[ CAN YOU CELEBRATE ? ]
=4=

「・・・幸せ、だった。」


・・・・・・・・・・は?


目の前で、何が起こっているのかが分からない。


ただ、一つだけ、分かるのは―――


自分と、別れる。


そう、久美子が言った事だけ。


「じゃ・・・・・・・・・・あたし、帰るよ。悪いけど、自分で皿洗ってくれよ?」


トン、と席を立って、久美子が帰ろうと自分の鞄を取りに行く。


ちょ・・・・・ちょっと待て。


俺が、今日ここに、久美子を呼んだのは―――こんな事を、聞かされるはずじゃなくて。


俺が、言いたかった事を言うはずで。


目の前の、玄関に行こうとするこの女と――別れるなんて―――・・・!


「おい、し・・・・あ、沢田。明日、ちゃんと学校に―――っ・・・・!!??」


――気付いたら、行動していた。


グイ、と久美子の手を取って、そのまま、ベッドの方向へ、歩いて。


ギシっ!と音が響くぐらい、2人で、そのままなだれ込んだ。


「・・・・沢田、なんて呼ぶな・・。」


自分でも分かるほど、いつもよりも低くなった声。


久美子の行動に、怒りが―――・・止められない。


ピク、と一瞬久美子が強張ったのが分かる。


でも、止めない。


止めてなんか―――やらない。


「おまっ・・・なにすんだ!!!」


「何すんだ・・・?そりゃこっちの台詞だろ?!いきなり、別れるってどういうことだよ!!」


絶対、離さない。


何があっても―――何を、しても。


ちゅ、と唇を久美子の首筋に這わせていく。


「っん・・!・・・や!・・・やめっ・・!!」


「やめねえ。お前が、さっきの言葉を取り消さない限り―――ヤる。」


「!!・・・・ん!あ・・・・・あっ・・・!!」


唇を、首筋から、鎖骨へ。鎖骨から―――


着ていたシャツをはだけさせて、その露になった胸元に、唇を寄せる。


この、肌も、全て―――この先もずっと、自分以外の奴に手渡す事は・・・許さない。


「ん・・!!!!」


チュゥ、ときつく胸元を吸い上げて、赤いしるしを残す―――と。


「だ、だって・・・・・」


久美子が、涙声ながらに、声を―――出した。


「だって?」


声を反復しながらも、余している指を体に這わせていく。


「お前が・・・・んん・・」


「――俺が?」


「あたしと別れるって・・・・・!」


―――――――・・・・・・・・・・・・・・・・・は?


その言葉に、ぴたりと全ての行動が止まってしまう。


信じられない事を、今耳にしたような。


「そう、先に言おうと思ったのは、お前の方だろ!お前がっ・・・・だ・・大事な話があるって言ったじゃないか・・・
だから・・・!!」


・・・・・・へ?


俺が、大事な話があるって言ったのを、こいつは―――別れる、と。


つまり。


大いなる。


勘違い、を。


「はあ・・・・・・・・・・・・」


大きく、体の力が抜ける。今まであった怒りの感情も、今の一言で、全て消えていく。


体に這わせた指を、久美子の頬に持っていって。片方の手でそっと、髪を撫で付ける。


「お前・・・・マジでそう思ってたわけ?」


赤く染まった、頬。


「そっ・・そう思うも何も・・・そうなんだろ!」


プイ、と顔を横に向けながらそう言うと、一筋瞳から涙が零れた。


「バァーカ・・・・・・・」


チュ、とその零れた涙を自分の唇で拭うと、久美子はイヤイヤと首を横に振る。


「バ、バカってなんだよ・・・!あたしはっ・・し、真剣に・・・・!!」


目を伏せながら言うその様子に、自分の中から久美子への愛しさが零れ落ちる。


濡れた瞳も愛しくて。


拗ねる唇も可愛くて。


肌蹴た胸が――‥艶っぽくて。


その姿に、誤解をされていた時の心臓とはまた別の――落ち着かなさが、体を占めて行く。


ドキ・・・・。


やべ・・・・・・・・・ちゃんと説明するまで我慢できるか・・・・・?


「・・・・・別れるわけ、ねぇだろ。俺は、お前が好きなんだぞ?」


「で・・でも・・・っ・・」


潤んだ瞳が、真っ直ぐと自分を見据えるように、視線と視線が絡み合う。


・・・バカ。そんな目、向けんなって・・・・・・・


「あー・・・・だから。」


ゴホン、と体の疼きを誤魔化すように咳を一つすると―――


「俺が言った、大事な話しッつーのは別れるとか言うことじゃなくて・・・・逆。」


「・・・・・え?」


久美子の可愛さに疼く自分を、何とか誤魔化しつつも、今日の目的を話し始めたのであった。




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