第二章一話目

【イノチ知らずのセンセン布告?】




「きゃーーー!おかあさーーーん!!!!!」

ガタガタガタっ!!!!!!

「千尋―――!何してるの!!!!」

「も――!どうして起こしてくれないのよぉぉぉ!!!!!!!!!」

ハクがこちらの世界に来てくれたと発覚してから、翌朝。昨日の帰り、千尋はハクと一つの約束を交わしていた。

『明日の朝、一緒に学校に行こう』

世の中の恋人同士、一度はするであろう登下校。これを、千尋は一度でいいからしてみたかったのだ。

「どうしよう〜!!!!!!」

約束は七時半に駅前に。

「お母さんのバカ―――!!」

そして起きた時間はただ今の時刻7時ぴったりで。

「間に合わないよぉぉ〜〜!!」

千尋には、到底30分で全ての用意をすることなんて出来るはずもないのであった・・・・・。









「んー・・・・」

チラ、とハクは駅前にある大きな時計台の時計を見つめて苦笑した。

やはり、千尋は遅れてくるかな・・・。

油屋にいたときも、千尋はあまり寝起きはよくなかった。帳場係であるハクは当然、そのことを熟知していたので、今日ももしかしたら・・・・と思っていたら案の定、約束の時間まであと5分弱。どう思っても、これは来そうにない。

そう思って余裕の時間で待ち合わせをしておいたから、まぁいいか・・・・なんて千尋に言ったらまた膨れそうだけれども。

息切れをしながら待ち合わせ場所まで来るであろう愛しい想い人の姿を想像して、ハクはついつい笑みが零れてしまう。

ハクがこちらの世界にこれたのは、もちろん千尋への気持ちが比例しているのは言うまでもないが、もうひとつ。以前、千尋が記憶をなくした時に2人が交わした湯婆婆との約束を――ハクは今施行すると申し出て、千尋が学校に通うであろう年月分だけ猶予を貰って来た。すなわち、その猶予年月日が終了すればまた油屋へ戻らなければならないのだが―――

もう・・・・離れる気はない。

ハクは人知れず、グッと拳を握り締める。その瞳には、固く決心した龍の意思が鈍く光っていた。


「ごーめーんっ!」

「・・・・・・!」

すぐ隣から聞こえてくる声にハッとして顔を上げると、それは別の恋人達で、自分の想い人ではない。

「ふぅ・・。」

トン、と石の壁に背中をつけると、ハクは小さく息を吐き出した。さっきから10分ほどしか立っていない。どうも千尋のことを考えると時間的感覚がなくなってしまうようだった。

千尋は、と言うと――

くす。

「そんなに急ぐと・・・転んでしまうよ。」

あと数分もすれば、この場所に着きそうだ。とは言ってもまだ時間がかかりそうなので、辺りの様子を見回してみると、どうやら自分達と同じ事を考えている恋人同士が多いらしく。ここは、待ち合わせのメッカのようである。


そこでも。

あちらでも。

ここでも・・・・・・・・・・・・ん?

流した視線の先に、少年が一人。が、なにやら異様な雰囲気で、どうやら待ち合わせでこの場所にいるわけではないらしい。

なぜ・・・・・この者は私のほうを見ているのだろう・・・・・・・。

視線の思惑は、どうやら妖魔やまやかしの類のものではなく、れっきとした人間のもの。しかし自分は昨日この高校とやらに入ったばかりで、同じ「制服」というこれを着ている人間とはあまり会話は交わさなかったはず。

なぜだ、とハクが悠長に考えている暇もなく、それは突然ふりかかった。

「おい!!」

「・・・・・・・・・っ?!」

おかしいな、と思っていた人間が、突然自分の方までずかずかとやってきて―――

「横から掻っ攫われてたまるかよ!お前よりも、俺の方があいつのことをよく分かってんだからな!覚えてろよ!」

「え。」

「お前、分かったなら返事くらいしろよ!いいな!ちぇっ!」

――顔をあわせるなり、そうハクに言い残して、その少年は駅の中へと消えていった。

・・・・・・・一体、今のは・・・・・・・・??

大体、今の人間の言葉には主語が何一つなかったではないか。それで一体何を分かれと――何を攫っていくなというのか・・・・・・・・


千尋がくるまであと1分間。ハクは、その場で今言われた言葉の趣旨を、悶々と考え込むはめになってしまったのであった。




1分後。




「ハクっ!!!!遅れてごめんね!!!!!!お母さんが・・・あれ?ハク??」

「あ・・・あ。千尋。おはよう。」

今まで考えていたことはとりあえず保留にしておいて、ハクは目の前にあわられた想い人へとニッコリ微笑みを投げかけつつ返事を返す。

「・・・・・どうかした?」

「・・や、なんでもないよ。それよりも、千尋・・・やっぱり遅れたね?」

「ごっごめんなさい!!だって、だってあのね・・・!!!!!!」

・・・・可愛い・・・・・。

千尋がわたわたと必死になって弁解する姿はハクにとって可愛さ極まりない姿で。特に怒ってはいないけれども、その姿が見たくてハクは「遅れたね?」とワザと言ったのだが―――

あ。

ハクは一つ思いついた。千尋が来る前に出会ったあの少年。

『俺の方が、あいつのことを・・』

と言った、主語にあたるであろう「あいつ」の事とはもしかして。

「・・まさか・・・・。」

「・・っでね!・・・・ん?ハク・・・どうかした??さっきから変だよ??」

ん?と言う顔で自分の方を見る千尋の瞳を見つめると、どんどんその予感があたりそうな気がして。

「・・いや、大丈夫だよ。あぁ。そろそろ時間だね。登校・・しようか?」

「ハクが平気って言うなら・・でも、無理しないでね?」

「無理は・・しないよ。」

「よかった!じゃぁいこ!」

千尋の笑顔に心をほだされ、キュ、と握り合う二つの掌から自分に流れ込んでくる暖かさに、どこかで安心感を覚えながらも――

・・・・・・まさか、あの少年は千尋の事を。

ハクは、一抹の不安を隠せずに登校するのであった。





そして。



「よぉ。」

「あっ!」

「・・・・・・・!!!」



――――ハクの予想は、一つも道を外れる事もなく。


やっぱりね・・・・。


大当たりしたのであった。





2へ続く。



す・・すみません!!この続き、頭には出来上がってるんですが・・ですが・・!!!私、また風邪引いちまいまして。続きを書きたいんですが・・・・・頭痛くてどうしようもなく、断念いたします・・・・・ごめんなさい(泣)!! しかもすごい短いし(汗) この後ちゃんとラブになりますので!!ごめんなさい〜!!!!(逃)
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