[ 口唇から魔法*マジック ]

*3*


「・・・なっ・・悩っ・・て、何故それを!?」


いきなりあらわれた人物に、いきなり言い当てられた自分の心の中。
でもまさか、「何が理由で」までは分かってはいないとは思うけど――・・・・


心臓に、悪い。


バクバクと、すごい速さで血の巡りが繰り返されているのが分かる。
なんで、なんでこいつがここにいるんだよ・・・・!?


「お前さ・・・・・・・・・・」


・・・・・・・・・・・えっ!?何!?


「今・・・・なんか、言ってたよな?」


・・・・聞こえてた!?


「つーか・・丸聞こえ。」


ひ、人の心を読むんじゃねぇよっ!!!


ど、ど、どういう態度を取ればいいんだ・・・・っ!!今の話が聞こえていた、となると――自分が、
どれだけ目の前の相手を好きか、分かってしまってしまった・・ということで・・!!


「ふーん・・・お前の方が、全身で表してるんだ?」


う。


チラッと睨むように見上げると、ニヤつきながらそう言ってくるヤツの姿。


「どこが?どのへんが?教えてもらえますか、センセイ?」


・・・・・・くっ・・・悪趣味だぞ、お前!


「しかも・・・・・目が合って考えるそんな事、ってなんですか?」


「・・・・・・・・えっ!」


ヤ、ヤ、ヤバイ!あたし、そんな事言っちゃってたっけ・・・・!!


まさか、どうして「そんな事」の事が言えようか。本人を、目の前にして――・・


ズズっと自然に久美子の足が後ろに後ずさる。


「・・・・・逃げんなよ。」


「・・・・・・っ!!」


キュっと離れようとする体を一瞬の間に押さえ込まれる。腰に、手が回って――いつの間にか、
頭の後ろにも大きな手の平の感触。


「・・・・俺には、言えない?」


目の前にある、慎の唇が低くて綺麗な音を響かせる。知っててやっているんじゃないかというくらい――・・
近い、距離で。


「あ・・・ぅ・・・い、ぃえない・・っ・・」


これ以上は、本当に止めてくれ。こんな、近距離で言われたら――言っちゃいけないその一言を、
言いそうになっちゃうじゃないか・・・・・


そのままスッと目線をそらそうと思っても、頭の後ろに置かれた手がそれを許してはくれようとしない。
再び、目線があうように動かされるだけで。


「・・・久美子。」


・・・・・っ!!


吐息が、唇にかかる。まるで、少しずつ魔法がかけられていくみたいに、小さく小さく囁きかけられる。
だから――自分の唇も、少しずつ溶けていって。


「・・・・・変だって・・思わない?」


「・・思わない。」


「けっ・・・軽蔑・・・」


「するわけねぇだろ?」


ホントに、この唇は魔法でもかけるように出来てるんじゃないのか?なんて頭の片隅で思ったりした――ほど。
自然に、自分の口からあの一言が滑り落ちていた。


「・・・キス、したぃ・・・。」


そう言って、伏せていた目を恐る恐るまた目の前の顔に上げていくと。


―――ドキ!!


心臓が、飛び跳ねる以上に大きく動く。


お、おま・・・お前っ・・・・その顔は、反則だぞ・・・!?
そんな顔―――いつも、あたしに向かって見せてたのかよ・・・・・!?


嬉しい、といったような、なんだか色んな幸せが交じり合った表情が目の前にある。そんな表情をされてしまったら。


「あ・・・・・の・・・・」


声だって、ロクに上手く出てこなくなるのは・・・当然だよな・・?


そんな事を一瞬の間に思っていると、次の瞬間には、またこっちが驚くような事を慎は言ってのけた。


「・・・・・やっと言った。」


・・・・・・・・えっ!!?? やっとって・・!?


「し、知ってた・・のか!?」


「・・・・当然。」


・・・・いつの間にっ!?


「つぅか・・・・・お前、なんで俺に素直にそう言わないわけ?あの呟きがあいつらに聞かれなかったから
よかったけど―――・・もう、我慢すんなよ。」


・・・・・・・・・あ、あの呟きっ?って、も、もしかして・・・!!


「・・・「キスしたいなぁ・・」・・ってさ。言ってただろ、お前。あの時、俺聞いてたから。」


・・・・・・・・う、うそっ・・・!て、言う事は・・・・


「お、お前っ・・・知ってて、あたしに言わせたのか・・・!?」


「当たり前、だろ。お前のことで、知らねぇ事なんてないんだよ。」


〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!


もう、もう、こいつはどうして一番知られたくない事ばっかり知るんだよ!?
恥かしくて、恥かしくて死にそうなのに、腰にまわされた手がそれを許してくれそうにない・・。


「・・・・・で?あと他に悩んでることねぇのか?」


しれっとした顔で聞いてくる、コイツ。・・・・ちきしょ。


「・・・・ねぇよ、もう。」


「じゃ、とりあえず・・お前の悩み解決な。」


「・・・・・・・え?」


「その後多分、他の悩みも出てくると思うけど――・・・」


・・・・・・・・・・・・え?


と、声を上げようとしたけれど。出すことが出来なかった。


「んむ・・・・・・・」


中途半端に――いい具合に開きかけた唇に、濡れた舌の感触が割り込んでくる。
それと・・・


あ・・・・やっぱ、柔かくて・・・気持ちいい・・・


―――ふわふわとした、柔らかな唇の、感触。


甘く噛み合ったり、吸い上げたり、そのままずっと口付合っていたい位の気持ちよさが体中を支配していく。


「はっ・・・・」


離れあったその時にはもう、体の力が殆ど抜け切っていて――・・・・


「・・・・他に悩み、ある?」


・・・・この、確信犯・・・。


キュ、と潤んだ目で睨もうと思ったけれど、もう体が言う事を聞くわけなんてなかったから。


「・・・・バカやろ・・分かってんだろ・・・・・」


そうとだけ、悪態ともいえない悪態をつくと。


「・・・・了解。」


くすくすと頭の上で笑う声と憎らしいくらいのアイツの返答が降り注ぐ。


・・・・・あれ、そういえば。店に残してきたあの二人はどうしたんだろう――なんて、気をそらしたら。


「・・・・・・あいつらは心配ねぇだろ。お前は、俺にだけ悩んでればいいんだよ。」


そんな風に、また怒られた。・・・・なんか、やっぱり悔しい・・。


なんて、また余計な事を思ってしまったから。


「・・・お前はなんか悩みねぇのかよっ・・・・・・・!」


余計な一言を言ってしまって―――自分の首を占める結果になったのは、言うまでも、ない。


「・・・・・・あるよ。一日中―――・・お前の事、欲しい。」


「・・・・・・・・!!!!!!!!!」


・・・・・・・聞くんじゃなかった・・・・・・!!


「・・もちろん、叶えてくれるよな?」


・・・・・・・・・・・!!!!!!


いつの間にかはまった唇の罠。


解かれて解いて、またはまって―――――・・・・


いつまでも解けることのない、それは。



唇の、魔法。



「・・・・・・・あたししか、叶えられないだろ・・・っ」



さっきの問に、タクシーの中で小さく答えを返したら。



今度は額にキスされて。



そのまま、ずっと、慎の家に着くまで――到る所にキスをされっぱなしになっていたのであった。



もちろん、その後も。


体中に魔法を落とされた。


一晩中――――――・・・・・・





その後。



「山口センセー!!!」


「・・・・・・・はははいっ!?」


「あのあと、どこ行ってたん!?あたし、沢田から電話もらったのまでは憶えてんけどなぁ〜〜〜??
あんたいるか、って、確か言われたような・・・・・?」


「ええっ?!き、気のせいじゃないですか!?あたし、あのあとすぐに帰りましたから!」


「・・・・・・・そぅかぁ?なんっか・・・・・怪しいなぁ?」


「・・・・・・・・・!!!!!!!!!!!!」


慎が久美子の所在を確かめる為にした電話が元で、菊乃に数週間怪しまれていた・・



なんていうお話しは――



また、後日。





***END....



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あとがき・・と言う名の言い逃れ・・(汗)

思わず、やっちゃいました・・反則行為ですよね、コレ(汗) 他の連載終わってないのに、同じ続き物でもこっちの方が一気にUPしているなんて!・・・なんて卑怯な手を・・(汗) ぎゃー!すみません!でも少しでも楽しんでいただけてればと思います・・・!ど、どうでしたでしょうか(汗) ちょっと甘目を多くしてみたり自分ではしたんですが、全然甘くなかったりして(汗)。キス、をテーマに書いてみました。いきなりキスしたくなる時、慎からはありそうだけど、久美子からって滅多になさそう・・と書きながら思いつきました。この後、ちょっと間の描写とか裏で書こうかな・・とかチラッと思ってます・・。甘めエロで。(言ってるし) もしUPされたら、本当に書きやがった、と思いつつ・・よ、読んでくださると嬉しいです><;それでは、ここまで読んでくださってありがとうございました!再び逃走いたします・・・!