「ビーデルさん」

「ん?なに?」

日曜日。どこかに遊びに行こうと二人で湖にきていた。煌く湖畔に、初夏の風が心地よくて、二人で座りながらおしゃべりをしていた。

でも。

大体、今日会った時からおかしいとは思ってたのよね・・・・。

どうも、悟飯の言動がいつもと違うと思っていた。昨日、学校で会ったときは普通だったのに、何故か今日あったらどこかが違う。

上手くはいえないけど、いつも以上に優しいというか・・・フェミニスト、というよりは女好き、のようなその素振り。

だから。

「愛してるよ」

なんて、湖畔の水辺で耳元に囁かれた日には。

「・・・・・はぁ!?」

私が素っ頓狂な声を出しても可笑しくは無かったんじゃないだろう、か。





<愛してるなんて言わないで>




Chapter:1


「・・・・・そういうことだったんですか・・・」

コポコポと色んな薬品が混じる音がする。つい先ほど、悟飯に『愛してる』なんて囁かれて、これは間違いない、と思いながらもここに来ていた。

「ごめんね〜、まさかこんなに効くとは思ってなかったのよ・・」

カツン、とヒールの音を鳴らしながら、ラボの中を歩き回るブルマが申し訳なさそうにそう言った。

ピン、と来たのだ。彼が唐突に、しかも照れないでそんな事を言うなんて、何かが一枚かんでいるに違いないと。そうして思い出したのは、昨日別れ間際に『トランクス君とこれから手合わせなんだ』と言っていた悟飯の姿だった。

・・・絶対、ここよ。

それしか考えられずに悟飯の手を引っ張ってここまで来れば、ブルマが切り出したのは驚きの一言だった。

「昨日帰りに実験に付き合って、ってお願いしたのよね。プレイボーイになれる薬って言うのを開発してて・・・」

「ぷ・・・・プレ・・。」

クラッと、目の前が真っ暗になりそうになる。ほかのものでも困るけど、よりにもよって・・プレイボーイ!?

カツカツと色んな薬を確かめながら、ブルマは話を続ける。

「そう、プレイボーイ。ここんとこ薬品部門で凄く要望が高くて研究してたの。ほら私天才じゃない?研究してたら作れちゃったのよね。で、実験するにもベジータは当然嫌がるし、トランクスはそんな年じゃないし・・・で、丁度よく来てくれた悟飯くんにお願いしちゃったってわけ。」

「ちょ、丁度良く・・・・」

「でも試作だからさ、そんな効くと思ってなかったのよ。まさか昨日飲んで今日効くなんても思ってなかったし・・少なくともこの効き分じゃあと数時間はこうだと思うわ。」

い・・・・・

「そんなにですか!!!??」

そ、そんな・・・・・!

「解毒剤も作ってないし。・・で、ビーデルちゃんには悪いんだけど・・このままじゃ悟飯くん、ほっとくのも危ないでしょ?色んな女の子に声掛け捲るわよ、きっと。だから、今日一日一緒に行動して欲しいのよ。」

・・・・あ、危ないって。

「それは私も・・・」

同じなんじゃないでしょうか。

と、言いたかったけれど、とり付くしまもなくらい、ブルマは言い終えた後バタバタと忙しそうにラボの中を動き出して。

「ごめんね、ほんと!今度はビーデルちゃんのためになんか作っとくから!じゃ、よろしく〜!」

バタン!

ぎゅ、とラボの中から押しださ、れて――――――

「・・じゃ、どこ行きましょうか?」

ニッコリと笑った悟飯が自分の横で、面白そうに問い掛けてきていた。

・・・・・うそぉ。

真っ青になったまま、ビーデルは暫く立ちすくんでいたのだった。


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