[ 恋の試練は君のため ]
-04-




「じゃー、これで授業、終りまーす・・・・」


・・パタン。


いつもとはかけ離れた小さな声でそう終りを告げると、久美子は重い足取りで3−Aの教室を後にした。


・・・あの時。


『キーンコーン・・・・・』

『・・・んだよっ・・・!』


チャイムがならなければ全て皆まで言わされていた。

きっと、繋がれた指をそのままに、ベンチの上で身動きが取れない状態にさせられて――――・・・


・・ドキン。


あれから。


あの時から、一度も慎と触れていないのを思い出す。耳元にかかる吐息に、熱い体の重み――


でも。


「・・・はぁ・・・」


家での事を思い出すと、途端目の前に現実を突きつけられて、ハッとしてしまうのだ。


・・・どうしようか。


テクテクと廊下を歩きながら、この先の事を考える。

・・・どう考えても行き着く先は、慎にキチンと言うしかないのだけれど。


「あー・・・もう・・・っ」


溜息をつきながら、久美子は職員室へと向かうのだった。


と。


その時。


「・・・・しなさい。」

「・・・・もさぁ・・」


ざわついた廊下を通り過ぎて、柱の角に折れた向こう側から、ひそ、とした声が聞こえてきた。


・・・・・藤山先生・・・と、生徒?


それはきっと、多分何かの相談。


・・・どうしたんだろ?


今は自分だって、人の事を気にする余裕はないはず。


「・・・・?」


なのに。


何故だか、気になったから――――・・・そ、っと。近づいて、話の内容に耳を傾けてしまった。


瞬間。


身体中の力が抜けそうなほどの言葉が、耳に、響いて、来た。


『だってさ・・・・』


生徒が相談してたのは、何のことはないよくある恋愛相談で。


でも。


その次の、言葉。


『彼女の・・』


彼女の。


『家になんて行くのさ・・・』


・・なんて?


『・・正直、重いって思って・・・』


・・・・・・!!!!


オモイ・・・


自分の状況と、今の言葉がオーバーラップする。


きっと、もしかしたら、慎も――――――・・・そう、思うのかも、しれない・・・・


「っ・・・・・・・」


動揺で、足がすくむ。遠くの方で、チャイムの音が鳴っているのが、聞こえる。


でも


久美子は、暫くその場から、動けなかった・・・・・



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