[ あなたの虜]
=2=


『好きだ』


そう、言われて―――はや数日。

「うああああ・・・・・・・・!!!!!!!!アタシは一体どうすればいいんだよおお!!」


慎が頭を悩ませる間―――ここにも、同じく悩ませている女教師が約一人。


ゴロゴロゴロゴロと、朱色の部屋を行ったり来たり、寝転がってのた打ち回ったり―――早い話、久美子は混乱していた。


「あ、あ、あ・・・・あああああうううううう・・・・」


『俺の事、好き?』

そう、言って来たアイツの言葉に、答えられる事ができなかった。本当は好きと言う感情は持っていなかったから―――と言う訳では決して無くて。

だって。

久美子は恋愛初心者で。

つまり。

「す・・・・『好きv』なんて!なんて・・・・うあああ!!言えねえよ――――!!」

詰るところ―――好きと言う気持ちはあるのだが、恥かしさが邪魔をして、言葉が先に出てこなかったのだ。

言わなくてもいい、なんて事は思ってはいない。言わなきゃ分からない事もあるし、言葉っていうものは言ってこそ価値があるモノで。

そんなことは、久美子にも分かっているのだけれども。

なにぶん、『恋』というものが。その中でも、『両思い』というモノを経験するのは、これが初めてで。


「どうしたらいいか、わっかんねぇよ・・・・・・・・・」


素直に行動する事は恥かしい。でも、この気持ちに偽りは無い。

初めての、こんな気持ち。

好きで、好きで好きで。しょうがなくて、苦しい・・。

「ちきしょ・・・・・・沢田のバカやろー・・・」

カタン、とタンスの上に置いてある写真を見つめると、さり気なく自分の隣に写っている慎の姿がいやでも目に入る。

こんな、写真一つでも。

ドキリ。

と、心臓が跳ね上がる。

綺麗な顔立ち。ふっくらとした、唇・・・・・・・・

ボン!!!!!

「う・・ああああ!!!!」

この唇に、自分の唇が奪われた――――と思い出すと、もういても立ってもいられなくなるほど体がうずうずしてしまう。

「・・・・・・だめだっ・・・・・・!!!!」

このまま、写真と一緒にここにいるのは、苦しすぎて――――耐えられない。

そう、思った―――時。

『〜〜〜〜♪』

携帯の、着メロが部屋に鳴り響く。

「え・・・・・・・・・?」

もしかして・・・・!

恥かしいとは思っていても、心のどこかで期待する、自分。

パッと携帯を鞄からだし―――名前を見ると。

「川嶋先生・・・・・・」

思っていた相手ではなかったものの、とりあえずピッと受話器を外して電話に出る――――と。

「はい、山・・・」

「山口先生!!!?????今どこにおるん!?沢田がっ・・・・・!!!!!!」

―――ピキ。

体が、固まる。

・・・・・・・沢田、が・・・・・・?

「か、川嶋先生!沢田のヤツ、どうかしたんですか!?」

「とにかく、すぐココに来ぃな!いいか、あんたンちの近くのコンビニエンスストアやで!」

「えっ!?川嶋先生、アイツ、どうか―――・・・って、川嶋センセ・・・・!!!!」

ブツ!・・プーっ・・・プーッ・・・・

「・・・・・・・切れた・・・・」

ドクン、ドクン、ドクン。

嫌な、鼓動。

何があったのかは分からない。でも、今しなければならない事は、分かっている。


「・・・・っ沢田っ・・・!!!!!!」


思った瞬間。


「お、お嬢!?どこいきなさるんで!!??」


テツの声など吹っ飛ばして、久美子は、慎の元へと駆け出していた。



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**思いっきり少女漫画ごくせんですね・・!嫌で無かったらどうぞこの後もお付き合いください・・・><

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