<あいくるしい> -8- |
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「・・・それ、きっとパパが昨日言ってたテレビの事だわ・・」 濃密な時間の後。 草の上では、と思い自分の上に被さるようにして乗せたビーデルが口を開いた。 「昨日ね、家で何か言ってたの。でもわたし全然聞いてなくて・・」 知ってたら何か気付けたのに。 ごめんね。 「・・・・っ謝る事、ないです!」 ごめんね、の言葉に過剰に反応してしまう。 人の事は言えないけれど――――大体、彼女は、いつも。 自分の心を押し殺すのだ。 悲しい、とか。 寂しい、とか。 もっと、自分を―――――――構って欲しい、とか・・・ 彼女の優しい心が、それをいえなくさせている。 自分は男で。 地球の存続に関わる大きな戦いも経験してきたのに。 大事な人の心ぐらい、いつでも受け止められないでどうするんだ。 気付けば、自分の嫉妬でまた彼女を傷つけて―――――――― ・・・くそっ・・・。 だから 言った。 「・・・何があっても、何を言われても。あなたを嫌いになりません。だから――――」 もっと、我がままになってください。 何でも、言ってください。 もっと、僕に―――――― 「・・・しがみ付いていて、下さい・・。」 離れないように。 上に乗ったビーデルが息を飲んだのが肌越しに伝わる。 ぎゅ、と。 その細い身体を抱きしめた。 「・・・・うん・・っ・・」 ぎゅ、と胸の上でビーデルの指先が自分を掴む。 掴む力が強ければ強いほど、YES、と強くいわれているようで。 「よかった・・・・・・・」 ようやく、昨日まで――――昨日よりも。 「・・・じゃあ、もう帰りましょうか?」 「・・・・・・・。」 「ビーデルさん?」 「・・・・まだ、もうちょっといたい・・・・・。」 「・・・ビーデ・・・」 「・・・我がまま、言って、いいんでしょ・・?」 愛、苦しく。 あいくるし、い。 「・・僕も、そう思ってました・・。」 「嬉しい・・っ・・」 二つの心を抱えながら、また一歩、成長した二人になれたので、あった。 -fin- |
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ここまで読んで下さいましてありがとうございました。最初の予定とは全く違った作品になり、 とんだ真面目な話風になってしまいました。本当はもっとバカみたいな話にしたかったんですが、 書いているうちにこのような方向になりました。楽しんで頂けていれば、と気がかりは沢山ありますが、 ここまで読んで下さいまして本当にありがとうございました。次回はまたお題とお礼SSに取り掛かりたいと 思います。(05年6月26日 アイコ拝) |