[メールでLOVE ME!]
=1=

ブー・・・・・

カチッ

カチカチカチカチ・・・・・・

「えー・・・と。で、この仕組みだが・・・」

ただ今午前11時55分。教室では、4時限目の授業がちょうど、クライマックスを迎える時間。

その中で、ある一部の席に座っている生徒は目の前の黒板ではなく。

横、もしくは斜め前に座っている―――おかっぱの少年。

「お、おい・・・速水・・・・」

コソコソと、ちょうど右隣の少年に呼ばれた『速水』と呼ばれる少年へと目を向けていた。

その理由は、彼の類稀なる美貌や凛とした美しさへ――――ではなく。

ブー・・・・・

カチッ・・

カチカチカチカチ・・・・・

おおよそ、持っていないであろう・・又は似合わないであろうと思われる、最新式の携帯電話。Codomoから出ている其れを右手に持ち、器用に机の下でメールを打つ、その姿に目が釘付けとなっていたのだ。

ふぅ・・・

カチッ

『メールの送信中・・・・・送信完了』

くるくるとアニメのキャラが動く画面を見ながら、ハクは心の中で一つ息を吐き出した。

メールを打つ時間約30秒・・・・腕が上がってきたな。

そう、皆が彼の手に注目するのはコレも一つの理由だった。

まさか、彼が。そう思わざるを得ないほどの早打ちを、毎度この時間、クラスメイトにお披露目しているのであった。

ちょうど一息ついたので、先ほどかすかに聞こえてきた自分を呼ぶ声の方向へハクはチラリと顔を向け、これまた小さく返事を返す。

「・・どうかしたか?」

そういって、少年の顔を見ると「あれ、あれ。」という風にシャーペンで黒板の方を示している。

・・・・・・??

何かと思ってみてみると―――その先には、いぶかしげな顔をした教師の顔。

「・・・・次、当てられるぜ、お前。」

こそっと忠告してくれたが、既に遅かったようで。

「速水!問3を答えてみろ!」

今日こそは!といった気迫で教師は言葉をハクに投げつけてくるが。

「はい。問題3に関する答えは・・・・・」

聞いてなくても実は聞いているからノープロブレム。龍の耳は高性能。

しれっとした態度で答えを返すハクに、教師は今日も敗北か・・と背を向け、授業終了のチャイムが鳴った。

ガラッ・・・

教師が、教室を出ると同時に、周りの生徒が「すげー!」と騒ぎ出す。

「おっまえ、すっげぇよなー!打ちながらどうやって聞いてんだよ!?なに、なに?いっつも彼女と交換しあってんの!?」

少年が、興奮しつつも何気なく言った一言。

しかし。それは、今のハクにとっては――――

「ああ・・・・・『彼女』とね。」

大きな地雷だったのであった。

「は・・・・速水?なんか、目が恐いんスけど・・・・・」

「そう?気のせいだろう。・・・それよりも、早く購買に行かないと昼飯がなくなるぞ。」

無表情に返事を返したその内容に、少年は「あ!」と小さく声を上げると、早々に教室から駆け出て行った。

「・・・・・・・さて。」

カタっと自分も席を立ち上がると、ある場所へと向かっていく。

そう、先ほどやり取りし合っていた、『地雷』がふんだんに盛り込まれたメールの送信元――

千尋がいくら誤魔化そうとしても、私には分かる。

愛しさゆえに『地雷』になってしまった彼女の元へ・・・・彼女がいるであろう場所へと、ハクは足を運んでいくのであった。






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