[ 恋の試練は君のため ]
-05-


―――・・・変だ。


藤山の授業終わって、間一時間、他の授業が挟まった。


そして、今――最後の時間、HR。


「―――で、次に連絡だけど――・・・・っとぉ・・!」


久美子の様子が入ってきた時から、おかしいと感じた。


・・・そんなこと。


この一週間の間、ずっとそうだったといえば、そうだ。でも、今とそれまでとの質が、全然、違う。


・・・なんでだよ。


ギリ、と奥歯をかみ締めるような悔しさが心の中で湧き上がる。


あの時。久美子を、抱いた時。


『頼れ』


・・と。自分をもっと頼れと言ったのに。


肝心な所で久美子は、絶対に何も、言わない。


何一つ言ってくれない久美子に・・・・いや、言おうと、頼ろうと思われない自分自身に腹が立ってしょうがない。


「・・・くそっ・・」


『家で何か言われたのか。』


その言葉にびくついた久美子の体。


本当は、それだけで聞かなくても大体の理由はわかった気がした。


きっと――――・・・家で。親代わりであり、三代目でもある龍一郎に何か言われたか、見破られたか・・・・したのだろう。


そして、その事実を知った自分が、どう言う態度を取るのか悩んで、不安で―――


今。


自分には言えない、苦しい――・・だから、離れる。そんな行動になっているのだ。


「・・・・俺が引くとでも思ってンのかよ・・」



――勝負、つけてやる。



教室の一番前で、絶対にこっちを見ようとはせず喋る久美子を見据えながら、慎は髪を掻き上げて、密かにそう決心すると。


「じゃあ、HR終わりま・・・・・・・・・」


久美子の声が終りの言葉を告げる前に、慎は教室を後にして、目的の場所へと向かったのであった。








ザァっ・・・・・・


学校から外へ出れば、心地いい風がふく。


後押しされるように、一歩一歩前へ進んでいく。


カツ・・・


目的の場所へ、踏みしめるように靴を鳴らしてその場まで辿り着けば。


「・・・・行くか。」


慎は、深い呼吸を腹に吸い込み、その一歩を、踏み出した。


それは、覚悟の、一歩。


誰に対してのモノじゃない。自分のケジメの為、そして―――


・・・・あいつを、本当に手に入れる為なら。


何度好きだと、言葉で体で示しても不安がる久美子の為に。


「すみません。」


慎は、大きな門をくぐった先にある試練の道へと踏み込んだ。


―――――苦しいけれども、乗り越えれば甘く変化を遂げるその試練に。



そして。



「――よぉ、慎の字。どうした、最近めっきり姿見せねぇで・・・」

「お久しぶりです。・・三代目も、お元気でしたか。」



試練の火蓋が、落とされ、た。



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