでよ〜っ!!!!」



苦しい気持ちを抑えて、笑いを作る。


周りの皆も、笑って、それで終わって。


そうしてくれれば、この場から逃げ出せると思ったのに――――




「ほんっとに、悟天ちゃんは昔の悟空さにそっくりだべ。悟天ちゃん見てると、
悟空さはこんなだったんかなーってオラ思うだよ。」




ニッコリとして、そんな事をいった母の言葉に。



ピシリと仮面の心にヒビが入った気がした。




お母さんまで。


お母さんまで、そんなこといわないで。


この場で、そんな――――




・・思ってしまった自分はマザコンなんだろうか。



でも


母が、皆と一緒になってそういったことが。



本当に、何よりも、心の中に傷を作ったのだ。



悲しい、と。


なんて悲しいのだろう、と。



思ったら、言葉が出てしまっていた。






「僕はお父さんじゃないよ!!!!!!」







初めて出した心の叫びに、周りの皆が、母の顔が。



「・・・ごて・・・」



凍り付いていた。




いやだ。


いやだいやだいやだ・・・・っ・・・




ここにもどこにもいたくない。



ここ以外なら、どこでも。







バン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!







凍り付いてから、数秒後。




悟天は、寒空の中へと飛び出して、行った。




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