[ CAN YOU CELEBRATE ? ]
=5=


「俺の・・・親父に会ってくれ。」


「・・・・・・・・・え?」


別れる、という話じゃなかった――という事が分かった後、慎の口から出た言葉。


親父に会ってくれって・・・・え?慎の親父さんには前に一度会ってる・・よな?


慎の言う真意がどうにも掴めない。どういう、意味なのだろうか。


「・・それって・・・・え?だって、前に・・・・・」


「前は。・・前あったときは俺が生徒として会ったんだろ。でも、今言ってんのはそういう意味じゃなくて――・・
・・俺の。大事な女として会ってくれ、って言ってんだけど。」


くしゃ。


頬に添えられた慎の手が、自分の髪をかき上げる。


ドキっ・・・・!!!


え、そ、そ、それって・・・・・え・えええええ!?


「あ、え、そ・・・・・ええええ??」


余りにも急展開――というか。そんな話が、もう慎の家で出ているだなんて。


ど、どうしよう・・・・・・っこ、これって・・・・あたしはどうすればいいんだ!?


そりゃもちろん、家に行きたい。慎の親父さんにあって、ちゃんと挨拶をするのは筋ってもんだろう。


でも。


「あたし・・・・・まっとうなカタギじゃねぇし・・・」


そう―――・・それが、一番のネック。キッチリとしたお役目についた慎の父親。


もう報道などで当の昔に知れ渡った自分の素性を、彼も知ってはいるだろう。


相反する世界の人間が、自分の息子の女だなんて――しかも、大事な、が上につく
女だなんて知ったら。


それに加えて、年上という事と、担任教師ということ。


・・・三つ巴じゃねぇか・・・。


こんな、条件の悪い女なんてさらさらいない。



―――そんな風に、悶々と一人で考え込んでしまっていると。


ガツ!


「いてぇっ!!!!な、なにしやがるっ!!」


突然、慎から頭突きが飛んできた。


「バーカ。目ぇ覚めたか?お前はいつも考えすぎなんだよ。前も言ったろ?」


しょうがない奴、といったような慎の声。


・・・・・うっ・・・でも!!


「だって!あたしは・・・・・・!」


「うっせぇ。お前がかたぎじゃなくても、関係ねぇ。年の事だって問題ねぇし、教師だって言うのも・・
俺が卒業したら、全然意味ない事になるだろ?」


「・・・そんなっ・・!」


「・・・だろ?」


・・・・・・・ぅぅ・・・。


包み込むような慎の声。


どうして、コイツが言うといつも「そうだ」と思うようになってしまうのだろう。


いつも、嬉しい言葉ばかり言ってくれるのだろう――・・・・・


ポロ。


あ。


嬉しさに、不意にまた瞳から潤いが零れる。


ガサ・・・・


恥かしくて、横を向こうとするけれど。


「泣くんじゃねぇよ・・・・」


ク、と頬を押さえられて、慎の真っ直ぐな瞳が自分に飛び込んでくる。


何も恐れない、綺麗な、瞳。


「あたしが行ったら、きっと親父さん驚くぞ・・・」


「・・・・まぁ、そうかもな。」


「あたし、またドジるかも知れねぇし・・・」


「・・・いいんじゃねぇ?俺は、そういうところも好きだから。」


「・・・・・・・っ・・おまっ・・・!」


「俺は、ドジでバカで――でも、真っ直ぐなお前が好きなんだ。俺が、好きなんだから――・・
・・そんな不安そうな顔すんなよ。」


「・・・・・・ん・」


キュ、と涙を指先で拭われると、柔かい感触が唇に降り注いでくる――と同時に。


パチンと下着の金具も外されて。


「あ・・・・ちょ、しっ・・・・あっ・・・!」


「・・誤解も解けたし・・・いいだろ?」


「ん・・・・・!」


胸の、間に顔を埋めながら囁かれたら――イヤ、なんて言える筈もない。


「バカヤロォ・・・・・っずるいぞ・・・・・ぁ・・・」


「ズルくて結構・・・・久美子が離れないなら、どんな手でも―――俺は使う。」


下から見上げられた、その真剣な瞳。


「・・・・・バカ。離れるわけないだろ・・」


愛しさを込めてそう呟いて。


ぎゅうっと慎の頭を胸で包むように抱きしめると。


「ん、や・・・・・・!」


慎の唇が、膨らみにそって優しく動く。


「・・・好きだ・・・・」


「ふ・・・・・んんっ・・・!!!」


ビクン!と体が跳ね上がる。


熱病のような慎の熱い吐息に――・・その、鋭い刺激に。


「は・・・・・ぁ・・・・っ・・!!」


朝まで、ゆっくりと、じっくりと、何度も味わった事のある
その快楽に身を委ねて――・・・・・・・・





ほんの数時間前までは、この熱から離れないといけないと思ってた。


数時間前までは、世界が全て灰色になっていた。


――結局、それは全て自分の思い違いだったわけだけれど。





「慎っ・・・・し・・・・・・・ぁ!!」


「・・・・・っは・・・!」



何度目かの、絶頂。


上に重なる、心地いい慎の重み。


この重みがなくなるなんて―――


「・・・・絶対、イヤだ・・・」


「・・・・・・・ん・・?どうか・・・したか?」


小さく呟いた自分の言葉に、はぁ、と荒い息をつきながら甘い声が返ってくる。


「ん・・・何、着ていこうかなって・・・・」


「・・このままでいいんじゃねぇ?」


「・・・・・・・バカヤロ!」


「いてぇ!」


ギュッと慎の背中をつねり上げて、まったく、というような顔をして。


「ふふ・・・・」


心から、笑みがもれる。








そして。







「なっ・・・・なぁ!」


「・・・・・・なに。」


「この格好、変じゃねぇか?」


髪は下ろして横だけピンで留めて。メガネは外して――そして。


薄いピンク色の、ワンピース。


「・・・・別に。ていうか・・・俺が選んだんだから、可愛いに決まってんだろ・・」


「・・・・・!!!!!!!!!!」


耳元でそう囁かれて、ギュ、と手を握られて。


「ほら・・・行くぞ。」


「お・・おぅ!」



ピンポン・・・・・・



うぁ・・・・・!!ドキドキする・・・・!!!!


『はぁーい』


「なつみ?俺だけど・・・・・・・」


『あっ!!お兄ちゃん!?あ、はいはい!!おかぁさーん・・・・!!』


パタパタと、扉の向こうから足音が聞こえてくる。


ぎゅ。


震える手を、更に強く慎に握られて。


「・・・・・・・心配、するな。俺がいるから。」


「・・・!!!」


ガチャ・・・・・・・・


「いらっしゃい。あら、山口先生・・・・?あら・・・そうなの・・・っ」


ギュ、と繋がれた慎と自分の手をみて、ニッコリと微笑みながら、家の中に招かれる。







その後。







「は、初めまして!!」




どうにかへまをせずに、久美子は慎の父親と対面する事になったのだが。




「・・・・なるほど。で、慎。」



「・・・・なに。」



「こちらの、先生―――・・いや。お嬢さんと、結婚する意思はあるのか?」



「・・・・・・・は?」



「えぇぇ・・・・・っ!!!!!」



お、親父さんっ・・・・・・!そんな直球に聞かなくても・・・・・・!


ていうか、そこでイイエとかなんかそう答えられたら・・・!!


ぐるぐると再びいらぬ考えが頭の中を駆け巡る。


が。


「・・・今更何言ってんだよ。そんな覚悟もねぇのに親父に会わせるわけねぇだろ。親父だって―――・・
・・そういうつもりで、会わせろっていったんだろ?」


「・・・・・・へ?」


慎の言葉に、思わずぽかんとしてしまう。


「・・・・・まぁ、お前がそのつもりならいい。・・・・久美子さん。」


「は、はいっ!・・・え、あの!!」


慎の言葉に驚いた次は、父親の方に名前を呼ばれて――深く、頭を下げられて。


「ろくでもない息子ですが・・・・・・どうぞ、宜しくお願いします。」


「は、はい!!」


そう、どもりつつも返事を返すと。


そのまま、父親の方は仕事だ、と車へと向かっていってしまったのだった。





パタン・・・・





「はぁ・・・」


怒涛の展開に、まだ頭が追いつかない。


なんか・・・さっき・・・・結婚とか・・・・・・け、結婚!?


「なぁ・・・・・・」


「・・・・・・あ?」


「あたし・・・・・結婚、とか聞こえたんだけど・・・」


「・・・・あぁ。言ったな。嫌なのか?」


「嫌じゃねぇよ!・・・・・・ぁ。」


「じゃぁ、いいだろ。プロポーズの言葉は・・・卒業式に聞かせてやるから。」


「っ・・・!!!!!」


真赤になった顔で、上にある慎の顔を見上げると。


ニ、っとしたいつもの意地悪な顔をして。


「・・・どんな手でも使う、って言っただろ?ま、途中予想外にお前が誤解してたけどな。」


「!!!!!!!!!」


て、てことは、計画的犯こっ・・・・・・・!!


「おにいちゃーん!!!!!山口先生!!!!」


その最後の言葉に愕然としていると、庭のほうからなつみちゃんの可愛い呼び声が飛んでくる。


「ほら、呼んでるぞ。」


〜〜〜〜こ、この〜〜〜・・・・・!!!!!


「・・・久美子。」


ニコッと笑ったその顔に。差し出された、大きな手に。


「・・・・・負けた。」


「当然だろ。」


ギュ、と二人手を握り合って。


「おーい!!!!!!二人とも、早く―!!!!!」


「・・今いく。」


「はーい!!!!!」


返事を返しながら、庭への道を歩いていく。



あ、と空を見上げると。



昨日とは色が違って見える、綺麗な青空。


「おめでと〜〜!!!!お祝いしよ、お祝い!!!!」


可愛いなつみちゃんの声があたりに響きながら。


「・・・・・まだ、言うなよ。」


「わかってるよーだ!!ねぇ、山口先生・・・・・!!」


「・・・ん?」




――まだ、自分の家、という大きい問題も残っているけれど。



右手に感じる、この大きなぬくもりが、あれば―――・・・




 Can you celebrate ?


 We can celebrate!



―――――なんて、言われる日も遠くないのかもしれない。



それまで。



とりあえずは、この横にいる愛しい男と。



後、一人。



「ね、ね!山口先生!どこまで二人の関係は進んでるの!?」



「ぶっ・・・!!!!!!!!!!!」



この、可愛い妹に――――頭を、悩ませる事に、なるのだろうか。



まぁ、それも。



「・・・・・し、慎!!」



「俺、しらねぇ。」



「〜〜〜〜!!!!!!!」



とりあえず、後ちょっとの辛抱――――・・・か、な?



「先生、教えて〜〜っVv」



「え、え、え、あ、その〜〜〜っ・・・!!」








*オワリ*


***アトガキ。

お、わ、り、ましたー><!! 最後にUPした第2話から1ヶ月立ってますよ・・・・!!!!すみませんー!
実は、あまりに間があいてしまい、どんな風にしようとしてたんだか忘れてしまった、というのも原因の一つで(汗)
最後の方は、書こうと思ってはいなかったのに、なんだかどんどんと話が父親と会う所まで行ってました。当初は、そこに行くまでの話を書こうと思ってたんですが(汗)。なんとか、終りに持っていくことが出来ました。そしてやっとまたこの話を踏まえて、の話を書くことが出来ます・・・・!あぁ、終わって本当によかった・・・!この話を優しくも待っていてくださった方々に、本当にお礼とお詫びを申しあげたいです。ここまで見てくださって、本当にありがとうございました。また、頑張りますので宜しくお願いします><!! ではでは、次回も内容のある話にしたいと思いつつ・・・またですVv (また暇が出来たら書き直すかも・・・・!!!)
ちなみに、CANYOU〜の意味は・・『あなたは祝う事が出来ますか?』って意味で。これは、父親にかかる言葉として、題名にしてしまいました。アハハ・・・(汗)

2002/09/16(完) アイコ拝


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