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「・・気持ち良いな。」 「う・・・・うんっ・・・・」 場所は、屋上。天気は抜群。時は――――――・・・数学ではない、授業の時間。 『こら、沢田っ・・・!!』 そういう彼女を引っ張って、慎は三角定規を持って数学準備室へ行こうとしていた久美子を引っ張り ここに来た。 「・・あ、の・・沢・・」 「・・・離すな。それに、『慎』って呼べって言ってるだろ。」 ・・・ぎゅ。 引っ張ってきたままの、絡まった指と指。その繋がった手をそのままにしながら、二人でベンチに 腰を降ろしている。 「・・・・っ」 ドキドキとした鼓動がつながれた指先から伝わってきていて―――― ・・・・嫌がっては、いねぇよな・・・・ 「・・はぁ。」 そう、少し不安に思っていた自分の心が安堵の溜息で一杯になる。 久美子をこの腕に抱いてから、一週間がたった。 甘すぎて痺れるようなあの感覚をこの身に覚えてから、一週間。 でも。 彼女の態度がいつになくぎこちないものに変ってからも一週間がたっていた。 ・・・・・なんで? 朝を迎えて次に会った時までは、普通だったのに。夜を挟んで再び向かえた朝には――――もう。 ・・・・・・え? なんだか、たどたどしい態度になっていた。 まるで、何かにびくついているような。 『どうしたんだよ?』 そう聞いても、答える久美子の言葉は小さな声で何でもないとそればかりで。 そうこうしている内に、それ以来彼女を抱く機会なんて訪れなくて―――― 結果。 今。無理やり引っ張ってきたこの屋上で手を繋ぐ今が、実質本当に久しぶりに二人きりになった 時間だった。 「・・・なぁ・・・なんか、俺に言いたい事あるんじゃねぇの?」 「・・別に、そんな・・」 言いたい事なんてない・・・小さい呟きが、風に乗って消えていく。 思えば、ぎこちなくなったその日から一度も、今までは言わなくても誘われていた実家への招待が 一度も無い事にふと気がついた。 ・・・・・ぎゅ。 握った手の平が、しっとりと空気の暑さに汗をかいて、二人の熱をより上げていく。 空は快晴――――いい天気で。 そろそろ、初めの挨拶も必要だと思っていたいい頃で。 だから。 空を見上げながら思い切って、その言葉を、ぶつけて、みた。 「・・・・・・家で、何か言われたのか。」 瞬間。 「・・・・・・・っ・・!!」 久美子の身体が震えたのを、触れた指先が、自分に、伝えた・・・・ |
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