[before Valentine.]
-side・慎-


「はぁ?な、な、何言ってんの、慎?」


いつもの放課後、いつものファミレス。


「・・だから。今年は、好きな女からしか貰わないっつったんだけど。なんか変かよ?」


シラっと言ったその言葉に、周りに座った仲間のうち3人が、目を見開いて驚いた。


「「「 ええええええええっ!!!!!??? 」」」

「・・・うっせ・・」

「ちょ、ちょっと待ってよ慎!いつの間にお前っ!?」

「彼女出来たのかよっ!!!!????」

「ずっりーーーーーーー!!!!!!!!」

「・・・。」


口々に騒ぐ友人達に、言った傍から少しだけ、後悔。


でも。


別に、考え無しで言ったわけじゃねぇし。


溜息をつきながら、そっと周りを見渡してみる、と。


・・・よし。


周りにいる、女子高生のグループが、あからさまにこっちを見て驚愕の表情を浮かべているのが目に入る。


と、言うのも。


去年、一昨年と、どこで自分の情報を仕入れたんだか、この時期に限って出てくる『自称』自分を好きな女がやたらと周りをうろつかれていた。


去年は、それでもシカトしていればよかった。


一昨年も、分けの分からぬまま逃げ切って、家で死んだようになっていた。


でも。


今年は、それじゃ困るのだ。


そんな、一日中・・というよりも、一週間前から周りをうろつかれちゃ、困る。


・・・つーか邪魔。


もう、今年は、自分には――――いるから。


誰よりも、大切な人が、すぐ傍に出来た。


だから。


「慎っ!慎っ!!!!教えろよ!どこの子!?」

「まっさかお前ぇ・・・!桃女の子じゃねーだろーなぁ!」

「年下なのかよ、年上なのかよっ!」


こうやって。


これはこれで、あとから死ぬほどしつこく付きまとわれそうな友人達に、事の一部だけを話して、一役買ってもらおうと。


『つき合ってる女からしか貰わない』


そう、さっきファミレスに入った時点で周りに告げた。


そして――――怒涛の、質問ラッシュに辟易しながらも、少しだけ、少しだけ、彼らの質問に答えていく。


「・・・年下に興味ない。年上。」

「「「 ええええええええ!!!!!!!!! 」」」

「なんだよそれ!いい男だけに許される発言じゃねぇかよ!」

「っくー!!!むっかつくー!!!!!!」

「ねぇ、誰だって!名前はっ!??」


質問に答えれば、比例するように周りの女子高生の気分が下がっていく。


「ま、今年は他の女は諦めろって事だよな。」

「は!?何物分かりのいい事言ってんだよ、クマ!!!」

「おっ前〜!なんか知ってんのかこのデブっ!」

「ちょっと、クマちゃんそれないんじゃないっ?ないんじゃないっ?」


デラックスサンデーを頬張るクマが、全て知ってるというような口調で口を開いたばかりに矛先が自分から逸れて――――


「・・・ぷぷっ・・」


思わず、笑いが零れてしまう。



慎、18歳。



今年はようやく嬉しいバレンタインになりそうな、騒がしくも楽しい直前の日、なのでした。




*fin*


[side・久美子]
えー。『before・after』みたいな感じでタイトルつけ。二人のバレンタイン前でした。afterとか書いといて続きはどうなんだとか、その石は投げないでください・・・(ぎゃわー)!あんまり直前のバレンタイン話は見かけないかなぁ、と言う事で『直前』をメインに書いたので続きはありませんっ・・・ええありませんとも・・あり・・あり・・(どっちよ)。み、皆様の心の中で続きは作ってやってくだっさい!(むしろ他サイト様の創作を見たほうがいいとかいう話もあ(以下自制))

直前はこんな感じなのかも、と楽しんでいただければ嬉しいです。では、ここまで見て下さいましてありがとうございましたー!(*^O^*vv