第2章3話目

【イノチ知らずのセンセン布告?】



『ハク・・大好き。』

っっっきゃ〜〜〜!!!!!!

なんて恥かしい事を書いちゃったんだろう!?

心の中でジタバタと手足をばたつかせながら、千尋は熱くなった頬を感じて目の前の黒板を見つめていた。

メモのまわしっこ。

小学生や、中学生の頃、女の子とはよくやっていたが・・まさか、男の子と。それも、自分の恋人とする時が来るなんて。

ちょっと憧れてもいたし、いざ自分がそれをしてしまうとちょっと恥かしい。

いけない、授業に集中しなきゃ・・・・

ドキドキと上下に揺れる心拍を整えて、千尋がそう思い直して・・・間もなく。

キーンコーン・・・・・

あらら・・・・終わっちゃった・・・。

授業終了のベルが鳴ったのであった。







「あれ?」

ベルが鳴ってから10秒とかからないうちに、千尋は辺りを見回した。

「・・・・いない?」

ハクが、居ない。昨日この学校に入ってきたばかりだから、きっと他の教室の事なんて知らないはずだろうし・・・・・トイレ、だろうか。

「あれーーーー?速水君がいなーい!!」

「うっそ!逃げられたーーー!」

黄色い声が、そこら中であがり始めた。

・・・ふーん・・・・。

ハクの存在が消えたのを他の女生徒も気付いたのか、しきりに「速水君」と口に出して辺りを見回したりしている。

別に、いいけど。

千尋は視線だけを横に動かして―――― 一応、誰がハクに好意をもっているのかを確認する。

べ、別に妬きもちとかそういうんじゃないもん・・・誰が言ってるのかな―って・・・そ、それだけよ!

心の中で、誰に言うわけでもなく自分の行動の言い訳をして――――そうっと、声の出所を見つける。

が。

それは意味のないことだと知るのに、1秒とかかる訳が無かった。

ぁ――・・・・・そうだよね――・・・

ハクに好意をもっているのは、先ほど声を上げた女生徒だけではなく。

「え?速水君、居ないの!?」

ぅう・・・。

クラス中、果ては他のクラスの女生徒も混じっている程だったのだった。



「あーぁ・・・・」

「・・こら、何ため息ついてんだ〜っ」

「んん?」

コツン、と頭を軽く小突かれる。パッと後ろを振り向くと友人の理沙がいつの間にかそこに座っていて、何かを聞きたそうに目を輝かせている。

あ。もしかして・・・

「別にぃ・・・」

理沙の今の目は・・・・・・・と、嫌な予感を頭に浮かべながらも、別段何でもない振りをしながら視線を教室の扉へと動かした。

「ちーちゃん、あたしに隠し事してるでしょ?」

ギク。

・・・・・どこまで、勘を働かせてるんだろう・・・・・。

ハクが来たのは、昨日の事で。そして今日はその翌日で。千尋は、当然のごとく、理沙や他の友達に何一つ言っているわけは無かった。

ハクと、恋人同士で、酸いも甘いも全て知っている関係だという事を。

「別に、、何も隠してなんてないよ??」

「うそ。夏休みの事と、今のこと。絶対関係してるでしょ〜〜っ。言っちゃいなさい、ほらほら!」

シラっと返事を返してそこで終わると思っていたのに。この一日でどこまで勘を働かせたのか・・・理沙はどうやら、全て知っているというような口ぶりで千尋を追い詰めてくる。

ど・・・・どうしよう・・・・・・・・・っ

実際の所、話すにしてもどこから話せばいいのやら・・きっと、理沙の事だからハクと恋人同士だといってもそこにはあまり執着しないような気がする。逆に、執着するのは・・・・どうやって、出逢ったのかと言う事。そんな気がする。

「ん、も〜。わかった。じゃぁ、いい事教えてあげるよ、ちーちゃん。」

「え??」

自分の周りだけピンと張り詰めた空気が、いつまでも答えない自分に痺れを切らした理沙の一言で緩和する。

「教えてあげるから、ちーちゃんの事も絶対教えてよ。」

「えぇ〜??」

なんの情報かも分からないのに、取引なんてできるわけは無い。大体、一体なぜ理沙はいきなりそれを持ち出したのか。

「聞かなくて、いいの?」

理沙は、もう千尋が聞くというのを分かっているように再度問い掛ける。

「だって、どうして良いことなのよー??私にとっては良い事じゃないかも知れないのに。」

「ふーん、いいのかぁ・・・・・速水君のことなのに。」

「えっ!!!!???」

あ。

声を上げて、パッと手を口に押さえたが時既に遅しで。

「ふふ・・やっぱねぇ。そうだと思ったよ、ちーちゃん?」

や、や、やっば――い・・・・・

ニタニタと怪しい笑いを浮かべながら、理沙は満足げな顔で千尋ににじみよってくる。

「な、な、何が???」

「よーく分かった。じゃ、絶対教えてね、あ・と・でv で、今の情報なんだけど――神室君と、いたよ。」

「え???」

気が動転していて、理沙の言葉がよく理解できない。

誰が、何が?神室君が???

「だーかーらー・・・・・・」

コソコソ。

声を小さくして、理沙は千尋の耳に囁いた。

「速水君。さっき、葵組の前にいて――神室君と、どっか歩いてった。裏庭かな、あの方向は・・・」

「えぇっ!?な、なんで!?」

「さぁ?分かんない。でも、彼が神室君を呼び出したみたいよ???・・・ちーちゃん絡みなんじゃないの〜〜???」

理沙の最後の語調はいかにもからかい半分だったが、今の千尋にはそれに気付く余裕もなくて。

・・・・・・朝の事だっ・・・・・・!!!!

頭の中で、その名前とハクの行動の意味がやっと繋がった。ハクが呼び出したのは紛れもなく、朝自分達の前に立ちはだかった―――あの、少年の名前。

ガタンっ!!!

千尋は、そう思うがいなや勢いよく席を立ち上がって、一目散に教室の扉へと走っていく。

「ちょ、ちょ、ちょっとちーちゃん!!???」

「理沙ちゃん、ごめん!次の時間、私気分悪いから保健室にいるね!!!!!!」

「えーーー!?ちょっとーーー!!!??」

ガラっ!!!!

理沙の声を最後まで聞く事はなく、千尋は、裏庭の方向へと急いで駆けて行ってしまったのであった。

「もー・・・あんな元気のいい病人がどこにいンのよ・・・・・・でも、やっぱねvやっぱそうだったんだ〜〜〜vv楽しくなりそう♪」









「はぁっ・・・・・はぁっ・・」


ダダダダダ!!

大きな音を立てながら、千尋は下へと続く階段を駆け下りていく。

神室という少年は、以前湯屋に居た時にちょっとした騒動を起こしたきっかけの人物で。

「・・・っ・・・!」

千尋に、いつもちょっとしたちょっかいをかけてくる人物でもあった。だから、朝も―――


『荻野の彼氏?どうも、初めまして。』

すっとハクに握手を求めてきて。

『初めまして。』

ハクもそれを受取って、二人は互いに握手をして。

でも。

妙な違和感を、感じて―――


ガチャっ!!

裏庭へ続く扉を、千尋は勢いよく開く。

「・・・はっ・・はぁ・・・・っ」

キョロキョロと辺りを見回すが、どうも2人がいる感じはしない。

「・・ど・・どこに・・・・・・」

パッと左を向くと、ちょうど校舎の角の部分がある。もしかして、人目につかないようにそこにいるのかもしれない。

そう思って、千尋が一歩足を踏み出した途端。

「ふざけんな!!!!絶対許さねぇからな!!!!!」

突然聞こえた、少年の声。

わっ!!??

千尋が驚いてる間もなく、その次には―――

「・・・・そなたに、許してもらおうな度とは微塵にも思ってはいない。」

――――っハ・・・・・ハク・・・・!!!!

今最も、見つけたい人の声が次に続いた。

それも、低く―――そう、それはまるで。

「油屋に居た時みたい・・・・・」

冷たい、声だった。




(第4話へ続く)






<<2へ戻る
----
BACK>>


ハハハ――――(大汗)。おっそいUPでしたね・・しかーも話進んでないし。。。。ごめんなさい(逃)!!