[早く急いで。]
*慎Ver.*


「・・・・・・いってぇ・・・。」


アイツ、思いっきり殴って帰りやがった・・・。


―――喧嘩を、した。久美子と。


理由は本当に下らない―――・・・いや、下らなくないか。


あいつが、仕事で会えなくて。それはしょうがないと思って、こっちもちゃんと理解してた。


そう、思ったのに――・・


「・・・・なんで、電話もしねぇんだよ!」


・・・・なんて、ガキみてえな事言って、怒らせた。


その見返りが、コレ。


鏡に映った顔を、マジマジと見れば、腫れ上がった左の頬。


・・・・何ていえば、言い?


何ていえば、許してもらえるんだろう。


こんな下らないことで、アイツとの仲が終わるなんて絶対に・・・嫌だ。


鏡の中の自分が、自分でも分かるくらい覇気がなくなってるのが分かる。


・・・・・・情けねぇ。


ちょっと、悪い方向に行くとすぐこのザマだ。俺って、ホント・・・・・・・


「アイツがいねえと世界も回んない、ってな・・・・・・・・・・」


パシャ、っとはれた頬の痛みも気にせずそのまま顔を数回洗って。


その辺に転がっていた、上着と財布を手に引っ掛けて。


「―――行くか。」


ヘソを曲げた恋人の下へと行く為ドアを開ける。


マンションの玄関を出れば、空は、快晴。


まだ、間に合う。


これから謝って、それから――――デートするのも、悪くねぇよな。


「・・怒らせたのは、俺だけど。」


もし、それでも許してくれないときは?


「・・・・・・・絶対・・・許させる。」


根拠のない自信。でも、それが今の自分には絶対に必要なものだから。


「・・・・・・あー・・いってぇ・・・」


腫れた頬を引っさげて。


強気な自信の裏にある臆病な心を隠しながら。


慎は、その一歩を、踏み出したので、あった。


その後どうなったかと言うのは。


自室の玄関先にある、二足の靴。


その意味で――――


おわかり、いただけるであろう。


強気な彼が、頑固な彼女の心をどうやってほぐしたのかは


また、別の、お話し..........





>>>久美子バージョンへ。

・・・初ヘタレ慎・・・?(笑) ・・・ていうか・・短っ!