<彼の不安と彼女の気持ち >(1)
ブウの大戦後、世界は平和を取り戻した。社会人、学生――――皆元通りに、なった。





当然。




あの二人も、同じ事で。








「ビーデル!!!!!!」


今日もまた―――――教室に、友人の声と彼女の声が響きだして、いた。











===彼の不安と彼女の気持ち===












「ほら、ビーデル!!何やってんのよ!連れてかれちゃうわよ!」

「い、いいって!大きな声出さないでよイレーザ!!!!!」


ざわつく教室に、イレーザの高くて大きな声が響き渡る。


もう、やだ・・・・・・!!!!


ビーデルはその声が、『連れて行かれ』そうになっている本人に聞こえていやしないかと、ドギマギしながらチラッと目の端に彼を、入れた。


彼。


今、教室の片隅で、彼の容姿と――――中身、将来性にいち早く気付いた女生徒たちに、勉強を教えて欲しいと頼まれている、その彼。


その彼――――悟飯、に。


『一緒に帰ろう』


そう一言。一言、いつも通りに言いたいだけなの、に。


何故だか、ブウの大戦以来。悟飯の近くに、どうも近寄りがたい。

それは、周りを取り囲む数人の女生徒のせい――――も、しばしばあるけれど、なんだか、どうやら、それだけじゃないらしい、のだ。


別に、悟飯に対して、なにか後ろめたい気持ちがあるだとか、そう言うわけじゃなくて・・・・・問題は、自分だと最近気がついた。


なん・・・なんでよーー!


授業中でも、そうでなくても。悟飯をちょっとでも目の端に入れるたびに、どかん!と心臓が爆発しそうなほど、動機が激しくなってしまう。


お、おかしいわよあたし・・・・・!


悟飯がハイ・スクールに入ってきた時は、こんなドキドキしなかった。

空跳ぶのを教えてもらっている時も、そりゃあ最初こそ勘違いをしたけれど、自分の事を何も思ってないと分かってからはそんな勘違いも吹っ飛んだ。

それに、戦いの最中だって。彼を不思議と生きていると信じていられたのも、『仲間』という枠に入っていたからだと思っていた。


だから、違うと思いたかった。


恋は、したいと思ったけれど。


本当に好きになるなんて思わなかった。


「わたし、帰る・・・・・」

「えっ?ビーデル!?ちょっとー!ビーデル!!」



ざわつく教室も、騒ぐイレーザの声も、耳に蓋をして、ビーデルは教室を飛び出して行ったので、あった。



・・・・・恋が、怖いと――――・・


初めて、知った。


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