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「えっ・・・・・・・!」 「どうしました、お嬢?」 ただいま、と声を上げて玄関の戸を開けた途端、聞こえてきたお祖父ちゃんのその言葉に、身体が 固まった。 『慎の字』 ―――と。 確かに、はっきりと、そう言っていた。 ・・・え・・・え!? 今ここに居る筈が無いその相手に、思考回路が停止する。 な・・・なんで?だって・・・・! 自分がHRの終了を告げる前に、出て行ったその相手が、いる。 家に行く、とか。 そういう事は、何一つ屋上では言っていなかったのに、突然――――来る、なんて。 まさか、居る、なんて。 ・・・・・・ドキ・・っ 嫌な予感に胸が一杯になる。 ここに居る、ということは。 もし・・・・ もしかしなく、とも・・ 「久美子」 「・・!」 不意に呼ばれた名前に、ハッとして顔をあげた。考え込んでいた思考が、弾け飛ぶ。 聞きなれたその声色。顔をあげた視線の先、には―― 「・・・バーカ。」 言いながら、呆れたような顔をして、慎が、そこに、立って、いた。 ――――・・どうしよう。 頭が回らなくて、最悪の事だけがよぎっていく。 不安で、苦しくて――――――目の前が、暗く、なった・・・。 |
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