(7)

―――――・・・っくしゅん!


自分が思わずしたくしゃみで、ようやく二人の緊張が解けたような気がした。


・・・ほ・・・。


なんだか、物凄くほっとした。このまま、悟飯が自分の知らなかった怖さのまま目の前にいるのかと、思った。


「・・・ごめんなさい・・。」


ホッとしたら自然に言葉が零れ出た。自分の出した言葉に、悟飯がハッとしたのが抱きしめられた腕で分かる。


「・・・どれに対してですか?」


いつもの声。さっきまでとは違った、本当にいつもの声だ。


「ど、どれってその・・・助けてもらった、し・・・」

「それだったら『ありがとう』でしょう?」


・・・う・・。


そうやって誘導するのもいつもの悟飯だ。


ポロ・・・


「・・・っ・・」


安心、した。


怖くて、不安で――――緊張してたから。


不意に、涙が零れてしまった。


「なっ・・・・なか、泣かないで下さい・・・!!」


オロオロする彼の声が俯いた頭の上から聞こえてくる。


・・いつもならここで困らせてやるのに。


そう思ったけど、もう今日はそんな事する余裕なんてなくて。


「・・・ごは・・悟飯くんのせいなんだから・・!」


素直な気持ちが口を割って出る。


「いき、いきなり怒鳴るし、怖い顔するし、は・・離してくれないし・・・!」

「ビーデルさん・・・」

「あた、あたしだって色々悩んでるのにっ・・なにもそんな怒らなくたっていいじゃな・・・きゃ!」


そこまで言うと、急に悟飯が自分を引き寄せて。


・・・・あ!


ぐ、とお互いがくっつくようにきつく抱きしめられているのにようやく気がついた。


「ごは・・ちょっ・・・」

「・・悩むって、何をですか。」


・・・え?


ジタバタしそうになる体を悟飯の腕がギュッと押さえ込む。


押さえ込みながら――――――


「・・僕も、ずっと悩んでましたよ。」


悟飯が、急に自分の心を打ち明け出した。


押さえ込まれた、声。何だか、とても――――――・・・苦しそうな、その声・・・


・・悩み?悟飯くんが?


悟飯にも悩みなんてものがあったのか。


悪い意味じゃなく、全てを受け入れて行動している彼だからこそ、悩みなんていうものは持っていないと思っていた。


「・・・なにを・・・?」


急すぎて、驚いて――――ビーデルはさっきまでの涙も忘れて、逆に問い掛けてしまっていた。


だから


悟飯の言葉に。


「え・・・・・・・・っ」


ビーデルは、心臓が飛びでそうなほど驚いた。


「ずっと、ずっと考えてました。」

「・・ずっと?」

「ずっと――――あなたの、事を。」


・・・え・・?


「あなたが、どうして僕を避けてるのか・・僕を嫌いになったんじゃないかって、ずっと。考えて、ました。」


――――――――え。



ドキン・・!!!!


言葉には表せないほどの、激しい、鼓動。


「―――あなたを、離したく、無い。」

「・・・!!!!!!!!!!!!」


一瞬、本当に心臓が止まったかと、思った・・・・・・・・。



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