[ 笑顔の魔法 ]
-4-


「ごめんっ・・・・今日、自習!」



ガタン!!!!



飛び出していった久美子の様子に、自分以外の連中がガヤガヤと騒ぎ出した。


「な・・・・なにっ!?ヤンクミどうしちゃったのよ!?」

「なんか・・・顔赤かったよな?もしかして・・・風邪とか?」

「でもさぁ、なんっか様子変だったよなー。朝から不自然だったような・・・」


口々に騒ぐその言葉に、ふ、と再び頬が緩む。


『久美子』


そう、唇でつづりながらふふっと笑えば、計算どおり固まった――――教壇の前に立つ、久美子、に。


騒ぐ周りを気にしつつも気持ちが抑えられなくて、思わず緩みそうになった頬を手の平でかばい隠す。


・・・やべ、止まンねぇ・・


「・・・慎?」


ちょちょ、っと小突かれた右隣を見れば、お前じゃないの、とでも言いたそうなクマの顔。


「早く、いけよ。」


呆れたような、でもこの恋を応援している、とでも言うようなニュアンスの言葉をクマからもらえば。


「・・・わり。行って来る。」

「おうよ。」


くまにだけ聞こえるように、そう呟いて――


ガタン・・・・・・!


騒ぐ教室が、いっぺんに静まり返るように立ち上がれば、久美子が出てったドアの方へとゆっくりと歩いていく。


「慎!?どこいくんだよ??」


立ちはだかるようなクラスメイトの言葉、には。


「・・・内緒。」


謎めいた言葉を残して―――――慎は廊下へと、姿を消していった。


パタパタパタ・・・


走っていく足音だけが、教室に残れば――――





「・・・・・なんっか、超笑ってる慎見たの俺初めて・・・」

「俺も・・・」

「お、俺も・・・・・」

「退学取り消しでここ、戻ってきた時より笑ってたよなぁ・・・・」



「「「「 怖ぇ・・・・ 」」」」



ぷっ。



怖がるクラスメイトの姿を見て、思い当たりがあるクマは一人、笑いを堪えているので、あった。








そして







急いで走ってついた、資料室の、前。






カチャ・・・



ドアを、そっと開けて、見える後姿を前に後ろ手で扉をそっと閉めれば――



「・・慎の、馬鹿っ!!!!」



ぐる、っと自分の方へと椅子の背もたれに体を逸らした久美子の視線と、目があった。


自分を馬鹿、といいながら上下逆になった彼女の顔は真赤に染まって、愛らしくて。


「・・・馬鹿で悪かったな。」


もう、抑えきれない――――・・・・


頬を緩ませながら、慎はそう言うと、スッと久美子のほうへと足を伸ばす。


「・・・なに、やってンの・・・」


驚く久美子の表情に、ますます頬が緩んで、いった。


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