第2章2話目 【イノチ知らずのセンセン布告?】 |
「えー、では次に・・・・・・・」 淡々と続く、一番最初に受ける、『数学』という科目の授業。 はぁ。 ハクは、周りの者が気付かない程度に、浅くため息をついた。 チラ、と千尋の方に視線を送ってみると、授業の内容を必死に理解しようと――――ではなく。 「くすくす・・似てるっ・・・」 「でしょ、でしょっ・・」 なにやら前に座っている女生徒と、こそこそと紙の回し合いをしていた。 そのうちハタ、とこちらの視線に気付いてか、視線をゆっくりと向けると――顔を赤らめながらニッコリとハクに微笑んで、また前を向いたのであった。 ――あの後。あの少年から特に何も言われるでなく、ハクと千尋は通り過ぎて教室に向かった。 千尋の方も、あの少年には少々警戒しているようで、教室に着くまでは体が少し強張っていた。 『横から掻っ攫われちゃたまらない』 そう、少年はハクに言った。しごく、挑戦的な態度で。そして、千尋の何かありげな態度から考えると――――・・ハクは、一つの考えにたどり着いた。 あの少年は、以前千尋に『可愛くない』と言った少年なのだろうと。 ・・・間違えないでもらいたいものだ。掻っ攫おうと狙っているのは私ではなく、あの少年自身であろうに・・。 「ふぅ・・・」 もう一つ、小さなため息を出す。せっかくの千尋との人間界での生活を、小さな邪魔者に入ってもらいたくはない。 それに。 少年と顔を合わせる前にも思っていたことだが、ハクには二度と千尋と離れて暮らす事など毛頭頭にはないのだ。 トントン。 ん? そこまで考えていると、不意に後ろから肩を小さくたたかれる。 チラ、と肩越しに後ろを見ると、どうやら後ろに手を出せといっているらしい。 ・・なんだろう。 ハクは不思議に思いながらも素直に手を後ろに差し出すと、その手の中に紙のようなものを手渡され、手の平をぎゅっと閉じられた。 カサ・・・ こそこそと腕を前へと戻し、何か入れられた手をそうっと開いてみると。 「あ。」 『ハク、大丈夫?気分でも悪いの?どっか具合が悪くなったら、私に言ってね!あの、私保健委員っていう役についていて具合が悪い人を・・・・・』 くす。 ハクは、手紙を見て一つ笑みを零した。 途中で紙がくしゃくしゃになっている。きッと、急いで何度も書き直したのだろう。 ずっと読んでいくと、下の方に『P.S』という文字が見える。 PS・・・?これは一体・・・・・・。 PSとはなんだろう、と思いながらも後ろに続く文章を読んでいくと、ハクは白い肌にポッと赤味がさした。 「千・・・」 千尋、と呼ぼうとした所でハッと気付く。今は授業中なのだ。 千尋・・・・・・・。 そっと千尋のほうを見ると、目が合ったさっきとは比べ物にならないほど真っ赤になって授業を受ける千尋の姿が目に入ってくる。 『P.S ハク・・大好き。無理しないで。』 ―――やはり、早めに話をつけないといけないな。・・人間、らしく。 キーンコーン・・・・・ ハクが小さく決意したのと同時に、教室の右上にあるスピーカーから授業終了の音が鳴り響いたのであった。 (第3話へ) |
あれ。あれれ・・・?暴走してます、私の意志とは別に暴走してます――!!あーあー・・・書いてて、今回ほど恥かしいと思った時はありませんでした。思わず自分が千尋になってました(爆)。次は千尋視点で・・お話を進めていきます。それにしても・・あわわ・・収拾つかなくなったらどうしよう(汗) >>BACK >>1へ戻る |