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―――・・・変だ。 藤山の授業終わって、間一時間、他の授業が挟まった。 そして、今――最後の時間、HR。 「―――で、次に連絡だけど――・・・・っとぉ・・!」 久美子の様子が入ってきた時から、おかしいと感じた。 ・・・そんなこと。 この一週間の間、ずっとそうだったといえば、そうだ。でも、今とそれまでとの質が、全然、違う。 ・・・なんでだよ。 ギリ、と奥歯をかみ締めるような悔しさが心の中で湧き上がる。 あの時。久美子を、抱いた時。 『頼れ』 ・・と。自分をもっと頼れと言ったのに。 肝心な所で久美子は、絶対に何も、言わない。 何一つ言ってくれない久美子に・・・・いや、言おうと、頼ろうと思われない自分自身に腹が立ってしょうがない。 「・・・くそっ・・」 『家で何か言われたのか。』 その言葉にびくついた久美子の体。 本当は、それだけで聞かなくても大体の理由はわかった気がした。 きっと――――・・・家で。親代わりであり、三代目でもある龍一郎に何か言われたか、見破られたか・・・・したのだろう。 そして、その事実を知った自分が、どう言う態度を取るのか悩んで、不安で――― 今。 自分には言えない、苦しい――・・だから、離れる。そんな行動になっているのだ。 「・・・・俺が引くとでも思ってンのかよ・・」 ――勝負、つけてやる。 教室の一番前で、絶対にこっちを見ようとはせず喋る久美子を見据えながら、慎は髪を掻き上げて、密かにそう決心すると。 「じゃあ、HR終わりま・・・・・・・・・」 久美子の声が終りの言葉を告げる前に、慎は教室を後にして、目的の場所へと向かったのであった。 * ザァっ・・・・・・ 学校から外へ出れば、心地いい風がふく。 後押しされるように、一歩一歩前へ進んでいく。 カツ・・・ 目的の場所へ、踏みしめるように靴を鳴らしてその場まで辿り着けば。 「・・・・行くか。」 慎は、深い呼吸を腹に吸い込み、その一歩を、踏み出した。 それは、覚悟の、一歩。 誰に対してのモノじゃない。自分のケジメの為、そして――― ・・・・あいつを、本当に手に入れる為なら。 何度好きだと、言葉で体で示しても不安がる久美子の為に。 「すみません。」 慎は、大きな門をくぐった先にある試練の道へと踏み込んだ。 ―――――苦しいけれども、乗り越えれば甘く変化を遂げるその試練に。 そして。 「――よぉ、慎の字。どうした、最近めっきり姿見せねぇで・・・」 「お久しぶりです。・・三代目も、お元気でしたか。」 試練の火蓋が、落とされ、た。 |
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