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「しっ・・・・慎!こら、離っ・・・・!!」 「離さねぇよ。もう、大人しく諦めろ。」 「っ・・・・!!!」 ぎゅぅっと握られて、引っ張られている、右手。 あの後。 玄関で、いつの間にか来ていた慎とはちあった、あの後。 どうして?―――――と。 聞く間もなく、慎のすぐ後にお祖父ちゃんも顔を出して・・・・・・ 衝撃の、一言が、玄関に響いた。 『「今日、こいつ、借ります。明日、二人で挨拶に・・来ます。』 「・・・へっ!?」 ・・・本当に倒れるんじゃないかって言うくらい、驚いた。 まさか。 まさか、そんな事をお祖父ちゃんの前で言うなんて・・・・・・ 自分たちの、関係が―――・・・・!! と。 心臓が、止まるかと思うほどの事を面と向かって言い切った、のに。 「・・・楽しみにしてらぁ」 「さっ・・・三代目!?え!?お嬢と慎の字が!?」 お祖父ちゃんの方は、何ともなくて。むしろ、一番驚いていたのは、その場に居合わせた若松の方だった。 にっこりと笑いながらそう言ったお祖父ちゃんの顔をぽかんと見つめていると、耳元で「行くぞ」と、呟かれる。 ・・・なっ・・・・何で!? そう、聞く暇もないまま、ギュッと手を握られて、引っ張られて――そのまま。 慎の部屋へと、連れてこられてしまったの、だった。 そして、今。 ・・・コポコポ・・ シーンとした部屋の中に、慎がコーヒーを入れる音だけが響く。 ・・・・うぅ。 居心地の悪さが、自分の体に付きまとう。 ・・・ちら。 ぎゅぅっと握り締めた手を正座した膝の上に置いて、分からない様に上目遣いで慎の事を見れば、何事もなかったかのように二つのマグへとコーヒーを入れ終えていた。 「・・・・どーぞ。」 「・・ど、どうも・・」 ・・ギク。 ・・・シャク。 そんな機会音が自分の体にだけ響いている、ような。 一体―――全体。何がどうなって。何でお祖父ちゃんは慎のあの言葉に笑って――――・・・ていうか。 ・・あ、あ、あんな事っ・・・・! 「あんな、今日借りるなんてっ・・・・・・・!」 「・・・・お前、声でてるぞ。」 「そう、声っ・・・・て・・えぇ!出、出てた!?」 「・・・いいけど。」 慣れてるから。 そう後に続けて方をすくめる慎を見て、祖父以上に大きな疑問が頭をよぎる。 な、な、なん・・なんでっ!なんでこいつはこんなに落ち着いてるんだよっ・・! 朝、あんなに切羽詰った表情で自分を問い詰めていたくせに、もう今は、自分の事なんて全部分かってる・・お見通し、といったいつもの顔で。 ど、ど、どうなってんだよっ・・・・・・! ・・・だから。 慎が、そんなだから。 家や学校で、頭によぎった不安も、今この一瞬忘れそうになっていたのだけれど、も。 ・・・はっ・・。 結局、どうなったのかと、思った瞬間思い出した。 「・・・ぁ・・」 再び、重くて暗い思考が、自分の周りの空気だけを、張り詰めさせて、いった。 |
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