[ 口唇から魔法*マジック ]

*1*


キーンコーン・・・・・



「あ・・・キス、したいなぁ・・・。」


「え??」


「えー?なんか言うてん、山口センセ?」


―――はっ!!!!!!!!!!!


あああああああああたし、いいい今何を!!!???


放課後の規則正しいベルと同時に思わず言ってしまった言葉に、慌てて口をつぐんで閉じる。


「い、いや、何でもありませんよ!?お酒飲みたいなぁ、って!」


声を裏返しながら言った言葉に菊乃と静香は不信な目を自分に向けつつも――
「そう?じゃ、今日は3人で飲みいこっか?」と特に気にもせず次の話題へと移っていった。


・・・・・・・・・・やばいなぁ・・・・。


なんだか、ここ最近自分が変な事に気付いていた。別に、キスをした事がないなんてわけじゃないのに。
した事がないどころかか―――もう、数え切れないほど教えられていて。


だから、別に、こんな事思う必要、ないはずなのに。気がつくと目が・・・慎の唇を追っている。


・・・気付かれてない、よな・・・?


登校途中で会った時も、授業中も、HR中も・・・だめだ、と思えば思うほどに――何故だか触れたくて
たまらなくなる。


「・・・・い。オーイ!山口センセィ?ほら、行くで!?」


「あっ・・・!!あ、はい・・って、どこでしたっけ?」


「んもう!先生が飲みたい、っていったんでしょ!フフ、私、この近くにいいお店知ってるんですよ〜〜〜vv
そこ、行きましょv静かで、大人のムードですから山口先生には合わないかも知れませんけど?」


なっ、何をぅ!?


ボーっとしている所をここぞとばかりに突っ込まれながらも、あ、と思いついた。


・・そっか。恋愛経験豊富な二人に、聞いてみればいいんだよな・・・・・。


「・・お、大人がどうとかは置いときまして・・・じゃあ、そこ行きましょう!」


「決まりやな♪」


「じゃあ、お二人とも私についてきてくださーい!」


久美子の返答に、はーい、と手を挙げてまるで高校生のように3人は騒ぎながら、
道中を店に向かって歩いていったのであった。




そして。




ガンっ!!


「・・・はぁ!?」


「わ、わ、川嶋先生、落ち着いて・・・!」


飲み始めてから、1時間弱。案の定、と言うかなんと言うか―――久美子が例の事を質問する前に。


右隣には、大トラになった菊乃の姿が。


左隣には、酔いが回って隣の男性客と仲良さげに話している静香の姿が――あった。


・・・・・ったく・・・・・・・・・。


はぁ、とため息をついて久美子は静かにその場から席を立つ。
静香があぁなるかな、と言うのは予想はついていたが、まさか菊乃まで、変身するとは。


・・・・・・・・あそこまで化けなくてもいいじゃねぇかよっ!!


コッソリと悪態を小声でつきながらも、自分の分の支払いを済ませて静かに冷える店の前に身を出した。


カタン・・・


「うわ、もう寒いなっ・・・・」


はぁ、と息をかけてもまた白くはならないほどの空気の冷たさに、ちょっとだけ身震いを感じて――・・
久美子はまた、夕方思ったことを思い返した。


なんで、こんなにキスがしたくなるんだろう。


ス・・・


そっと、口紅の取れた自分の唇を指でなぞってみる。ここに、自分以外の唇が重なるなんて・・・


〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!!!!!


ドキドキドキドキ!


ちょっと考えるだけで心臓が破裂しそうになる。重ねる相手は、目の前にはいないはずなのに。


「・・・・・なんか・・ずるい。」


なんだか自分だけ好きみたいで。自分の方が、何倍も好きみたいで。


「だって、アイツ可愛くねぇよ・・・っ。目が合ってもそんな事考えるのはあたしだけだろ、
いつも好きって全身で表してるのは・・・あたしの方が多くないか?」


「・・・・・・そうでもないだろ。」


「そうかなぁ・・・・・・・・・・」


・・・・ん?何だ、今の声。誰かの声に似てるような・・・・・・。


ドキ、ドキ、ドキ。


さっきとは打って変わって、何だかいやな心臓の鼓動が全身を支配する。
だって、そんな、いやまさか―――・・・・!!


ごくっと覚悟を決めて、久美子は後ろを振り返ると。


「・・・・・で、何悩んでんだって?」


「〜〜〜〜〜っ!!!!!!!!!」


予想通りの人物が、自分の真後ろに、立っていたのであった。



NEXT>>



うひゃ!初・行も終わってないのにこっち書いてしまいました・・・ごめなさい><;