[初恋・行進曲]

*5*


・・・・・・・い、言っちゃった・・・・・・勢いに任せて・・・


心臓が、次の瞬間いきなり止まってしまうのではないか、という位、高鳴りを激しくしている。


・・・・・・口から出そうだっ・・・!!!!!


恥かしい。恥かしい恥かしい恥かしいっ・・・・・・・!!


本当は、顔を手で覆って隠したいほど恥かしくて、しょうがない。


でも――――・・・・・・


ギュ・・・・・・・!


ドキィっ!


背中に、胸に、更にくっつこうとする慎の存在を体に感じて、もう手も思うように動かない。


こ、こ、こういう時・・・どうすればいいんだよっ・・・!


緊張、して。


こんな風に、自分が抱くように抱きかかえられた事なんてないから、裸で触れ合うよりも、緊張して――・・・・・


「あ・・・・・・」


言葉も、出ない。


それに。


・・・・・・な、なんで何も言ってくれないんだろう・・・


不安も、徐々に募ってくる。


ちゃんと、言ったのに。


恥かしいけど―――言った、のに。


・・・・・なんでぇっ・・・?


フルっ・・・・・・


涙腺が――緩みかかる。


―――と。


フ、と自分の胸に顔を埋めていた、慎の顔が、上がって。


「すげ・・・・嬉しい・・・・・・・」


「・・・・・・・・・っ!」


ホッとした顔と共に、笑顔と共に――その言葉が、唇から零れだして。


「ぇ、あ・・・・・・・・――――・・・・・・」


途端、深い口付が、下からすくい上げるように自分の唇に被さってくる。


「ん・・・・・・む・・ぅっ・・」


「・・・・・・・っ・・」


長い、長い、口付。


今日初めて触れたその熱さに、やっと体の緊張も解けていって。


自然に――・・・・・


スルっ・・・・・・・・


「・・・・・ぅんっ・・・・・・」


慎の首に、頭に――・・・・撫でるように、手を置く事ができたので、あった。





そして、数分後。



「・・・・・・・・・っはぁ・・!く、苦しっ・・・!」


息継ぎを忘れた魚のように、パッと唇を離すと、思いっきり息を吸い込んだ。


「・・・・・・・バーカ。ちゃんと息しろよ・・・・・」


「してるけどお前がっ・・・・・・・・が・・・・・・」


言われたその言葉にカチンときて、相手の目を見ながら文句を言おうと思った――けど。


ぅあっ・・・・・・・!!!!!!


途端、恥かしさが舞い戻ってくる。


・・・・・あ・・・・どうしよ・・・・・!


「俺が・・・何?」


「あの・・・・・・・・・」


「ん・・?」


「そ・・・その・・・・・」


「・・・・・・なんだよ?」


・・・む、ムカツクっ・・・!!!!!!!


あっちに、こっちに、視線を泳がせながらしどろもどろに言う声に、返って来るのは余裕たっぷりの慎の声で。


チラ。


目線を、そっと慎の顔に向けると、頬を緩ませて自分を見ているのが分かる。


「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっ!!!!!!!」


あぁっ・・・・・・もう!!ど、ど、どういう態度をとれば・・・!


そう、思っていると。


クイ。


・・・・・・・えっ?


いきなり、頬を両手で包み込まれて、逃げられないように真正面を向かせられた。


「・・・・えっ・・あっ!?」


目の前には、綺麗に微笑む、慎の顔。


さっきまでの――――・・・威圧感は、ない。


・・・・・・なんで?


?と思ってその顔を見ていると、またハッとして恥かしくなっていく。


と。


チュ。


「ひぇっ・・!」


瞼に、頬に、弱いキスが降ってくる――――


「・・・・・お前・・・俺が初めてなんだな。気持ちも、こういう事するのも―――全部。」


――そう、言われながら。


「・・・・・!!!!」


その言葉に、またも心臓が破裂するんじゃないかという位、ドキドキが増していく。


ハ、ハ、初めてって・・・・・・・!!!!!!


「え・・や、な・・・・!!」


慌てて、しどろもどろに声をだしていくと。


「・・・違うのかよ?」


ちょっとだけ、またムッとした声。


「・・・・全部だろ?・・・目、開けてこっち見ろよ。」


「・・・・・・・・ぅん・・・」


イイ、も、悪いも。


駄目、も言わせない、その声に。


久美子は、ゆっくりと瞳を上げて――・・・・・・・・


パチ・・


目の前にある、慎の瞳と視線を絡ませたので、あった。






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