<あいくるしい> -6- |
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胸が、締め付けられた。 「・・嫌いになったのはご・・悟飯くんのほうでしょ・・」 そう言ったビーデルの言葉に、視界がぐらりと揺れるほど衝撃を受けた。 自分? 嫌いになったのは・・・僕が? 自分が、彼女を嫌いになるなんて、そんな事百万が一――――いや。可能性は、0%、なのに? 「なに・・・言ってるんですか・・・」 声が、震える。 今、彼女の心を離したらもう二度と――――手に入らない気がして、心が、震える。 「詰まらなそうにしてたじゃない・・」 どこで 「どこでもいい、って・・・・・」 それはあなたと一緒ならどこだって 「・・わたしに触られるの・・・い・・嫌だったんでしょ・・」 ――――――あ。 それ、は。 それは、それ、は―――――――! 反論の余地もないほど間髪いれずに出るビーデルの言葉。 早く、言わなければ。 大変な事になる。 「・・わ、わたし・・いつも悟飯くんの勉強の邪魔してたね・・ごめんね・・」 ・・ドクン。 胸が、鳴る。 きっと、この次の言葉は最後の言葉だ。 さよなら と。 短くて、簡潔で、取り繕う事の出来ない、言葉。 聞きたくない。 そんな言葉は――――――もう、二度と。 彼女の口から滑らせたくない。 「だから・・もうお終・・」 「ビーデルさん!」 ビクン! 突然の大声に、ビーデルの身体が跳ねた。 パ、とその拍子に顔に被せていた手の平がどけられる。 ・・・・・やっと・・ 見れた。 彼女の、その素顔が。 流れる涙の元にある、その瞳をようやく、見れた。 「・・・・・あっ・・!」 グ、と。二つの手首を掴まえた。もう二度と、自分の前で顔を隠さないように。 そうして、瞳を見据えながら――――― 「あれは、違うんです・・」 「・・・・え・・・・?」 本当の気持ちを知ったビーデルが驚きの表情を隠せなくなるまで――悟飯は。 ようやく、自分の気持ちをビーデルに伝えることが出来たのだった。 |
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