(6)
・・・・・・・トン。


道路の真ん中でいつまでも見世物になっている気はなかったから、ビーデルの気が戻った瞬間近場に合ったこのビルの屋上まで飛んだ。


に、しても・・・・・


ビーデルはその間――――付いてから今も、言葉を発せようともしない。自分を見る事だって、さっき一度、確認する為に見ただけだ。


なんだか、それも。


・・・・む。


無性に、腹が立った。


別に、彼女は自分の物でもないし、そう言う間柄でもないから、こんな事思うのは間違ってると分かってる。


―――でも。


今までの、事とか。


事故に遭いそうになった瞬間の心配、とか。


自分を見た後の彼女の態度、とか。


色んな想いが混じり合って――――――――


「・・・どうしてですか。」


思わず、態度に出てしまった。


力一杯抱きしめて抱え込んでいた腕を、ビーデルが離れていかない程度に緩めて話す。


「あ・・・・離・・・・」

「離しません。」


あなたが話すまで。


含ませた言い方で言うと、伝わったようにビク、とビーデルも体を震わせた。


怖がらせるつもりはない。


でも


離すつもりも無い。



「「・・・・・・・。」」



無言の時が、続く。


屋上に降り立って十数分。


会話の無いまま、二人はそこに居続けた。


広がる夕闇が濃紺の空に変わっていくまでそう時間はかからない。



「・・・っくしゅん!」


――――――っあ。


「寒い、ですか・・・?」

「あ・・・うん、ちょっと・・・」


闇に降りる寒気でビーデルがくしゃみをすると、ようやく閉じていた口がお互いに開い、て。


・・・・ちょっと頭に血が上ってたかもしれないな・・・。


ようやく、悟飯も冷静になれたのだった。



時刻は午後7時を指そうとしていた。


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