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「じゃー、これで授業、終りまーす・・・・」 ・・パタン。 いつもとはかけ離れた小さな声でそう終りを告げると、久美子は重い足取りで3−Aの教室を後にした。 ・・・あの時。 『キーンコーン・・・・・』 『・・・んだよっ・・・!』 チャイムがならなければ全て皆まで言わされていた。 きっと、繋がれた指をそのままに、ベンチの上で身動きが取れない状態にさせられて――――・・・ ・・ドキン。 あれから。 あの時から、一度も慎と触れていないのを思い出す。耳元にかかる吐息に、熱い体の重み―― でも。 「・・・はぁ・・・」 家での事を思い出すと、途端目の前に現実を突きつけられて、ハッとしてしまうのだ。 ・・・どうしようか。 テクテクと廊下を歩きながら、この先の事を考える。 ・・・どう考えても行き着く先は、慎にキチンと言うしかないのだけれど。 「あー・・・もう・・・っ」 溜息をつきながら、久美子は職員室へと向かうのだった。 と。 その時。 「・・・・しなさい。」 「・・・・もさぁ・・」 ざわついた廊下を通り過ぎて、柱の角に折れた向こう側から、ひそ、とした声が聞こえてきた。 ・・・・・藤山先生・・・と、生徒? それはきっと、多分何かの相談。 ・・・どうしたんだろ? 今は自分だって、人の事を気にする余裕はないはず。 「・・・・?」 なのに。 何故だか、気になったから――――・・・そ、っと。近づいて、話の内容に耳を傾けてしまった。 瞬間。 身体中の力が抜けそうなほどの言葉が、耳に、響いて、来た。 『だってさ・・・・』 生徒が相談してたのは、何のことはないよくある恋愛相談で。 でも。 その次の、言葉。 『彼女の・・』 彼女の。 『家になんて行くのさ・・・』 ・・なんて? 『・・正直、重いって思って・・・』 ・・・・・・!!!! オモイ・・・ 自分の状況と、今の言葉がオーバーラップする。 きっと、もしかしたら、慎も――――――・・・そう、思うのかも、しれない・・・・ 「っ・・・・・・・」 動揺で、足がすくむ。遠くの方で、チャイムの音が鳴っているのが、聞こえる。 でも 久美子は、暫くその場から、動けなかった・・・・・ |
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