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「くっそ・・・・・」 バン! 荒れた手つきで教室への扉を開くと、慎は悔しげな呟きを洩らしながら席へと戻る。 ―――結局。 あれから、終始無言に徹した久美子の口を割らせる事は出来なかった。 どう攻めていっても、俯いて首を振るだけで。どうするか、と思った次にはチャイムが時間オーバーを告げていた。 本当なら、次の時間だって潰して口を割らせる事に成功させたかったのだけれども、確か、と思い出せば次は久美子に授業が入っていた。 だから。 名残惜しい気持ちは十二分にありつつも、その絡めた指を外して、久美子と共に屋上を後にしたのだった。 「・・・・・・っはぁ・・・!」 ガタン! 音を立てて席につけば、すぐに異常を察知した仲間たちが自分の周りに集まってくる。 「んをっ・・・・慎、どしたー?」 「なに何?珍しいね、慎がそんな超不機嫌なの見せるの。」 ・・・言ったら。 こいつらに言ったら、どうなるだろうか。 何でも言える仲間にだって、時期を見ないといえないこともある。 そんな事は分かってる。 「・・・・ん。大したことじゃねぇけど・・・」 「・・・・そう?」 「・・・慎ちゃんがいいっつーならいいけど・・・もっと俺らの事頼ってもいいんだけど・・なー?」 ・・・え。 その言葉と共に、椅子の背もたれによっかかりながら目を伏せていた自分の周りへと、温かい気配が漂ってくる。 「・・・慎はいっつも一人で考えすぎなんだよな、大体さ。」 「うっち・・」 「前の時もそうだったけど、何考えてんのかほら言ってみよって!」 「・・野田。」 「なんだなんだ?女のことっ!?って慎がまさかなぁ。」 「・・・・南・・」 ・・・・当ってるよ、俺がまさか、って思うかも知れねぇけど。 「・・・・・・ま、慎のそれは結局ヤンクミ絡みだろ・・・」 ・・・・・・え。 クマ・・どこまで・・・・・・ ―――と。 そう問いただしたい気持ちが生まれたところで、バタン、と扉が開かれる。 「ほーら!何やってるの、その5人!英語の授業始めるわよ!」 「「「「 あっvはーいvvv 」」」」 言いながら入ってきた藤山静香のその姿に、周りにいた4人は一斉に振り向いてそう返事を返して。 『また後で!』 と、そういうポーズをとりつつ前の方にある自分の席に、4人は着席をする。 そして また。 「・・・・・・ふー・・・」 慎一人だけ、席の位置を変えぬまま、深い溜息とともに突っ伏した机の上で久美子のことを考え始めるので、あった・・・ |
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