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「・・・なんっか変だったよな・・・」 「え?ナニ慎??」 「・・・別に。」 3時間目、物理の授業。 いつものごとく、授業なんてそっちのけで騒いでいるその教室の一番後ろで、慎はボソッとそう呟いた。 気になっているのは――――――・・さっきの、久美子。 最近、どうもおかしい。 というよりも。 今日、さらにそのおかしさがアップしていた、気がする。 そう――――・・・さっき。3時間目に入る前の、休み時間に廊下ですれ違った、時。 『・・・やんくみ。』 自分では、一秒でも多く学校の中で自分だけを見るようにしたいから、呼びかけて。 ・・・可愛い。 きょとんと振り返った彼女をそう思ったから、自然と笑みがこぼれ出した―――― ・・・それだけの、はずだったのに。 途端。 「・・・・・っ・・!!!!」 くるっと踵を返して、彼女は自分に笑いかける事もなく廊下をそのままダッシュで走り去ってしまった。 ・・・・・なんだよ、それ。 別に、いいけど。 別に、同じ様に笑ってもらいたかったわけじゃない、けど―――――― 「・・・寂しいだろ、それ。」 ポツリと、また言葉と共に溜息が漏れる。 ・・・そういえば・・。 前にも一度、こんな事があった気が、する。 廊下であった時も、そわそわと落ち着きがなくて、すぐに自分から離れようとした。 教室で目が合った時も、不自然なほどに視線を無理やり逸らして明後日の方向へ目を向けていた。 ・・・もしかして。 一つの可能性に、落していた目線を、スッと黒板の方へと向けた。 もしかして、また。 久美子は、そういう気持ちになっているんじゃないだろうか。 何をしていいか分からないほどの――――――・・自分への、気持ち。 「・・・・ふっ・・」 別に、自惚れているわけじゃないけれど。 その考えに行き着いた途端、さっきまでの暗い思考は飛んでいって、ふ、と頬が緩み出す。 ・・・ヤベ、嬉しいかも・・ 彼女自身、コントロールが効かないほどの自分への気持ちを感じ取ってしまう事の、嬉しさといったらない。 自分も、久美子も。 誰かと付き合う、と言うのは互いが初めてで。 だから、どうやって気持ちを伝えていいか、分からないのだ。 そして、垣間見えた彼女の、その持て余すほどの気持ちに――――・・・ 「・・・バーカ・・」 キーンコーン・・・ 無性に嬉しくて、終了の鐘の音と同時に慎はそっと一人呟いた。 「ねぇ、慎どったのよ?わ、笑ってんの?」 「・・・なんでもねぇって。」 ぐ、と興味深そうに見つめる友人を無理やり前に向かせれば。 「あー・・・・次の時間やんくみじゃんっ!!!!!」 ・・・早く次の時間、こねぇかな。 クラスメイトの気持ちとは裏腹に、慎はそう思うのであった。 そして。 向かえた、その時間。 ガタっ!!!!!! 勢いよくあいた、前の扉を見つめていれば。 「そ、それじゃあ、じ、じ、授業はじめまーす!!!!!!!」 不自然に大声を張り上げて入ってくる久美子。 と。 ・・・・・・パチ。 目が、合った。 ・・・いや。 目を、合わせた。 『・・・久美子』 そう、無音で唇を動かし、ながら。 |
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