Chapter:3


『これ、飲んでみて』

そう言われたから、何の疑いも無くブルマが差し出した小瓶の中味を飲み干した。

『・・っぐ!?な、なんですかこれ!?』

自分の言葉にブルマが応えた言葉は『ちょっとした実験。』。それだけで。どこで、何の効能があるかも教えてはくれなかった。

だから、まさか――――

『プレイボーイの薬なのよね』と。そんな効能だと知ったとき、ビーデル以上に悟飯自身が驚いていた。

でも。

不思議と、嫌な感じではないな、と思ったのも本当で。事実、普段なら少し恥かしいな、と思うことや行動も、それが当然であるかのように行動できるのだ。最初湖畔で『愛してる』と言ったのも、自分の中でそういった気持ちが無ければいえない言葉だった。

『ご飯食べたあとでビーデルさんも食べ・・』

これは、少し悪ふざけが過ぎたかもしれないが。その後思いっきり殴られたし。

でもどうやら、自分がそうしたいのはビーデルだけにだと数時間の間でわかった。行きゆく女性を見ても手を出そうとは思わないし、そんな事をしたら薬のせいとはいえビーデルがどんなに悲しむか分からない、と考えると自然に行動もストップする。

・・・どうやら、失敗だったみたいですね、この薬。

プレイボーイではなくて、理性をはずす薬になってしまっていたようで。そう言う効能をもっと強くすれば、ブルマの言う『プレイボーイの薬』になるんだろう。

ともあれ、いつも以上に自分のタガが外れているのは間違いなくて。

現に、今も。

「えっと、ご飯、食べない・・・?」

そう言いながら自分を見つめるビーデルの表情が可愛くてたまらないと考えてしまっている自分がいる。

「うん、食べるよ。」

本当にビーデルが食べたいと思う。

「って、ちょっと・・・・それ、私の手なんだけど。」

「うん、だから・・・」

「もう!ふざけないでっていってるでしょ!!!」

ガツン!

「った〜・・」

・・また、殴られた。

でも、恥かしがって顔を真赤にしながら言われるその言葉も、また可愛さを募らせる原因にしかならない。

もう、もう!と言いながら、自分のために作ってきた昼食をぱくつくビーデルは、いつも以上に愛しく思えた。

・・これが薬の効果だと思うと悲しいけれど。でも、根底にあるのは変らない自分の思いだから、きっといつもこう思っていたい願望の現れだと思えば、その気になればいつもこのフィルターで彼女を見ることは出来るのだろう。

ただ、それで見てしまうと――――別の願望も一緒になって出てきてしまうから、おいそれとは出せない。

だから。普段は出来ない、から。

「あの・・・これ、美味しいかしら?」

強気な彼女がおずおずと聞いてきたその自信のない唇に、美味しいよ、とでも言わんばかりにキスをした。

「!!!・・ちょっ・・きゃぁ!」

驚きのあまりに後ろに仰け反った彼女を追って、ドサッと上に圧し掛かれば、そのままフレンチキスから深いものへと変わっていく。

「ンっ・・・・んん〜〜〜・・・!!」

感覚もいつもより繊細になっていたのだろうか。
深い口付けは、色んな意味で自分を溶かして、いった。

溶けて、いった・・薬も、何もかも。

本能で動いた途端、自分の中で消えていくのが、わかった。

だから。

「愛してる・・・」

その言葉も。

「・・・うそっ・・・!」

ちゅ、とするその口付けも。

本当に、心からしたいと思った言動だった・・・・。

「・・・ぁっ・・こんなの、やだ・・!」

ビーデルが泣きながら、こう言わなければ、きっと。

・・・・あ!!!

「っ!!!・・す、すみません・・・・!」

正気を取り戻す事は無かった。

開いた胸の前を寄せて自分を見詰めるビーデルを見て、悟飯は自分のしたことをようやく後悔したのだった。


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