[ 恋の試練は君のため ]
-06-


「えっ・・・・・・・!」

「どうしました、お嬢?」


ただいま、と声を上げて玄関の戸を開けた途端、聞こえてきたお祖父ちゃんのその言葉に、身体が
固まった。


『慎の字』


―――と。


確かに、はっきりと、そう言っていた。


・・・え・・・え!?


今ここに居る筈が無いその相手に、思考回路が停止する。


な・・・なんで?だって・・・・!


自分がHRの終了を告げる前に、出て行ったその相手が、いる。


家に行く、とか。


そういう事は、何一つ屋上では言っていなかったのに、突然――――来る、なんて。


まさか、居る、なんて。


・・・・・・ドキ・・っ


嫌な予感に胸が一杯になる。


ここに居る、ということは。


もし・・・・

もしかしなく、とも・・


「久美子」

「・・!」


不意に呼ばれた名前に、ハッとして顔をあげた。考え込んでいた思考が、弾け飛ぶ。


聞きなれたその声色。顔をあげた視線の先、には――


「・・・バーカ。」


言いながら、呆れたような顔をして、慎が、そこに、立って、いた。


――――・・どうしよう。


頭が回らなくて、最悪の事だけがよぎっていく。


不安で、苦しくて――――――目の前が、暗く、なった・・・。



Go to 7th story....>>

<<Back to 5thstory...