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【 4 】





悲しいかな、仕事というものはどんなに悲しくてもやってくるもので。


「千・・・今日、止めとくか?」

「ううん、平気。大丈夫、仕事だもん、行くよ!」

泣きまくったおかげで、記憶の縛りとは別の痛みが頭を襲う。

うっ・・・・・この状態で、ハクと目が合っちゃったりしたら・・・・ううん、きっとハクは何も思わないはずだもん!仕事中だし、そんな事きっと無い・・

「じゃ、行くかぁ〜」

「うん!」

何もなかったように接してくれる、そんなリンの優しさが千尋は嬉しかった。

トントントン・・・

女部屋を出て階段を下りていく。

叫んだ後の、ハクの悲しそうな顔。悲しげな声。泣きついた時の、リンの温かな態度・・・表現された形はどうであると、それは自分を思ってくれているからこそのものだと千尋には分かっていた。自分を傷つけたくないと思われていること。自分も、相手に対して傷ついてもらいたくないと思うこと。

「さ、今日はどこかな〜」

パタン、パタンと自分の名の札を裏に返していく。

この二つの思いを成就するには―――

やっぱ、そうするしかないよね・・・・

「おっしゃー!今日は楽だぜ、千!!!」

「え、ほんとぉ!!」

リンへと出した笑顔とは裏腹に、千尋は決心を固めていた。

「そういや今日は満月なんだなー。あー、なんかいい事ありそうだ!!!」

リンが両手を上げてそう叫ぶ。その様子を千尋は微笑んで見ながら、掃除を始めたのであった。





「ち、父役さま・・・!!」

仕事をはじめて早3時間。月もあと1時間程で西へ沈みそうな時、千尋は仕事を抜け出して父役へと話し掛けた。

「何だ、千!!」

「わ、わ!!シー!!シーっ!!!」

「な、なんだ・・・!!」

千尋の気迫に押されてか、父役の声のトーンも必然的に下がる。

「私、ちょっと用があって・・・もう帰らなければならないんです。」

「あー?お前の仕事はまだ終わっておらんだろうが・・・帰るなんてなぁ・・・かか帰る!!?」

「わー!!!シ―――!!!!!」

「む・・・むぐぅっ!かか・・帰るとは・・・・?!そりゃ一体・・・!!」

「向こうの世界へ・・帰ります。色々と、お世話になりました。また・・・もし来ることがあれば。よろしくお願いします。」

ぺこりと千尋は頭を下げて、湯屋の入り口へと走り出していった。

「千・・・」

父役の言葉は宙に消えて、千尋についてはあやふやなままになると思われたが――

「おい、父役。」

ピッキーン!

その言葉の主に、父役の体が固まった。

「は、はい!!!」

「今・・千はなんといっていたのだ?」

「へ・・あ、いえあの・・・・」

「なんと言っていたのだ!」

「は、はいぃぃ!なんでも、帰るとか何とか・・・お世話になりました、と・・・・・ぉ!!!!??ハ、ハク様!!??」


―――千尋!!!!!!


父役の言葉を聞いた瞬間、ハクも油屋の外へと向かって勢い良く向かったのであった・・














次で終りでございます・・・(汗)



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